【インタビュー】陰陽座「自分は用無しになるということを覚悟した上で、むしろその天下泰平を求めて戦いに臨む政宗の意志。それこそがこの物語の最大の肝だと思います」
■身を引いて天下を預けたことに政宗は誇りを持っている
■その2行は陰陽座に対する僕自身の気持ちを重ねています
――政宗の潔い武人像と楽曲の爽やかさがマッチした上で、サビ頭にスパーン! と入ってくる黒猫さんの歌唱は、確かに素晴らしく爽快で心地よいですね。
黒猫:ありがとうございます。頭では瞬火が熱い歌唱を聴かせているだけに、そこからパーッと広がっていくような対比は、私もすごく好きです。
瞬火:全編を通して政宗の心情を歌ったものではありますが、強いて言うと武人として戦いに赴く独白的な部分を僕が、少し第三者的に読み上げるナレーション的な部分を黒猫が歌っているんですよ。
――なるほど。物語性豊かな曲だけに、間奏のギターソロにせよ歌にせよ、語り掛けられているような印象もありました。
瞬火:戦国の時代を終わらせるための戦いに臨むという、本当に真っ直ぐな気持ちと状況を歌っている曲なので、実際にリフ、楽曲の進行、メロディと全てにおいて真ん中に直球を投げるような気持ちで作っています。途中、メロウになるところ以外ではギターもいわゆるパワーコードで愚直に押して、ストレートに駆け抜ける楽曲にしようと無駄なものを削ぎ落とした結果、より歌詞と歌が味わい深く届いたのかもしれませんね。
――全体的にシンプルなぶん、そのメロウなパートでは瞬火さんのヴォーカルに黒猫さんのコーラスが重なっていて、幻想感を際立たせていますね。
▲招鬼 |
▲狩姦 |
――そのお話を聞くと、ラストの“能わぬ 武士は 去りゆくも/最後に 叫ぶ 無天の 誉れを”というフレーズが、あまりにも切ない……!
黒猫:そうなんですよ。
瞬火:そのへんが潔さからくる清涼感という部分でしょうね。身を引いて天下を預けたことに政宗は誇りを持っているわけですが、正直、その2行は書いていて……陰陽座に対する僕自身の気持ちを重ねてしまいましたね。陰陽座というのは、まさに無天のバンドだと思っていますし、これからも僕たちはそれを誇りに最後まで歩むでしょうから。
――“無天”とは、つまり天下を取らなかったという意味ですけれど、「む○○」という単語、陰陽座の歌詞にも比較的よく出てきますよね。
瞬火:“無天”は僕にしては珍しく造語ですけど、「む○○」は音も好きだし、歌詞に求める意味にはまることが多いので、よく使いますね。テンションコードが好きだから良く使う、という感じですかね(笑)。
黒猫:その歌詞を瞬火の説明を聴きながら読んで、さらに、このタイトルに籠められた背景を聞いたとき、“よくこんなタイトルつけたな”と痺れました!
瞬火:要するに“青天”、つまり晴れた空が太平の天下を象徴しているものとして、そこに浮かぶ“三日月”――兜の形が表すところの政宗は、見えもしなければ光も放たない無用の存在であるということですね。つまり、天下泰平の時代が来ると同時に、戦いに明け暮れた武人としての自分の役目が終わるのだという政宗の決意が、このタイトルにも籠められているんです。さらに、1作目「蒼き独眼」には“独(1)”、2作目「紺碧の双刃」には“双(2)”、3作目「青天の三日月」には“三”と、それぞれ作品の順番を示唆する数字が入っている…という仕掛けもありますが、これは僕の自己満足…というか性癖ですね(笑)。
黒猫:それを聞いたときには、もうメンバー3人で言葉もなく、ただただ感心して感動しちゃいました(笑)。
――いや、凄すぎて笑っちゃいますね。しかも、武人の意義を失うというネガティブは、裏を返すと天下泰平というポジティブでもあるというところに、“陰陽座"というバンド名にも帰結するような思想を感じます。つまり、物事には全て表と裏があるという。
黒猫:結局、全部が陰陽座なんですよね。そういう瞬火の歌詞もタイトルに籠めた想いも、全部ホントに陰陽座イズム、瞬火イズムに溢れていて、なおかつタイアップのオファーにも完璧に応えられている。そこに喜びも当然ありましたし、“陰陽座のメンバーで本当に良かったな”って心から思いました。
瞬火:タイアップ曲であっても日和った部分だとか、バンドの芯からズレるようなことは今までもしたことがありませんし、今回もそれが全く無い上で先方の要望に応え、陰陽座として誇れる楽曲を提示できたのは嬉しいことです。
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