【インタビュー】栗コーダーカルテット、笛と運命に翻弄されて20年。「今や家族以上に一緒」

ポスト

一夜のライヴのために「知久寿焼と栗コーダーカルテット」として、現メンバーの4人が集ったのが '94年7月15日。そもそもリコーダー奏者としての活動が本業だったわけでもなく、バンド結成のつもりすらなかった彼らが、いつの間にやら活動歴20年。アニバーサリーを記念して、6月25日には『20th Anniversary Best 1994-2014 栗コーダーカルテット20周年ベスト』をリリースした。7月19日にはチケット代20円という渋谷公会堂での20周年記念コンサートを控える彼らが、20周年を振り返る。

◆栗コーダーカルテット 画像

■僕らはそこそこ年を経てから作ったバンドだから、20年は本当あっという間

──活動開始から20年ということですけど。

川口義之(以下、川口):みんな、栗コーダーをはじめる前に、いろんなバンドをやってたけど、どのバンドよりも活動期間が長くなっちゃったかな。

関島岳郎(以下、関島):そうだね。でもまぁ、20年って言っても、ずーっと切れ目なくやってきたという感じじゃなかったからなあ。バンドを作った頃は、年に4回くらいライヴをやるとか、そういうペースで、今ほど活動もしてなかったしね。今のペースで20年やっていたらすごい20年だったと思いますよ。それに20歳で作ったバンドだったら20年はすごく長く感じると思うけど、僕らはそこそこ年を経てから作ったバンドだから、20年は本当あっという間だったよね。

──―そもそも、リコーダー奏者じゃないところからのスタートですもんね。

栗原正己(以下、栗原):今でもリコーダー奏者かどうかは怪しいんですけど(笑)。

──―結成当初は20年続けるつもりでしたか?

近藤研二(以下、近藤):それだけはない(笑)。

川口:バンドはたいていそうだと思いますけど、ローリングストーンズは、まさか70、80歳でも続けていると思って始めてないでしょ(笑)。始まりは曖昧なところから、その場の勢いで。ただ、勢いがあるから始まるということだけは確かでしょうけど。僕の場合は、30歳くらいの時にバンドに疲れちゃって、「もうバンドはいいや。もうやらない」って思ってたのに、なし崩しに栗コーダーがバンドになっちゃって、それが20年なので、すごい不思議。運命に翻弄されて20年……。

近藤:いやぁ、まさかねぇ……笛をねぇ。

──―近藤さんには、ハイポジの時にもインタビューさせていただいていたので、まさかこうして栗コーダー20周年のインタビューをさせていただくことになるとは……。

近藤:(笑)そうですね。

川口:ハイポジが一番長いこと、栗コーダーの活動と時期がかぶってるんだよね。最初はハイポジの合間に時々栗コーダーのライヴがあるっていう感じだったのに、どんどん栗コーダー中心になってしまって。

近藤:みんな、最初はそうでしたよね。何かの合間に栗コーダーで集まってやるっていうスタイルだったと思いますけど。今や家族以上に一緒にいますから。

──最初の頃はカバーをやるにしろ、リコーダー用のアレンジでは試行錯誤もあったと思いますが、どうでしたか?

栗原:そうなんです。その頃のアレンジは主に僕がやってて、今回知久(寿焼)くんと久しぶりの共演なんで、最初のライヴの音源を聞き直してみたんですが、低い方の鳴らない音域ばかり使っていて抜けが悪いというか。知久くんの世界には合ってるんだけど、演奏しにくい。そのうち高い方を使うと良さそうだっていうのがわかってきて、ある時からパキッとしてくるんだよね。あと音符が詰まってて、休む場所がない(笑)。

近藤:その反面、初期の四重奏のアレンジなんかは、四本でいろんなことを表現しようっていうエネルギーがそこに凝縮されているんですよね。今回のベスト盤にも収録されている「聖地エルサレム」っていう曲を笛四本でアレンジしたやつにはそれが満ちているよね。オリジナルにあったドラムフィルや、いろんな楽器のパートを笛に置き換えてあって。

関島:自分たちの技量を考えてないもんね(笑)。

川口:栗原さんはすでにアレンジャーとしての経験をかなり踏んでいる上で編曲をしているんだけど、笛には長けてないって感じだったからね。そういう不思議なバランスで作ってたね。

栗原:演奏にもその不思議なバランスがあったわけだよね。'94年の知久君とのライヴとか、やっぱりフラフラなんだけど、音楽としては成り立ってる。音程も悪いし、音の出し方もなってないんだけど、なんかこう成り立ってる。そういうのを聴き直して感じましたね。その一年後に、知久君と同じライヴをやったんだけど、一年でだいぶまとまってて今に近い感じ。

関島:今回のベストにも、その翌年くらいに録音した音源が入ってますよね。


▲『20th Anniversary Best 1994-2014 栗コーダーカルテット 20周年ベスト』初回限定盤
──ベスト盤は、1枚がオリジナル、1枚がカバーという2枚組ですが、選曲はどう考えたんですか?

川口:オリジナルのほうは、1stアルバムから順番に「この辺は入れるよね」っていうのを選んで行くだけで結構な曲数になっちゃうんですよ。僕らの希望としては、このベスト盤で気になったオリジナル曲があったら、その曲が入っているオリジナルアルバムを聴いてもらえるといいなぁと思って選曲したところはありますね。カバー曲は、いろんなコンピレーションに参加していて、今まで自分たちのアルバムに入っていない曲も多いので、そういう風に散っていたものをまず集めました。自分たちも、散っていたカバー曲を集めて聴いてみたかったんですよ。コンピレーションに参加する場合って、自分たちで選曲するなら選ばないようなものをやっているので面白いんです。今回だったら「スリラー」とか。

栗原:「テクノポリス」だったりね。

川口:うん。そういうのをある程度集めて行くだけで形になるだろうなっていう感じだったよね。過去2枚のベスト盤の時にもそういうアンソロジー的な視点は入ってますね。

近藤:10周年の時も15周年の時もベストを出しているんだけど、そことのかぶりも気にしましたよね。どちらとも1、2曲しかダブっていないと思います。

栗原:一枚がカバーで一枚がオリジナルに分けたのはスムーズに選曲できた要因だったかもしれないね。聴くほうもだいぶわかりやすく聴ける気がします。流れを作るのもそれが良かった。

──限定盤には、クリスマスライヴ「栗コーダーのクリスマス2013」のDVDもついていて、これもかなり見応えがありますね。

川口:ベスト盤の音源にはクリスマスのものを入れるとトーンが変わっちゃうから、クリスマス色の少ないナンバー、グリーンスリーヴスしか入れなかったので。DVDでバランスをとってみたというところはありますね。クリスマスライブは定番ですし。

──オリジナル曲を収録したディスクには新録音が3曲入ってますよね。

近藤:うん。これはライヴでよくやっていたけど、録音をしてなかった曲ですね。

川口:「ライヴでやってるあの曲はCDになってないんですか?」って言われることが多かったので。前から入れなきゃとは思ってて。

関島:何かしらの録音物はある曲なんですけど、ライヴでやってるアレンジがそれと遠いものになっていて。ちょうど今がいいタイミングだから録音しようっていう、そういう感じだったんですよね。しかもこれ、どれもワンテイク、一発録音なんですよ。

川口:新録するにあたって、もうちょっといろんな候補曲があったんですけど、時期を改めて、そういうのも含めて、新しい音源を作っちゃおうかっていうのもあり。ひとしきり、20年の祭事が落ち着いたら、そろそろオリジナルアルバムも作りたいですよね。

◆インタビュー続きへ
この記事をポスト

この記事の関連情報