【ライブレポート】minus(-)、音楽と人主催イベントで「盛り下がってください」と天の邪鬼ぶり発揮
minus(-)の1stライブが5月30日、高円寺HIGHにて開催された。これのライブは音楽雑誌『音楽と人』のイベントとして開催されたもの。
◆minus(-) 拡大画像
そんな彼が久々に姿を現すということもあり、期待は否応なく高まっていた。キャパシティ300人ほどの会場は瞬時にチケットソールドアウト。minus(-)としての音源も何もない状態だったが、誰もがこの2人の出す音に期待していた。
19時35分。定刻を少し過ぎると照明が暗転。薄明かりに照らされたステージ上には、森岡の2台のキーボードと、藤井の1台キーボードが配置されている。ドラムもアンプもない。この2人のみで音を鳴らすのだろう。長いSEの後登場した2人は、なんとadidasとY-3がコラボしたサッカー日本代表ユニフォームのTシャツをお揃いで着用。森岡は金髪をリーゼントっぽく上げ、藤井はかなり長く伸びた髪を結っている。2人が並んでいる姿を見て涙するファンの姿も。いろいろな思いが会場に交錯する。
そのSEを切り裂くように、森岡が鍵盤を叩いた。真剣に向かい合い、ピンと張り詰めた面持ちに緊張感が漂う。サウンドは、これまでの森岡によるものとは印象が異なり、エンターテイメントやポップさとは真逆の、心の奥底に眠らせていた“音楽への素な衝動”が形となったような肌触りだ。その音に藤井の出すノイズが強烈に対峙して、あまりの音の大きさに会場が揺れた。触っている壁がピリピリと震えているのがわかる。素の鍵盤とノイズ音のぶつかり合い。これはある意味、長いキャリアの中で、藤井と森岡の身体にまとわりついた経験や余裕を削ぎ落とし、2人が出会った頃に持っていたシンプルな衝動を形にしようとしているような、そんな膨大な熱量を伴う音が響き渡った。
ライブは上述した方向性のインストが続いたが、森岡のMC以降、ボーカル入りの楽曲が徐々に増えていく。ニューウェイブを基調にした現代的な音作りが新鮮だ。非常にダンサブルな曲もあり、森岡が両手を挙げながら、飛び跳ねて会場を煽るシーンも。そしてMCでは藤井が口を開いてこう語る。
「minus(-)の曲はこれで終わり。詞をワンコーラスしか作ってないので、それを繰り返しています(笑)」
それを聞いた森岡が「そこまで言うの?」と笑った。いい空気だ。
「次は懐かしいのを3曲やります。盛り下がってください。盛り上がったらもうやらないよー」
相変わらずな天邪鬼っぷりを見せる藤井のMCから、あのナンバーがスタートした。そう、“懐かしい”とはSOFT BALLETの楽曲だ。「FRACTAL」のイントロが鳴った瞬間に会場がどよめく。そして「VIRTUAL WAR」では、当時が蘇る森岡の振りと“To a war!”の大合唱で会場が揺れた。この日のラストナンバーは「JIM DOG」。重低音が強調されたアレンジに、minus(-)風が際立って新しい。
アンコールはなかったが、客席の声援に応えるように藤井と森岡が再びステージに登場する。そこで、このユニットが一夜限りのものではないこと、秋にミニアルバム発表を予定していること、これからイベントに出演する予定もあることを告げて、彼らのステージが終了した。minus(-)が8月21日、<acid android in an alcove vol.7>に出演することが発表されたのはその日の深夜のことだった。
当時を焼き直すわけではなく、まだ自分たちが形にしていなかった衝動を、今、形にする。余計なものなどない2人の本能にも近いものをぶつけあったサウンドこそが、minus(-)なのかもしれない。次のステージが楽しみだ。
撮影◎北岡一浩
■<音楽と人LIVE2014 VOL.2 minus(ー)1st experiment "too short to show">
2014年5月30日(金) 高円寺HIGH
出演:minus(-)[藤井麻輝、森岡賢]
■<acid android in an alcove vol.7>
2014年8月21日(木) club citta’
open & start 23:00 / close 29:00
all standing \4,000 (tax in) *ドリンク別
【LIVE】acid android , minus(-) and more…
【DJ】yukihiro and more…
一般発売日:2013年6月29日(日)
ぴあ 0570-02-9999
ローソンチケット 0570-084-003
イープラス
[問]club citta’ 044-246-8888
◆minus(-) オフィシャルFacebook
この記事の関連情報
<音楽と人LIVE 2022>、中田裕二と柴田隆浩(忘れらんねえよ)を迎えて11月開催
BUCK-TICKの星野英彦、沖縄ロケによる最新写真とインタビューを加えた自伝本『Simply Life』増補改訂版を発売
藤井麻輝、ライブ活動引退
【ライブレポート】minus(-)、ラストへのカウントダウンで刻みつけた“凄み”
minus(-)、活動終了
【ライブレポート】山崎まさよし×阿部真央×澁谷逆太郎、「楽しんでいただけたんじゃないでしょうか」
【インタビュー】minus(-)、2年ぶり新作『C』完成「僕が編んだ世界に石川さんが色を染めた」
『音楽と人』主催アコースティックイベントVol.3、最終発表にSUPER BEAVERの澁谷逆太郎
【ライヴレポート】DEZERT × メリー、<異種格闘3番勝負>第一弾「あれを作ったのが人間の最大の罪」