【インタビュー】SCANDAL、新曲「Departure」リリース「私たちの音世界がこの楽曲で広がっていく気がしました」

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SCANDALが4月23日、18thシングル「Departure」をリリースする。同曲は3月3日、一日限定公開としてゲリラ的にYouTube上で発表されたものだ。この3月3日とは、SCANDALがインディーズデビューを果たした日であり、彼女たちにとって大きな夢のひとつだった大阪城ホールワンマンを実現した思い入れの深い日でもある。

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作詞作曲者のMAMI曰く、「大切な季節を歌にできたことは良かった」と語るとおり、春を想いながら制作されたサウンドは、ストリングスによるドラマティックなアレンジが施されているが、その根幹を貫くのはミディアム調の切ない旋律であり、バンド感に溢れた4人のアンサンブルにある。なお、カップリングにはメンバー全員が楽曲制作に深く関わった「Rainy」を収録した。同シングルに収録される新曲2曲は作詞作曲のすべてをSCANDALが手掛けたものであり、これはSCANDALにとって初。今回のアートワークが象徴するように4人が4様に広がり続けながら、ガッチリと結束したシングルが「Departure」だ。その制作秘話をロングインタビューでお届けしたい。

■「自分たちだけのサウンドで楽曲を完成させたい」と──HARUNA
■春ってバンドにとって核になる季節だなっていうのがあって──MAMI

──新曲「Departure」は、3月3日にYouTubeで限定公開した楽曲ですね?

HARUNA:3月3日は私たちにとって大切な日だから、その日までに完成させて、待ってくれてるみんなに届けることができたらと思っていたんです。私は2014年に入ってから舞台出演(『銀河英雄伝説 第四章後篇 激突』)に集中してたので、SCANDALとしてライブが出来ないなかで3人はずっと楽曲制作を続けていて。もちろん舞台公演中に私もプリプロに参加して曲を聴いたりしたんですけど、その中にMAMIが作ったこの曲があって。他にも曲はあったけど「この曲、完成させてみようよ」ってみんなの意見が一致したんですね。

MAMI:歌詞にもありますけど、この曲のイメージは家の近くの商店街に大きな桜の樹が1本だけドーンとあって。その風景からストーリーを思い浮かべて歌詞を書いていったんです。

──メロディーよりも歌詞を先に作ったということですか?

MAMI:ほぼ同時でしたね。メロディと一緒に歌詞も出てきたんですよ。作り始めたのは冬だったし、その時は春をテーマに書こうとかって特に意識してなくて、衝動として出てきたものでした。でも、思えば3月3日はインディーズでデビューした日で、初めて大阪城ホールでライブをやった日でもある。春ってバンドにとって核になる季節だなっていうのがあって。そんな大切な季節を歌にできたことは良かったですね。

──YouTubeで限定公開した後、ファンの反応には凄まじいものがあったようですね?

MAMI: 4人全員が揃って活動している姿を2014年に入ってあまり見せられてなかったので。SCANDALからの「久しぶり!」ってサプライズをみんなにすごく喜んでもらえたと感じました。Twitterも物凄いことになってましたね(笑)。 “1日限定じゃもったいない”“もっと聴きたい”“ちゃんと聴きたい”という声がTwitterだけじゃなく、ラジオにもたくさん届いたみたいで。有線のリクエストチャートで自分たちが思いがけないような大反響が起きたりして。求めてくれてる声があったから今回シングルにすることができた。それがすごく嬉しいです。

──サウンドプロデューサーの亀田誠治さんとの作業はいかがでしたか?

HARUNA:亀田さんには、まず「自分たちだけのサウンドで楽曲を完成させたい」というお話をさせてもらいました。そこは今でも大事にしてきてるし、ライブをいつも頭に置いて制作するので、自分たち以外の音を入れるのはなんか違うかなって。でも一方で、「亀田さんがこの曲を聴いて、もっと良くなるアイデアがあればどんどんアドバイスしてください」とも言ったんですね。

──だからなのか、切ない曲調にストリングスサウンドが入ると楽曲のイメージがそっちへ引っぱられしまうところですが、「Departure」は4人のバンドサウンドが前面に押し出されているんですよね。

HARUNA:レコーディング終了後に亀田さんが、「みんながバンドサウンドにこだわってるって、それを何度も念押しして言うから、それが結構なプレッシャーだったよ(笑)」っておっしゃってました(笑)。

──亀田さんもバンドマンだし、みんなの気持ちが分かったんでしょうね、きっと。

RINA:そうですね。ドラムのレコーディングでは、まずライブでも使っているドラムセットで音を作ったんです。それを聴いた亀田さんが、タムとスネア、キックももう少しミュートさせるといいんじゃないかってアドバイスしてくれて。あと、いつもは14インチのハイハットを使っているんですけど、このレコーディングでは一回り大きい15インチを使ってジャリジャリな感じにしたんです。それは意外でしたね。もう少し沈めた感じがいいのかなって思ってたから。

──ところが、ハットの存在感がバンド感をより強めているんですよね。

RINA:そう。叩いてる時は強すぎるんじゃないかな、大丈夫かなって思ったんですけど、実際の音源ではストリングスがプラスされているので、それくらい強い音で全然違和感がなかったという。むしろ、それがカッコよくなってて。新しい発見でしたね。キックも4つ打ちで、ずっと抑えて踏むことが大切なんですね、曲調としては。で、実際に音源で聴いてみると、ミュートさせたキックの音のほうがずっと聴きやすかったんですよ。

──亀田さんはベーシストですが、ベーシスト同士どんな話を?

TOMOMI:そうやなぁ……亀田さんが私の使ってるベースを実際に弾いてみて、「弦高が高いね」って(笑)。亀田さん自身は結構ベタベタに弦高を下げてセットされてるみたいで。「私は弦高が高い方が弾き方としても合ってるし、粒立ちもいいのでそうしてます」みたいな話をしましたね。レコーディングに関しては、普段ベースはうっすら歪ませてるんです。でも、今回のレコーディングで使ったPJタイプのピックアップを搭載したプレベは、出力も高いのでそのままのナチュラルな音がいいかなと思って試して。そしたらそれが一番しっくり来たのでそのまま採用しました。フレーズに関しても基本的に自由でしたね、「好きに弾いてね」って感じでした。

──ある意味、1音1音を決めてレコーディングする中田ヤスタカさんとは対極的なプロデュース方法でしたか?

RINA:うん、真逆ですね。亀田さんは「ここは1音抜いてみたら?」とか最終的にジャッジしてくれる感じ。だから、自由過ぎて迷うってこともなかったんです。

──ギターも結構自由な感じでした?

MAMI:曲を作ったときは“シンプルに”っていうのが自分の中でのテーマだったんです。で、自宅で黙々と作ったものを亀田さんに渡してアレンジしてもらったんですけど……返って来たらギターアレンジが全然変わってなくて。シンセとかストリングスを加えたものと、あとは、単音でポロポロ弾く部分が足されていたくらいでしたね。私の弾いたものに対して引き算されてないことに驚いたし、尊重してくれたんだなって嬉しくなりました。

──プレイヤーとしてはアガりますよね?

MAMI:アガりましたね。1番のAメロ、1番のBメロ、1番のサビと、つなぎの部分をガラッと変えられるかもしれないって内心予想してたから、余計でしたね。私の考え方で大丈夫なんだって自信になりました。ただ、音色は変更されたんですね。私は普段の歪みメインの音色がいいと捉えたけど、曲全体を考えた時に亀田さんはクランチ気味がいいと解釈したんだなって。オクターブ奏法が結構多くてバッキングも厚みのある音なので、そこと被らないようにという意味でも歪みを減らしたんです。その合間を縫ってのストリングスがすごく心地よくて、どの音も邪魔しないし邪魔されてないなって、完成形を聴いて改めて感じました。

HARUNA:そうだね。私も普段のライブのエフェクターシステムでクランチトーンを作っていきました。いつもは“歪ませてなんぼ”みたいなところがあるんだけど(笑)、歪ませると音の輪郭が消えてしまうこともあるんですよ。でも今回は音源でもしっかりとリズムギターが聴こえるので……今さらながらちょっと恥ずかしいって気持ちになりました(笑)。

──聴こえるのが恥ずかしいギタリストって、珍しいですよ(笑)。だいたいこれまでどれだけレコーディングしてきてるんですかっていう(笑)。

HARUNA:ふふふ(笑)。今回は新しい自分の音というか、この曲を作ったことでSCANDALの音世界が広がっていく気がしましたね。

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