【インタビュー】柴咲コウ、新作「ラブサーチライト」と音楽活動10年を振り返る

ポスト

本作で3作目のタッグとなるandropの内澤崇仁作曲、プロデュースによるニューシングル「ラブサーチライト」が劇場版『名探偵コナン 異次元の狙撃手』の主題歌としてスマッシュヒットしている柴咲コウが、BARKSに登場。新作とともに 女優と並走しながら行ってきた音楽活動はすでに10年を越えるキャリアを持つ彼女に、今作について訊く。

◆自分がやりたいことはやりたいことで変わらないんだから、
どう見られてもいいやってやっと思えるようになってきたんです


――劇場版コナンシリーズで2013年は声優、今回は主題歌を担当って、実はとってもスゴいことなんですよね。

柴咲:声優やったからなのかどうかは分からないんですが。でも、普通なら新鮮味を求めて同じ人を起用することはしなさそうなのに、あえてそこで“次は歌で”といってくれたのがすごく嬉しくて。私、常連? っていう気分ですね(微笑)。

――本当に、今までこういうのってなかったですからね。よっぽど縁があったんだと思いますよ。

柴咲:うれしいですね。最近、これはよくインタビューでも言ってるんですけど、ずっと抗ってやってきたところがあって。何に? といったら、歌を歌っている自分は歌詞や世界観、魂を共有したいという思いがあったからこそ、パブリックイメージに抗って“音楽をやるときはこういうスタイルで”とか、“見た目を変えよう”とか思ってやってきたんですけど……そういうことも、もうやんなくていいやと思えたんです。そんな頃にこういうお話が頂けたんですね。結局全部がつながっているから得られたチャンスだったんだなと思っているんですけど。

――こうしていきなり本音をストレートにぶつけてくれるところ、相変わらずで嬉しいです(微笑)。コウちゃんがパブリックイメージに抗って音楽をやるようになったのはいつ頃からですか?

柴咲:私の作品でいちばんCDの売り上げがよかったのが「月のしずく」という映画(『黄泉がえり』)のなかで歌った、“RUI”名義で出したものなんですね。それから作詞をし出して、細々とやってきたんですけど。やはり“芝居をやっている柴咲コウが歌っている”というのがずっとずっとつきまとっていたので、なんで(音楽をやるのは)私の個人的な活動なのだと分けて捉えてもらえないんだろうと思っていて。それは、音楽をやる自分をそのまま見て欲しいと、求めてしまっていたんですね、聴いてくれる人に。自分がそこに執着していたんですよ。実際、いまだに“歌も歌ってるの?”って言われますからね。
――そうなんですか?

柴咲:はい。“知らなかった”って言われますよ。なんだけど、じわじわと知っていてくださる方も増えてきて。そういう漠然としたイメージに対して抗っていたんです。でも、つい最近なんですけど、そういうのはもういいやって思えるようになって。自分がやりたいことはやりたいことで変わらないんだから、それに対して(周りから)どう見られてもいいやってやっと思えるようになってきたんです。

――それは、10年以上音楽活動をやってきたからこそ、ですか?

柴咲:全然。年月の区切りで物事、そんなうまいこと考えが変わるようなことはないですよ。

――なるほど。

柴咲:そうですね。音楽に対する情熱があるのに、役者をやっているというだけで片手間でと判断されるのは心外だなと思っていて。その情熱がずっとずっとあって、こうしてやり続けたからこそ、ちょっとだけ自分に自信を持てるようになってきたのが今このタイミングなのかなとも思います。

――音楽をやっている自分に?

柴咲:はい。自信がまだなかった頃は自分の見せ方もすごくファンの目を意識して、媚を売っていた頃もあったかもしれない。

――えっと……

柴咲:いや、媚を売るとか本当はできないんですけど(一同爆笑)、できないなりに気を遣って“こういう見せ方がいいかな?”とか、“もっと明るい感じもあったほうがいいのかな”とか、“エンタテインメント性があったほうが喜んでくれるのかな”とか。

――気を遣ってやってたんですか?

柴咲:はい。できないなりに(笑)。自分がやりたいことよりも、こういうのを求められているのかなってことを考えてやっていたところもあったんです。でも、今後は腰を据えてじゃないですけど、自分がやりたいと思ったままにいろいろできたらと。無理したくないなと。自分の体質、キャラクターとしてちょうどいいポイントってあるじゃないですか? そっちに集中してもいいのかなって。

◆歌っているときは。“柴咲コウ”じゃないところが
あるんだと思います。だから、言えないんです


――つまり、もっと自然体のままの柴咲コウを開放できる音楽をやっていきたいと。
柴咲:そうそう。

――柴咲コウをそのままさらけ出しちゃえと。

柴咲:さらすというのは、ぶっちゃけるということでしょ? そうではなくて、私の場合はあまり気を遣い過ぎないでいようってことです。それは、人生のテーマでもあるんですけどね。人付き合いすべてにおいて。(こう見えて)意外と相手に合わせちゃうから(笑)。で、意外と言えないタイプだし(笑)。

――ホントに?

柴咲:仕事だと“ここは違うと思う”とかああだこうだ言えるんですけど、仕事じゃないと言えないんですよ。だから、素の自分に近いんでしょうね、歌っているときは。“柴咲コウ”じゃないところがあるんだと思います。だから、言えないんです。女優・柴咲コウは客観性があるんですけど、歌だとそれないんです。主観的なところでやってるから。

そういうこと、いつ頃から気づいたんですか?

柴咲:いつ頃でしょう。じわじわとですかね。だから、いいものが発揮できないんですよ! だって、もっとやりたいことをいってみんなで切磋琢磨してクリエイティブなものを作っていかなきゃいけないのに、周りに“こっちがいいよ”って言われたら“そうかもしれない”って。でもやってみたら違っていたとか。曲に関してもそうです。歌ってみたら意外と自分にはしっくりこなかったとか。過去にはそういうこともあったんです。次の曲はアップテンポがいいのかバラードがいいのか、分かんないです。それは、客観的に自分を見られなかったから。芝居の仕事だったら、例えば次はアクションがいいとか時代劇がいいとか、全体的なバランスを見て判断できるんですけどね。

――女優・柴咲コウをセルフ・プロデュースできる。

柴咲:そう。でも、音楽ではそれができてなかったんです。

――でも今後は音楽をやる柴咲コウをちゃんとセルフ・プロデュースしていく、と。
柴咲:はい。大きな課題であり、それが今後10年歌えるかどうかにつながっていくと思います。歌うだけだったらその辺で歌えばいいんですけど(笑)、お客さんに対して音楽を提供するという場を持てるかどうかは、そこをどうカタチにしていくかにかかってると思います。

――自分が気持ちよくありながら、なおかつそれをお客さんに提供して喜んでもらう。

柴咲:難しいですよ。すごく難しい職業なんだなというのは、いまさら感じてますね。アーティストというのは自分、または自分がやること、作り出すものがアートだから自分以外の人には無頓着でいいと思うんですよ。でも、人前に立つ歌い手・柴咲コウはそれではいけないんですよ。だから、人前に立つ、人に音楽を提供する立場だという仕事としての責任を持ちつつ“自分”であるべき。すごく難しいバランスですよね。でも、だからこそやる価値があるんですけどね。簡単だったら面白くないんで。こういうふうに悩めるというのは素晴らしいことですから。結果として自分の人間性の成長につながっていくので。だからね、ほんっとに、歌詞だけ書いているだけだったら幸せなんですけど、パフォーマンスしなきゃいけないので。一人って、ホント大変(苦笑)。

――そうそう。そう思うとバンドって。

柴咲:いいですよね?“ここちょっとしゃべっといて”っていうのができるから。

――一人だと自分が苦手な分野も全部自分でやらなきゃいけないですから。柴咲:そうそう(笑)。MCやらない方もいらっしゃいますけど、私は……違うと思うんですよ。やらなかったら“あれ? やっぱりしゃべっていたほうがよくない?”ってなるから。

――そこで、気遣いコウちゃんが出てきてしまうんでしょ?

柴咲:そうなんですっ!……私、名前変えて作詞家になりますか?

◆インタビュー続きへ
この記事をポスト

この記事の関連情報