【インタビュー】喜多村英梨「“アニメタル嬢だよね”って言われたい」

ポスト

■最初から目指すべきところは見えていたので悩むこともなく
■一つのゴールに特化して作っていけた気がします


――その念願が今回のシングル「掌-show-」で叶ったというわけですね。しかも『シドニアの騎士』というSFバトル作品のエンディングテーマですから、メタルでありながら作品とのシンクロ率もバッチリ。

▲(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局
喜多村:もう、素晴らしいタイアップをいただけて! 静野(孔文)監督をはじめ「喜多村さんの味をもって『シドニアの騎士』を思うままに表現していただければ」と言ってくださったアニメの作品チーム、そして1枚目のシングルから制作を共にして喜多村のポテンシャルを見抜き、信頼関係を築いてくださったサウンドチームとの出会いには、本当に感謝しています。今回の楽曲制作でも、声優アーティスト・喜多村英梨としての7枚目という基軸もありつつ、『シドニアの騎士』に出会えた奇跡を化学融合するために、喜多村が声優であるということも武器として使いたかったんですね。それで収録現場で触れたキーワードやエッセンスを、楽曲チームにも提案させていただいたんです。特に『シドニアの騎士』という作品は、声を先に取って映像は後でつけるという手法を取っているので、楽曲制作を始める段階で音声収録がかなり進んでいたんですよ。そのぶん作品世界は熟知していたので、例えば楽曲構成においても「めまぐるしく変則的に展開するスト―リーを活かしてほしいです」という提案をして。

――だから、Aメロからじょじょに盛り上がってサビで広がるという王道的展開にはなっていない。

喜多村:そうなんです。歌詞においても自分の盛り込みたいことを提示していったら、作詞の河合(英嗣)さんに「作品を理解されている方が書く詞が正解だから、作詞も共同クレジットにしましょう」と言っていただけたんです。で、河合さんに「何が一番印象に残りましたか?」って聞いたところ、「“掌位”という隊を組むところでの掌が印象に残りました」とおっしゃったので、それをタイトルにして。そのワードに対して“勝利を掴む”だとか“絶望の中で抗っていく様の掌”というところを、私が落とし込んでいったんです。

――それで物語の用語や、登場人物の名前が盛り込まれているんですね。

▲「掌 -show-」初回限定盤
喜多村:なんか、スルメな曲にしたかったんですよ。声優アーティスト・喜多村英梨の楽曲として楽しんでいただくだけじゃなく、せっかく『シドニアの騎士』という作品に看板曲として乗っけてもらうのであれば、作品ファンの方が歌詞を見たときに「お前、わかってんじゃん。同士!」って手を差し出してくれるようなものを作らないと失礼だなと。そういう意味では最初から目指すべきところは見えていたので、あまり悩むこともなく、一つのゴールに特化して作っていけた気がします。

――おかげでファイターが登場するミュージックビデオのほうも、斬新だけれど納得できるんですよ。『シドニアの騎士』と世界観が通じているから。

喜多村:本当は『シドニアの騎士』のセットを組めたら一番良かったんですけど(笑)。そのへんは“シドニアの騎士 meets 喜多村英梨”というコラボ感、つまり、似て非なるものの味を楽しんでもらいたかったんです。まずは『シドニアの騎士』から得た退廃した世界というところで、撮影場所は廃墟に設定して。そこにバンドシーンを盛り込んでアーティストとしての姿を示しつつ、戦いの要素を置くことで『シドニアの騎士』と「掌」を、点と点で繋いでいこうと。

――ところで「掌」という楽曲自体、喜多村さんの見解では、どのジャンルに属していると考えていらっしゃいます?

喜多村:私的には“コアメタル”だと思っています。ジャンルの定義ってとても難しくて、特にメタルの場合、曲を聴いて「これは××メタルだな」と予測してネットで色々検索してみたりすると、全然違ってた! なんてことが頻繁にあるんですよ。逆に、その枝分かれしすぎているがゆえに無限大な感じがメタルの楽しいところで、その人の色に染めやすいジャンルだなぁとは思っているんですね。で、今回の「掌」で言うと、楽曲の展開的にはプログレメタルをイメージしているところが大きいです。『シドニアの騎士』の世界って、とにかくプログレだから(笑)。ただ、楽曲全体としては“コア”という言葉を選びたいし、メタルというのは自分の中のサウンドの核でもあるので、絶対に外したくないんです。

▲「掌 -show-」通常盤
――ちなみに、どのへんのメタルを良く聴かれますか?

喜多村:自分が歌うことを想定して聴いてしまう部分が大きいので、やっぱり女性が歌っているもの……いわゆる“嬢メタル”が多いですね。最初はナイトウィッシュなどのメジャーどころから聴き始めて、あとはディレインとか、アンサンもメチャクチャ好きで作業BGMにしてます。男性ボーカルだとメロデスのディサルモニア・ムンディ。どうやら自分は、ピアノやシンセサイザーを多用しつつ、激しいんだけどどこか哀愁があって、メロディアスなものに惹かれるみたいなんです。他にもイン・ディス・モーメントとか、女性の透き通るような歌唱の中に、シャウトなのかデスボイスなのかグロウルなのかスクリーモなのか、そういうものがカットインしてくる感じも、すごく好きですね。

――そんなシャウトなのかデスボなのか……というものに自ら挑戦してるのが、カップリングの「Greedy;(cry)」。

喜多村:もう、プロの方に怒られるので、私はバーサークモード、もしくはヒステリック声って言ってるんですんですけど(笑)。ブラックメタルを基本としたアバンギャルドメタルをずっとやりたくて、『シドニアの騎士』と「掌」に出会えた今がそのタイミングかなと挑みました。2番の歌詞が無かったりと楽曲構成の常識に囚われず、目まぐるしい展開の中に自分の主線の声が入る……っていうところでは、さっき挙げた方々の楽曲に影響されている部分も大きいですね。さらに雑踏の中、聴き取れるか聴き取れないかのレベルで自分の声を素材として重ねてみたりと、声優という仕事をしているからこそのギミックも提示しています。『シドニアの騎士』からインスパイアされた人々の感情、吐き捨てるような嘆きも歌詞のテーマにしていますし、そこで私が演じているのも同じ顔で個体差のあるクローンの少女なので、そういう意味でも多様な声を重ねていきたいなと。ミサコーラスの部分では、歌っている詞は同じなのにサウンドで印象を変えるということに挑戦していて、それもプログレメタルからの影響なんですよね。他にもテクニカルなギターソロだとか、いろんなフックを盛り込んでいるので、どこかに惹かれてハマッた最後に、初めて声優アーティスト・喜多村英梨というものに注目してもらえたら勝ちだなって。

――先ほどから何度も“声優アーティスト”という言葉が出てきてますが、やはり喜多村さんの中では“声優”と“アーティスト”の二つを融合して、新しい表現者の形を提唱していきたいという想いが強いようですね。

喜多村:それはあります。小さい頃から奥井雅美さんを聴いてきたり、声優でもありアーティストでもあるという意味では林原めぐみさんにも影響を受けて育ってきたので、自分もそうなりたいし。もし、そうなれたとしたら自分の色を残したい……っていう野望は昔からあるんです。で、そのスタートラインにようやく立てた気がする今、やっぱり“ながら”は嫌だなと。アーティストもやっている“ながら”の声優さんだとか、声優でアーティストもやっている人としか思ってもらえないのでは、声優さんにもアーティストさんにも失礼じゃないですか。ただ、メタルの中にブラックもプログレもあるのと同じで、自分から発信していく表現者であるという基軸は、声優もアーティストも変わらない。そこで声優として持っている武器と、ボーカリストとして持っているチャンスを融合させて、いつの日か「声優アーティスト代表の喜多村英梨さんですね」と言われるために奮起することが、今の私のやる気の源なんです。もちろん、とても難しいことだけれど、そのぶん成し遂げられたらカッコイイし。子供の頃から憧れだった世界でチャンスをいただけた以上、声優だからこそのボーカル表現をキチンと提示して、喜多村英梨を必要としてもらったところには等価交換でなく、千倍で返さなきゃいけない……っていう正義は一応持っています。こんな身なりだけど!(笑)

――今回の「掌」なんて、まさに“声優だからこそ創れた/歌えた楽曲”ですもんね。となると声優として様々な役柄を演じるように、アーティストとしてもメタルに軸足を置きながら、今後も幅広いジャンルで活動されていくんじゃないかという気がしてきました。

喜多村:そうですね。タイアップをいただいて、そこに自分も寄り添っていく形での魅せ方もできるし、アルバム等のノンタイアップ曲では自分の描きたいものを思う存分表現することもできる。そうやっていろんな分岐が生まれるのが、声優アーティスト・喜多村プロジェクトの強みだと思うんです。だから、喜多村英梨のストーリーとして曲を追いかけてくださってもいいし、「前作は良かったけど、今作はちょっと違う」でもいい。聴いてくださった方から何かしらの感情を引き出せるか否かがポイントなので、結果が好きでも嫌いでも、まずは注目してもらえるような尖り方をしていきたいですね。

取材・文●清水素子


「掌 -show-」
TVアニメ「シドニアの騎士」エンディング主題歌
2014.5.14 On Sale
【初回限定盤】 KICM-91517/¥1,800+税
「掌 -show-」Music Clip収録DVD付
喜多村英梨 Live 2014 先行抽選シリアルナンバー封入
※受付期間 : 5月14日(水)12:00~6月9日(月)23:59
【通常盤】 KICM-1517/¥1,143+税
<期間限定封入>
喜多村英梨 Live 2014 先行抽選シリアルナンバー封入
※受付期間 : 5月14日(水)12:00~6月9日(月)23:59
1.掌 -show- (TVアニメ「シドニアの騎士」エンディング主題歌)
2.Greedy;(cry)
3.掌 -show- -off vocal ver.-
4.Greedy;(cry) -off vocal ver.-

(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

<喜多村英梨 Live 2014>
9月28日(日)千葉・舞浜アンフィシアター
[問]ホットスタッフ・プロモーション 03-5720-9999(平日12:00~18:00)
■チケット最速先行情報 5/14(水)発売シングル「掌 -show-」にチケット最速先行受付案内を封入!

『STARTING STORY LIVE TOUR 2013』
2014年4月23日発売
ライブ本編(「喜多村英梨 STARTING STORY LIVE TOUR 2013」神奈川県立県民ホール追加公演分を収録)
1.Miracle Gliders/2.Be Starters!/3.→↑/4.ココロノリズム/5.足跡/6.alive/7.Baby Butterfly/8.彩-sai-/9.My Singing/10.Sha-le-la/11.LOVE&HATE/12.SHINE/13.brand-new blood/14.紋/15.Destiny/16.Birth/17.Lifetime Trader/18.re;story/18.Be A Diamond
[EN1]19.Taste of Paradise/20.経験値上昇中/21.Chu→ning♪/22.Happy Girl
[EN2]23.→↑
映像特典:「喜多村英梨 STARTING STORY LIVE TOUR 2013」全公演オフショット映像


◆喜多村英梨アーティストページ
◆TVアニメ「シドニアの騎士」 公式サイト
この記事をポスト

この記事の関連情報