【インタビュー】カーディガンズのニーナ・パーションが80年代ポップのテイストが色濃く現れた意欲作をドロップ
■いまのカーディガンズはある種の恋愛関係にあるような感じ
■こんなふうになれるバンドってあんまりないんじゃないかしら
――80年代のダンス・ポップっぽい雰囲気がかなり前に出てますよね。リード曲の「アニマル・ハート」からしてエレクトロ・タッチのダンス・ポップですし。
ニーナ:そうね。私の音楽的なルーツはカーディガンズでも表現できていたと思うけど、カーディガンズに入る前に私はどんなものを聴いていたのか、ふと考えたのね。で、そういえば80年代のラジオ・ヒットをたくさん聴いていたことを思い出したの。80年代のポップ・ヒットにかなり親しんでいて、そういうのも私を形成した一部なんだから、だったらそれを取り入れようって思って。とはいえ、それだけが私のルーツというわけではないから、そのあとでインディー・ロックやアメリカーナやカントリーの要素も入れてみた。結局これは、私の通ってきたいろんな音楽が混ざったものになったわ。
――あなたのヴォーカルに関してですが、今作ではいままでよりもエモーショナルに歌っているように感じました。いかがですか?
ニーナ:ええ、そう思うわ。そういうふうに歌えたって自分でも思う。なぜなら曲自体がより感情的なものだから。カーディガンズの曲作りの大半はピーターが関与してたわけだけど、彼はちゃんとした音楽教育を受けているから、わりと知性的というか、コード進行ありきで作るタイプなのね。ギタリストが作る曲というか。それに比べて私の場合は知性よりも直感がものをいうタイプで(笑)。私は何かに対して鳥肌がたったときに曲を作るの。あと、エリックの作る曲にファンキーな要素があったことも大きいかも。これまで私がやってたバンドにそういうリズムの要素はなかったので、その感覚は私にとって新鮮だったわ。そのおかげで今回はいつもよりソウルフルに歌うことができたのね。
――なるほど。ところで、このアルバムにはドラマーがふたり参加しています。そのうちのひとりはカーディガンズのベンクトでしたが、やはり彼とは息が合うのでしょうか?
ニーナ:そうよ。彼は最高だもん。もうひとりのドラマーのブライアンはアメリカ人で、彼も素晴らしいんだけど、初めてブライアンに会ったとき、彼は「ぼくはカーディガンズが大好きで、ベンクトはぼくのヒーローなんです」って言ってた。私のともだちをそんなふうに言ってもらえるなんて嬉しかったわ。で、「ベンクトの参加するアルバムにぼくも参加させてもらえませんか?」って言うから「もちろん!」って応えて。
――いい話ですねぇ。
ニーナ:でしょ(笑)。ベンクトとはいままでカーディガンズの曲でしか一緒にやったことがなかったけど、今回私の音楽を一緒にやれてよかったわ。あ、そういえば(カーディガンズのキーボードの)ラスはいま、ブラザーズ・オブ・エンドという素晴らしいバンドで活動しているんだけど、最近私は彼らのレコーディングでも少し歌ってきたところなの。そうやって昔からのともだちと助けあいながらやっていけるのは、とても素敵なことだなって思う。
――そうですね。ところであなたがカーディガンズのメンバーとしてデビューしてから、もう20年が経ちます。
ニーナ:バンドを始めてからもう21年よ。
――振り返ってみて、どう思います?
ニーナ:あまりにも長い道のりだったから、その年月をどう捉えていいかわからないわ。でも最近になってようやく自分の歩いてきた道が見えてきた気がしているの。とても誇りに思ってる。たまにインタビューで「何か後悔はありますか?」って訊かれるんだけど、後悔なんて何もないわ。まぁ、若い頃からもっと楽しんでやれていればよかったとはちょっと思うけど。けっこういっぱいいっぱいな感じだった時期があったからね。でもいまは本当に楽しめている。この前の日本ではカーディガンズのグレイテスト・ヒッツ的なライブをやったけど、あれもすごく楽しかったわ。なんかバカみたいな話だけど、いまのカーディガンズはある種の恋愛関係にあるような感じなのよ。一緒にいてすごくほっとするのよね。長くやってきて、こんなふうになれるバンドって、あんまりないんじゃないかしら。
――素晴らしいことですね。では、今後の予定を。今回のソロ作を携えてのツアーはありますか?
ニーナ:あるわよ。北欧とヨーロッパ、あとアメリカもブッキングが始まってる。私としては日本にもぜひ行きたいわ。できれば日本ではオフの時間もとってゆっくりしたいの。私が日本に行けるように、みんな、声を大にしてリクエストしてね(笑)。
取材・文●内本順一
『アニマル・ハート』
2014/01/29 Release
COCB-60106 ¥2,300+税
1.Animal Heart
2.Burning Bridges For Fuel
3.Dreaming of Houses
4.Clip Your Wings
5.Jungle
6.Food For the Beast
7.Digestif
8.Forgot to tell you
9.Catch me Crying
10.The Grand Destruction Game
11.Silver
12.This is Heavy Metal
◆日本コロムビア