【ライブレポート】栗コーダーカルテット、全46曲の20周年コンサートは魅せどころたっぷり

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▲ゲストの知久寿焼、司会の寒空はだかと共に

栗コーダーカルテットの20周年記念コンサートが7月19日(土)に渋谷公会堂にて行われた。

◆栗コーダーカルテット 画像


▲開演前のステージツアー

まさかこんなに活動が継続するとはメンバーの誰も思っていなかった中、人々との温かい時間とともに20周年を迎えた栗コーダーカルテット。今回のライブは笛やウクレレをはじめとした多様な楽器で、“脱力系”“癒し系”とも言われる心地よい楽曲を生み出し続けてきた彼らの20年を全46曲という大ボリュームで総括する内容となった。

チケット料金が20周年にちなんでなんと20円(税込・全席自由席)だったこともあり、1時間で完売したものの当日までは「雨が降ったらお客さんが来ないかも…」という懸念がされていた。しかし、この日の渋谷公会堂は雨が通り過ぎてほどよい天候。座席は二階まで多数のファンで埋まり、開演前にステージ上でセットを見学できるステージツアーにも幅広い年齢層による長蛇の列ができた。

ステージに登場した栗コーダーカルテットは多数の楽器が並ぶステージでそれぞれの配置につくと、栗原正己の「緊張してきましたよ。ついに当日がやってきた」「今日は長いです。途中休憩を挟みます」という喋りを挟んで「鉄道ワルツ」から演奏をスタート。ロングコンサートへの旅立ちを感じさせる曲調と、近藤研二のギターをベースに栗原正己、川口義之、関島岳郎ら3人がそれぞれ音域の違うリコーダーで紡ぎだすメロディが何とも気持ちいい。

映画『クイール』挿入歌である「ぺジエ」、プログレ・バンドであるエマーソン・レイク・アンド・パーマーの“(笛で)完コピを目指した”という「聖地エルサレム」、栗コーダーのおなじみ曲の一つである「マヨネーズ二番」など、続々と飛び出すキャッチーな楽曲群はインスト・バンドでありながら聞いていて全く飽きることがない。ボーカルが存在するバンドと違い、落ち着いて各パートの楽器の調べを追える楽しみを味わっていると一休みが入って自己紹介のパートへ。「実は渋谷区生まれですので、自分のルーツの場所に戻ってきた気分でやろうかと思ってます」という関島、渋谷公会堂を埋め尽くした観客の多さに「なんか嘘みたい、不思議ですね。今日は精一杯20円分頑張ります」という近藤、「学生の頃の仲間に“お前のロックってのはこれだったのか!?”とからかわれました。ロックの殿堂、渋公でできてうれしいです」という川口、「渋谷公会堂、懐かしいですね。森昌子が歌ってる時に、中学校の吹奏楽部で後ろを通過したことがあります」という栗原と、観客の笑い声にもどこか懐かしい雰囲気が感じられた。

なんとなくヱビスビールが飲みたくなる「第三の男」で近藤がウクレレに持ち替えた辺りから、コンサートはウクレレにフィーチャーしたブロックへ突入する。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク 第一楽章」からエルヴィス・プレスリーのカバー「冷たくしないで」、そして「鉄腕アトム」と何とも節操のない三曲をメドレーで一気にやってしまう栗コーダーの面々だったが、ウクレレが入ってきたことで気分はいずれも南国風。また、栗原がここで使用しだしたアンデス(鍵盤がついているピアニカ風の笛)も初見の観客の目を引いたのではないだろうか。

13曲目までを終え、MCで近藤が「(今日のコンサート)全席合わせて4万円です」そして栗原が「1曲あたりの単価を数えたら50銭だって」というさりげない爆笑情報を公開し、ここでとても短い映画音楽カバーのブロックに入る。「ジョーズ」のカバーでは冒頭から関島のテューバの低音で迫真の恐怖感を生み出しているのだが、近藤のウクレレ、川口のボンゴ、栗原のアンデスと、一人割り込む度に脱力感が倍増。脱力感がピークに達したところでそのまま「帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)」になだれ込み、観客の笑いも引ききらぬうちにワンコーラスの長さで締めた。

第一部後半ではステージにゲストの知久寿焼が登場。栗コーダーカルテットにとって結成のきっかけとなった最重要人物である彼だが、栗コーダーの4人は知久とともに知久が所属していた「たま」の思い出を振り返り、たまが当時持っていたスタジオについて「緊張して行ったら入ったとこに雀卓がある」「石川さんのランニングが一杯吊ってある(笑)」と懐かしいエピソードを披露。この日は「たま」時代の楽曲より、「おるがん」含む3曲を5人で共演した。

さて、26曲披露した上にトーク満載で既に腹八分目には達したであろう前半から、20分間の休憩を挟んでさらに満腹への道を追い求める後半。栗コーダーカルテットの4人もリラックス寄りの服装からそれぞれスーツ姿へと衣装チェンジを行い、「コカゲ鉄道」で2部が発車する。彼らが日頃名刺代わりに最初に演奏することの多い「ピタゴラスイッチ」のテーマは2部の3番目に小組曲スタイルで登場した。栗原によると組曲内では番組で使われた様々なBGMがまとめられており、「これは3秒ぐらいですね」という短い曲についてもきちんと盛り込んである。「7曲全部演奏しても3分前後」とのこと。

2部はNHK関連の楽曲や草間彌生のドキュメンタリー映画エンディング・テーマである「純な賛美」、そしてアルバム『あの歌 この歌』所収の日本の名曲を披露するなど、深みのある楽曲群が続くセットリストとなった。「砂山」から「黄金虫」へと続く流れでは、近藤のギターにリコーダー3人の輪唱にも似た響きがほんのりした侘しさとたまらないノスタルジーを漂わせる。「埴生の宿」の後は5曲連続の駆け足(といいつつ、栗コーダーらしい穏やかペース)でラストスパートへ。終盤は「羊どろぼう。」から4人でできる軽快な楽曲ブロックへと突入し、賑やかな雰囲気でラスト2曲を残すところまでやりおおせた。

「本当に20年、あっという間でした。子供のころの夏休みはいつまでも続いているような気がするものですけれども、栗コーダーカルテットは言ってみれば夏休みが終わってから作ったバンドです。僕らはそれぞれ仕事したり夢を追ってバンドやったりいろんなことをやって、いい年になったなって時にこのバンドを作りました。それが長続きした一つの要因なんじゃないかと思っています。でも、遅く作ったためにいいことが一つありました。それぞれがいろんなことをやってきて、色々な知り合いがいる状態でバンドを作れたので、バンドを作った時からいろんな人に見てもらうことができました」とバンドの思いを語ったのは関島。この日の会場には、栗コーダーカルテットの20年に様々な形で関わってきた人々が20円のチケット代を払って集まってきていた。幸せな集大成ともいえる空気の中、「そしてですね、栗コーダーカルテットは日本で一番アンケートを読むのが好きなバンドです。ぜひアンケートを書いてください」と最後までトボけた笑いも忘れない。栗コーダーカルテットは「青空節」までのラスト2曲、そしてアンコールで2曲を披露し、観客の大きな拍手に包まれて20周年コンサートを終えた。

渋谷公会堂という大舞台でのコンサートも一段落し、栗コーダーカルテットは今後も引き続き各地でのコンサートを予定している。意外といろいろなところでその曲を耳にすることができる彼らだが、実際にコンサートに足を運ぶことで発見できることも数多い。最寄りの場所へ彼らが来た時には、ぜひ気にかけてみてほしい。

PHOTO:松本孝之

セットリスト
<栗コーダーカルテット 20周年記念コンサート>
<1部>
1.鉄道ワルツ
2.ぺジエ
3.聖地エルサレム
4.マヨネーズ第二番
5.写真の中の君
6.けむり
7.カントリーマーチ
8.ボンネットバス
9.第三の男
10.アイネ・クライネ・ナハトムジーク 第一楽章
11.冷たくしないで
12.鉄腕アトム
13.夢の人
14.ジョーズ
15.帝国のマーチ(ダース・ベイダーのテーマ)
16.ケ・セラ・セラ
17.アパオの海外出張
18.おるがん(with 知久寿焼)
19.ロシヤのパン(with 知久寿焼)
20.方向音痴(with 知久寿焼)
21.ワンダフルデイのテーマ
22.生きているだけで楽しい
23.つり球マーチ
24.つみきのいえメインタイトル ~guitar version~
25.光のトキ
26.夕景
<2部>
27.コカゲ鉄道
28.夏から秋へ渡る橋
29.小組曲「ピタゴラスイッチ」
30.リンゴントウ
31.お気に入りの靴をはいて
32.純な賛美
33.砂山
34.黄金虫
35.埴生の宿
36.犬姫
37.消えたかに道楽
38.Apple Incident
39.Red Fruit Drunkers
40.くつやのマルチン
41.羊どろぼう。
42.川口くんのおすすめトラッド1&2
43.足
44.青空節
<アンコール>
EN1.うれしい知らせ
EN2おじいさんの11ヶ月

『20th Anniversary Best 1994-2014 栗コーダーカルテット 20周年ベスト』
初回限定盤:CD2枚組+DVD GNCL-1250 ¥4,000(税抜)
通常盤:CD2枚組 GNCL-1251 ¥3,000(税抜)
6月25日発売
発売元・販売元:NBCユニバーサル・エンターテインメント

Disc1【ORIGINAL SONGS】
Disc2【COVER SONGS】
特典DVD
栗コーダーのクリスマス 2013 at Kichijoji Star Pine's Cafe

◆栗コーダーカルテット オフィシャルウェブサイト
◆栗コーダーカルテット 20周年特設サイト
◆チケット詳細&購入ページ
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