【ライブレポート】MAN WITH A MISSION、幕張メッセ2万3千人が熱狂した“物語”の世界
3月にリリースした3rdアルバム『Tales of Purefly』を掲げ、足掛け4ヶ月にわたり全27公演にのぼる全国ツアーを開催したMAN WITH A MISSION。その23本目としてバンド史上最大級のキャパシティとなるライブが、5月31日に幕張メッセ国際展示場1~3ホールで行われた。
◆MAN WITH A MISSION 画像
始動から4年、メジャーデビューから3年。デビュー当時に筆者が観たツアーファイナルが渋谷eggmanであったことを考えると、凄まじい規模拡大ぶりだが、その理由はステージを観て瞬時に納得できた。観る者を惹きつける斬新なヴィジュアル、アグレッシヴなバンドサウンド、躍動するグッドヴァイブス、緻密に練られたストーリーと巧みにリンクする大掛かりな演出、そして心を打つメッセージ――。人がエンターテイメントと呼ばれるものに求める全てが、そこにあったのだ。
廃墟にも古代神殿にも見えるセットが組まれたステージに神秘的なSEが流れ、物語を幕明けたのはアニメーション映像だった。文明が中世にまで後退した近未来、人々に恵みを与える“Purefly”なる物質が悪魔に奪われ、それを取り戻すべく3人の少年たちが戦いに赴くが、実はこれこそがコンセプト・アルバム『Tales of Purefly』の基軸となっているストーリー。舞台上のモニターが上がってローブを纏った狼たちが姿を現すと、タイトル曲でもある「tales of purefly」を荘厳に、フードを脱いで「evils fall」を周囲であがる火柱の如く熱く叩きつけて以降、既存曲を挟み込みながらもアルバム曲を収録順に披露してゆく。そう。このライブは音と映像とパフォーマンスを駆使して、幕張メッセという巨大ホールに『Tales of Purefly』の世界と物語を具現化するものなのだ。
「アルバムノ物語ヲ読ミ進ンデイクヨウニ、目ト耳ト心デ楽シンデ下サイ。今日、コノ日ニ立チ会エタコトヲ祝福イタシマス」(ジャンケン・ジョニー)
そう前置いて大自然を映し出したモニターを背に、美しいハーモニーで生命の煌めきを歌う「vitamin 64」を贈った後は、“Purefly”を探す3人がセンターステージに現れて、長い眠りについていた5匹を目覚めさせるというドラマへ。そこから爽快な旅立ちの唄「higher」へと繋がる流れも実に清々しいものだった。狼たちの両眼に宿った光は、目的を果たすべく少年たちと共に戦うことを決めた意志の光であり、続いてカミカゼ・ボーイ(B、Cho)がお立ち台で奔放に歯ベースをかき鳴らす「DON’T LOSE YOURSELF」のタイトルと見事なシンクロを果たしてみせる。極めつけとばかりに心に突き刺さったのが、モニター上に希望へのメッセージを映し出してからの「Emotions」。再び火柱があがるなか、エレクトロなビートとなめらかなメロディに乗せて、ストリングス隊が激しく弓を弾き、とてつもなくスリリングな音像を描き出す。そこで戦いに赴く少年たちの強い決意が、そのまま5匹の音楽やバンドに対する想いに重なって、大きな感動を呼ぶのだ。
「我々モ沢山ノ人ノ言葉ニ、力ヤ勇気ヲ貰イマシタ。同ジヨウニ音楽トイウモノガ、ホンノ些細デモ皆様ヲ良イ方向ニ導クモノトナレバイイ」と、叙情感たっぷりに「whatever you had said was everything」を届けてからの後半戦では、バラエティ豊かなMWAMの引き出しをさらに全開に。「タトエ2万3千人デモ、ライブハウスト同ジクライ、シッチャカメッチャカニナッテ下サイネ。ルールナンテ、クソ喰ラエダ!」と、タイトル通りの煽りでカオスを生んだ「NEVER FXXKIN' MIND THE RULES」では、花道に駆け出したDJサンタモニカも前転! そこからアニメーションと芝居の融合で繋いだ「Searching life」では、少年たちにせがまれるという設定でアコースティック演奏まで披露する。しかも、メンバーが登場したセンターステージは高く上昇して、アルバムのストーリー通り、狼たちとキャンプファイヤーを囲んでいる心地にさせるのがニクい。
また、入場時に配布されたリストバンドの無線LEDが曲に合わせてどんどん色を変え、彼らの多面性を象徴しながら楽曲世界の持ち味を効果的に増幅していたのも特筆すべき点だろう。盛大にストリングスがかき鳴らされるステージをスモークが覆い尽くす様が斬新すぎるニルヴァーナの名曲カバー「Smells Like Teen Spirit」に、みずみずしいパワーに“Purefly”の力を感じる「your way」。そして、物語上で少年たちと5匹が辿り着いた魔窟を目まぐるしい展開でミステリアスかつドラマティックに楽曲化した「babylon」が、戦いの終焉を物語る。少年たちは苦しい道程の末、遂に希望を取り戻した。同じように、自分たちには世界デビューという途方もない挑戦が待っていると、ここでジャンケン・ジョニーが語り始める。
そうして贈られた「Dancing On The Moon」は、まるで映画のエンディングのように優しくも力強い音色で全てを浄化してみせた。オーディエンスのブレスも白く輝き、モニター上で月に向かって昇ってゆく光と一体となる。それはまさに“Pure=純なるもの”が“fly=飛翔”してゆく光景だった。
本編が終了すると、秋の全米デビューに先立つ6月からの全米ツアー&10月からの国内ツアー<PLAY WHAT U WANT TOUR>の開催が映像で告知された。後者はファンからのリクエストによってセットリストを決定するという彼ら初の試みがなされるツアーで、ファイナルは12月20日のさいたまスーパーアリーナ。MWAMの史上最大キャパシティをまたしても塗り替える会場名の発表に、場内からは大きな歓声が沸く。止まることなくヒートアップした客席の“ヤキニク!”コールを受けてのアンコールは、波打つタオルがフロアを埋め尽くした「DANCE EVERYBODY」と銀テープが舞う「FLY AGAIN」という鉄板コンビ。メンバーとオーディエンスが一体となって踊りまくる様は、もはや神に祈りを捧げる宗教儀式のように厳かなものですらあった。最後はスペア・リブ(Dr)の先導による“1、2、3、ガウー!”で2万3千人が拳を天に。単なる刺激的なミクスチャーロックに止まらぬ多様性で、彼らは見事に“目と、耳と、心に響く”ライブを創り上げてみせたのである。
『Tales of Purefly』に描かれた少年たちの物語はMWAMの、さらに言えば彼らの音楽を愛する人々ひとりひとりの物語でもある。そこで彼らが伝えたかった最も重要なメッセージは、ライブ中に流れたアニメーション内で、狼が少年たちに語った台詞の中に隠されていた。“我々はこれまで、自らの「力」で敵と立ち向かってきた者だけを助けてきた”――つまり“天は自ら助くる者を助く”ということ。他人に甘えず、自らの足で進む者のみに幸福は降り注ぐ。そして類まれなオリジナリティとたゆまぬ信念で道を切り拓いてきたMAN WITH A MISSIONが、その恩恵に与れないはずはないのだ。
取材・文●清水素子
アルバム
『Tales of Purefly』
2014年3月12日発売
【初回生産限定盤 CD+ストーリーブック+三方背BOX】 SRCL-8484~5 ¥3,200(税抜)
【通常盤 CDのみ】 SRCL-8486 ¥2,700(税抜)
収録曲:
1.tales of purefly
2.evils fall
3.Wake Myself Again
4.database feat.TAKUMA(10-FEET)
5.vitamin 64
6.higher
7.Emotions
8.whatever you had said was everything
9.When My Devil Rises
10.Searching life
11.your way
12.babylon
13.Dancing On The Moon
◆MAN WITH A MISSION オフィシャルホームページ
◆ソニーミュージックアーティストページ
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