【インタビュー】家入レオ「いろんな人に支えてもらって、いろんな人の気持ちを知ることができたからこそ、この『a boy』ができたんです」
家入レオの2ndアルバム『a boy』は、彼女の“大人になろうとする決意”が主軸に据えられている。かつて大嫌いだった、そして今も好きとは言えない大人になる準備を始めたのは、大切なもの、守るべきものを守るためだという。前作で心の内側をえぐり出して見せた彼女は今、自身の内側と同じくらい、外側にも目を向けている。ストレートなロックチューンからみずみずしくやわらかな曲まで、家入レオのリアルが鮮やかに刻まれた渾身の1枚だ。
◆家入レオ『a boy』拡大画像
■私はこの景色とこの雰囲気を守っていきたいって思ったんです
■守りたいものを守るには大人になるのが一番いいんじゃないかと
──今回、最初に“こういうアルバムを作ろう”っていう、目指す着地点みたいなものはあったんですか?
家入レオ(以下、家入):いえ。私はアルバムをリリースするから曲を作ろうっていう作り方があんまり好きじゃないんです。だからこのアルバムも、1stワンマンツアー後に日々制作してた曲の中から“今この歳だったらこの曲かな”っていうのを選んで、それプラス、“このラインナップだったらこういうテイストの曲もほしいな”っていうところで作って選んでいきました。ただ、曲を選ぶにあたって1つ思ったのは、“大人になろう”っていうこと。今回、自分が大嫌いだった大人になろうと思えたことがすごく大きかったんです。実際“大人になろう”と思えたからこそできた曲もありますし、そのことで幅も広がったと思っていて。
──なぜ大嫌いだった“大人”になろうと思ったの?
家入:ワンマンツアーを廻って、リスナーのかたの存在がすごく大きかった。1stアルバム『LEO』は自分の葛藤や弱さをさらけ出した1枚だったんですが、テレビとかメディアに出た時、いろんな反応があったんです。良い反応もあれば、そうじゃない反応もあって。とはいえメディアに出た後に書き込まれる言葉は、こっちが見なければ関係ないじゃないですか。だけどライヴは直に反応が返ってくる。だから怖くて、“大丈夫かな…?”と思ってたんですけど。ギュッとつぶってた目をそぉっと開けてみたら、ステージの向こう側に笑顔だったり涙してくださってる人達がいて。生まれて初めて心が震えた瞬間だったというか、その時、私はこの景色とこの雰囲気を守っていきたいって思ったんですよね。で、守りたいものを守るには、自分が大人にならなきゃ、と思ったんです。子どもはどんなに頑張っても結局は大人の判断とか大人の事情で左右されることが多くて、現実的にも社会的にも大切なものを守れないので。じゃあ、自分は自分の信じるもの、守りたいものを守るために、大人になろうって。
──ワンマンツアーはそれだけレオちゃんにとって大きいものだったんですね。
家入:大きかったですね。で、大人になる決意をしたら、過去の自分が客観的に見えてきて。前までは私、ほしいものがあってそれが手に入らないってなると、自分のせいじゃなくて周りのせいにしてたんです。周りのせいにして努力もしない、かといって見放されるのも嫌だから自分のことを傷つけたり壊してみたりする。それって今思うと本当にダメだなと。でも当時の自分と同じようにもがいている人達はいるはずだし、そういう人達に、当時の自分が言ってほしかった言葉とか、その道を通ってきたからこそ言えることを伝えようと思って、言葉を大事にして書いたのが、表題曲の「a boy」という曲なんです。
──前作『LEO』では内側に向いていた目線が、この曲では外側に向いていて。そういうところにも“また1つ成長した家入レオ”を感じました。でも、この曲のタイトルを「a boy」にしたのは?
家入:これはですね、大人になろうって決意した瞬間をどういう言葉で表現したらいいかな?って考えた時に、男の子の声変わりとリンクしたんです。声変わりの時期って自分じゃ選べない。明日かもしれないし、半年後、1年後かもしれない。そうやって選べない中で生きてる少年の横顔の凛々しさだったり憂いだったり、あと“僕は声変わりがいつ来ても受け入れます”っていう覚悟みたいなもの……それが今の自分とリンクしてるものがあるなと思って、タイトルを「a boy」にしました。
──女の子も声変わりはしないけど大人に移行していく時期はあるわけで、何よりレオちゃんは女の子だし、その時、例えば「a girl」というタイトルは……。
家入:浮かばなかったですね(笑)。もともと声が少年ぽいって言われることが多かったっていうのもありますし、女性の中にある凛々しさっていう意味で“a boy”を選んだところもあって。私的に女性の中にある少年ぽさって何か惹かれるものがあるんですよ。今にも壊れそうで、でもひたむきに進んでいこうとする、女性の凛々しさだったり、純粋で無垢な感じがいいなと思って。
──なるほど。“a boy”というタイトルには深い想いやイメージが凝縮されているんですね。で、この曲は西尾プロデューサーの作曲なんですよね。
家入:はい。1stアルバムの時は今にも爆発しそうな気持ちを自分で作りたいっていうのが強くて、西尾さんに「この曲歌ってみる?」って言われても全部断ってたんです、実は。でも1stワンマン、2ndワンマンとツアーをやった時に、“自分で作った”っていうのはさほど重要じゃないなと思った。歌うことで自分の想いを表現できてるし、100%自分が作ったっていうのは自己満足に過ぎないなって。一番大事なのは、自分が信じているいい音楽を皆さんに伝え続けていくこと。だからそういうところに重点を置かなくなったっていうのが1つあって、そこは柔軟になってきました。で、この曲を最初に聴いた時、すごくうれしかったんです。13歳の時から一緒に曲作りをしてきた西尾さんが、遠回しに(家入レオのことが)大切だって言ってくれてる気がして。だからそのお返しとして、私も自分の人生と向き合ってみようと思って歌詞を書いたんですが、すごく意味のある1曲になったと思います。
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