【2014年グラミー特集】グラミー賞座談会番外編「ザ・ビートルズ・トリビュートライブを語る」
1964年2月9日、ザ・ビートルズがアメリカの国民的バラエティー番組「エド・サリヴァン・ショー」に出演し、歴史的なパフォーマンスを行った。それから50周年を迎えた今年、名立たるグラミーアーティストたちがビートルズの楽曲を演奏するトリビュートライブが開催された。
◆ザ・ビートルズ画像
第56回グラミー賞授賞式を前に、日本最大級の音楽情報サイト『BARKS』の烏丸哲也、音楽専門誌『MUSICA』創刊者で音楽ジャーナリストの鹿野淳、タワーレコード株式会社で長年グラミー賞のプロモーションに携わってきた高谷信夫、多くのグラミー賞ノミネーションアーティストを抱え、今年度のコンピレーションCD『2014 GRAMMY(R)ノミニーズ』発売元のワーナーミュージック・ジャパン株式会社で同作品のプロダクトマーケティングを担当した小野誠二、小阪弥生ら、日本の音楽シーンをけん引するメディアが集結して、座談会を開催。
2月11日(火・祝)よる9:00からWOWOWライブで放送される『ザ・ビートルズ・トリビュートライブ ~グラミー・スペシャル~』を前に、今回は番外編として、ビートルズが世界に与えた影響の大きさや、この度のコンサートの価値など、熱い議論の模様をお届けする。
※当座談会は2014年1月15日に行われたものです。
――1月27日に、『ザ・ビートルズ・トリビュートライブ ~グラミー・スペシャル~』(原題:The Night That Changed America: A Grammy Salute to the Beatles)がロサンゼルスで開催されます。ビートルズに対する思い入れや、エピソードを聞かせていただけますか?
烏丸:ぼくは70年代に洋楽に出会って80年代に突入していった典型的な洋楽世代で、キッス、エアロスミス、クイーン、そのあとジューダス・プリーストといったヘヴィメタルを聞いて育ちました。ちょうど僕らの世代のひとつ、ふたつ上の先輩たちがビートルズやローリング・ストーンズを聞いていたのですが、僕らも反逆精神というか、ねじれたものを持っていたので、本当の意味でビートルズに接して、彼らの楽曲を聞いたのは後からなんですよね。「みんなは良いっていうけどおれは知らねえ」みたいな世代だったので。ビートルズの熱狂的なファンは僕らの上の世代にたくさんいて、だからお呼びじゃない感じもしたし、その時はあえて見てこなかった。
今回のライブは、他のアーティストのパフォーマンスを通してビートルズの楽曲の素晴らしさが改めて伝わっていく、貴重な機会だと思います。曲名は知らなくても、メロディを聞けば「聞いたことある!良い曲だよね」と、きっと感じると思う。ビートルズについて20代や30代の方と話す機会があったのですが、4人のメンバーの名前は言えなくても、ジョンとポールの名前は言える方が多かった。50年前のアーティストの、ましてや外国のグループのメンバーの名前が、たとえ2人だけでも知られてることはすごいことだと思いますよ。
鹿野:5歳の頃からエレクトーンを弾いていたのですが、『エレナ・リグビー』や『ヘイ・ジュード』といった曲で、中野サンプラザのコンテストを駆け上がったことがありました。当時の自分にとってそれらがロックという認識はなく、ポップスとして受け入れていた。その後、小学校を過ぎ、僕にこれらの曲を授けてくれたエレクトーンの先生からロックが何なのか? そして色恋沙汰のAからZまでをもご教授いただき、ビートルズが紛れもなくロックだったと知ることが出来ました。自分の青春期における象徴的なバンドがビートルズだったんです。
それと、サッカーの取材で彼らの出身地であるリバプールへ行ったことがあるのですが、本当にびっくりしたことは、多くのリバプールの街の人にとって、ジョン・レノンは「アメリカに殺された人間」なんですよね。そしてオノ・ヨーコは、アメリカへジョンを連れて行った戦犯だと。そういうことをカフェの人やタクシーの運転手が平気で言ったりするんです。もちろんそれが総意ではないにしても、「いまだに世界は、ビートルズの取り合いをしているんだな。凄い事だな」と感じました。ビートルズは今もなお、世の中にとっての最先端であって、今回のトリビュートライブの開催からも、その一端を感じます。あらゆる人たちが、国が、カルチャーが、ビートルズの取り合いをしているんだなと、まざまざと感じさせられますね。
高谷:タワーレコードの人はたいていビートルズが好きなんですけど、その中でぼくは珍しく、あまり通っていないんですよ。もともと兄の影響でヘヴィメタルを聞いていて、初めて買ったCDはジャーマン・メタルのハロウィン(笑)。それで中学生のときにバンド・ブームがあって、ヘヴィメタルを聞きながらユニコーンも聞いていたのですが、奥田民生さんも影響を受けていたバンドだということを後から知ったんですよね。すかんちを聞いて後からクイーンを知る、みたいな。タワーレコードに入ってからも毎年ビートルズのプロモーションは何かしらあって、それこそはっぴを作ったり、施策を組み立てたりしています。
小野:僕も、洋楽を聞き始めた時には既にビートルズはレジェンドだったので、逆にすごくはまったりはしなかった。ラジオ関東で流れていた湯川れい子先生の「全米トップ40」とか、ヒット・チャートから洋楽を聞いていたので、ビートルズを通らなかったんです。ビートルズが良いのは当たり前で、それを大きな声で言うのは恥ずかしいという空気すらあったと思います。初めて彼らの存在をきちんと認識したのは、 ポール・マッカートニーとマイケル・ジャクソンがコラボした「セイ・セイ・セイ」。「すげえ、マイケルとやったんだ。すげえ!」みたいな感じでした(笑)。ただ、プリンスが好きだったのですが、ビートルズは彼にも影響を与えていて、世代や国を超える存在なんだなと。ビートルズに影響を受けた人たちの音楽を聞くことで、改めて彼らのすごさを知る機会は数多くありました。
あと個人的には、僕は名字が「小野」で。大学の時に英文科だったのですが、アメリカ人の先生のゼミに入っていて、その先生が破天荒な人でした。なぜかオノ・ヨーコさんとお知り合いで、ジョン・レノンを学ぼう、ヨーコさんに手紙を書こう、という授業があったんですよ。そしたらヨーコさんからちゃんと返事が来まして。ちょっとした思い出になっています(笑)。
小阪:わたしも、友達のお父さんがアルバムを持っていて、その家で聞いたことがあるくらいで、ビートルズは通って来ませんでした。たしかに曲は聞きやすいけれど、英語もわからないし、良さはよく分かっていないという感じでした。彼らは汚されない存在であって、ビートルズって良いバンドです、良い曲を書く人たちです、という認識はずっとありましたね。
アメリカの大学へ行ったとき、「ヒストリー・オブ・ロックンロール」という授業があってそれを受講していました。それこそ1920年代のブルースに始まり、最終的にはエミネムまでカバーする幅広い授業だったのですが、1960年代以降は、どのタイムラインにもビートルズが出てくるんですよね。どのバンドも、どのアーティストも彼らに影響を受けていて、そこで初めてビートルズの影響力とすごさを認識した。自分がリアルタイムで聞いていたアーティストたちも聞いていた、すごいバンドなんだと。
鹿野:何十というロックバンドやソロのアーティストに毎年取材している中で、特に新人の方たちには、影響を受けた音楽や、曲を作ったきっかけのアーティストなどを聞いたりしています。すると、いまだに影響を受けたアーティストランキングで、ビートルズがBUMP OF CHICKENが1位と2位を争っているんです。20歳前後から25歳くらいまでの日本のミュージシャンの方々が、影響を受けたアーティストとして最も高い頻度でビートルズの名前を挙げている。親なのか、兄弟なのか、YouTubeなのかネットなのか、必ずどこかからビートルズに辿り着いているんです。いまだにフレッシュな音楽としてビートルズが聴かれている現実は、こういう所にもありますよね。
烏丸:元を辿ると、1960年代生まれの僕らの世代の家庭には、あたりまえのようにサイモン&ガーファンクルとカーペンターズ、それと、ビートルズの赤(ベスト盤『1962~1966』)と青(ベスト盤『1967~1970』)が必ずありましたよね。
鹿野:あと、ABBA!
烏丸:ABBAもありましたね(笑)。だから、ビートルズのことはみんな知っている。そこから次の世代、次の世代へと橋渡しされることで、どのシーンでも脈々と繋がっているのかもしれないですね。
――2014年に改めてビートルズを評価することに対して、特別な意味を感じる一方で、特別な意味はないという捉え方もあるのですね。
鹿野:すっかり年をとった我々にとっては、そこにスポットがあてられることで、なにかが報われたような気がします(笑)。逆に若い人にとっては、ビートルズこそが未知の体験による最先端の音楽でもあるわけで。色々な角度や年代によって、ビートルズが位置づけられているとも言えると思う。そこで今回2014年、ビートルズに対してグラミー賞がなにを授けるのか、何を世界に伝えようとするのか、楽しみですよね本当に。
Photo:WireImage
「ザ・ビートルズ・トリビュートライブ ~グラミー・スペシャル~」
2月11日(火・祝)夜9:00[WOWOWライブ]
ポール・マッカートニーとリンゴ・スターが、ザ・ビートルズ解散以降初となる「ヘイ・ジュード」で共演!スティーヴィー・ワンダー、ユーリズミックス、マ ルーン5、アリシア・キーズ、ケイティ・ペリーをはじめ豪華グラミーアーティストがザ・ビートルズの名曲をパフォーマンス!その模様をWOWOWで2月9 日独占放送!
http://www.wowow.co.jp/music/beatles/
「ビートルズと私」
2月11日(火・祝)夜7:30[WOWOWライブ]
ビートルズの大ファンであるシンガー・ソングライター、セス・スワースキーが8年かけて制作。50人以上の関係者へのインタビューを通して、ザ・ビートルズをひもとく。
http://www.wowow.co.jp/music/beatles/
「サウンド・シティ -リアル・トゥ・リール ポール・マッカートニー、ニール・ヤング、カート・コバーンが愛した伝説のスタジオ」
2月9日(日)夜11:00[WOWOWライブ]
伝説のスタジオ「サウンド・シティ」の隆盛と衰退を追う。ロックのアイコン、デイヴ・グロールが映画初監督を務めるドキュメンタリー映画。この作品から、 「Cut Me Some Slack」が第56回グラミー賞の最優秀ロック・ソング、そしてサウンドトラックが同賞最優秀サウンドトラック・アルバムを受賞した。
http://www.wowow.co.jp/pg_info/detail/104785/
「第56回グラミー賞授賞式」
3月16日(日)午後3:00[WOWOWライブ]
9部門にノミネートされたJAY-Zとビヨンセの夫婦共演という豪華なオープニングアクトからスタートした第56回グラミー賞授賞式。AKB48とのコラ ボで日本でも人気のロビン・シックとシカゴの共演や、ダフト・パンクとスティーヴィー・ワンダーとの共演、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターによる 共演など普段は見る事が出来ない蒼々たるメンバーによるライブ・パフォーマンスに富んだ音楽の祭典に相応しい豪華な内容を再び。
http://www.wowow.co.jp/music/grammy/
◆WOWOW『生中継!グラミー賞ノミネーションコンサート』サイト
◆WOWOW×BARKS2014年グラミー特集チャンネル
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