【インタビュー】吉田尚記の野望~渋谷系とアニソンとDJ~

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「ミュ~コミ+プラス」コラボ企画でおなじみ、ニッポン放送のアナウンサーとして数々の番組のパーソナリティを努め、放送業界でも屈指のオタクとして知られる吉田尚記アナウンサー(通称:よっぴー)に、「アニソン」についてのエピソードや考えをインタビューした。

アナウンサー、落語家、アニソンDJなど、多種多様な顔を見せる吉田アナのアニソン観と素顔に迫る。

■渋谷系が元々好きで、アニソンは別個の存在だったんです。

──業界屈指のアニメオタクとして有名な吉田アナですが、特に印象的なアニソンのエピソードってありますか?

吉田尚記(以下、吉田):私的に最大のビックリなんですが、Swinging Popsicleが大好きだったんです。90年代序盤の渋谷系の。それがある日、『スマガ』っていうニトロプラスの美少女ゲームの主題歌になっていてすごくビックリしました。何でこんなことが起きるんだって瞬間が、僕の中で全てが融合しておかしくなった瞬間です。

──その融合するまではアニソンをどう捉えていたのですか?

吉田:中学生ぐらいの時から良いアニソンはあると思ってました。アニソンはアニソンで個人的に好きだったんですが、ひたひたとずっと好きでいて、でも人に言う必要はないし、更にそれとは別に渋谷系がずっと大好きだったんです。それにしたって、アニメの趣味とは自分の中では関係ないんです。それが突然融合したのがとにかくすごかった。もっとわかりやすいところだと、竹達彩奈の担当がシンパルスだったり、西川貴教さんで言えば「HEART OF SWORD」とか、『鋼の錬金術師』のASIAN KUNG-FU GENERATIONとか。当時から雑食だったので色々な部分で気づきがありましたね。あと、山本正之さんが大好きで20年来のファンなんですが、ヒーローソングのような山本正之さんのたぎるものと、J-ROCKが経験してきたものを消化したのが今のUNISON SQUARE GARDENだと思うんです。超好きなんです。

──入口は人それぞれですよね。あるアニメ作品を見たのがきっかけだったりとか。

吉田:世間の人は「この曲いいな」からアニソンに入るんですかね。でもメジャーカルチャーの人がアニメを見てることってあまりないと思うんです。逆にアニメ業界の人でメジャー物も好きって人はすごく多い。メジャーカルチャーの人が見てるのって進撃の巨人でギリギリじゃないですか?でも、元々アニメとかコアな物を作っている人たちってメジャーなものも見てるんです。「パシフィック・リム」の話は大体皆さんできますよね。こういった作ってる側の懐の広さとかがアニソンの強いところじゃないかと思います。僕自身がフリージャンルで色々観てきているのもありますが、僕の個人的な体験で言うと、フリージャンルが今うまく組み合わさってアニソンに出てきているなと思います。そして、アニソンっていうのは必ず89秒バージョンが必ず存在するんです。この縛りがクリエイティブだった。ラジオだったら4分曲をかけて2分喋ると良いという鉄則があって、同じように1分半ってきっと気持ちがいい生理的な理由があるんです。そこにおさまるように上手くハンドリングされた音楽、アニソンを聴いている人たちって恐らく一番豊かな体験をしているんじゃないかな。

──アニソンって、作品の世界観も重要ですよね。

吉田:アニソンって、看板があって、ヴィレッジヴァンガードみたいなお店にオールジャンルの音楽が並んでいるイメージなんです。例えなんですが、ヴィレッジヴァンガードって看板を見つけた、お店に入ったらいろんな音楽が流れていて楽しい。このお店の看板がアニソンという看板で、90秒というルールのもとにオールジャンルの素晴らしい商品が並んでいるんです。あと、アニメの記憶再生装置としての機能もある。その音楽のシーンが流れると泣いちゃう、みたいな記憶のトリガーとしての機能は強いですね。さらに作品の映像が良ければもう最高。でも逆に映像によってある程度左右されてしまって、明暗が別れるのも難しい。Blu-rayの売上も関係ないとは言えないし。

──なるほど、今年の吉田アナ的ヒットアニメはなんですか?

吉田:『サイコパス』が最高におもしろかった。毎回面白くて何度でも観ていられる。「名前のない怪物」とか超名曲です。ロックフェスで聴いたら絶対楽しいですよ。あと、竹達彩奈はうまくプロデュースされてると思います。音楽活動始めるって聞いて、担当してるシンパルスが“可愛くって意地悪なバンドをやりたい”というワードを元々掲げてるんですが、まんまじゃん、って思いました。バースデーライブも司会として参加した際に、ギターが木暮晋也で、ドラムは白根さんが参加し、2人が同時に舞台に上がったのって小沢健二以来ですよ。ディレクターが、声優っていうポップアイコンの使い方をずば抜けてよく分かっています。

──実は...のいい例ですね。ちなみに今年アニソンで一番すごかったと感じた事件はありますか?

吉田:クラムボンのカバーアルバムかもしれません。「ごはんはおかず」もヤバいんですが、「幸せ願う彼方から」という『らき☆すた』のキャラソンがあり、劇中で一回だけ流れてるシーンをミトさんが見つけてきて採用しちゃって、これめっちゃいい曲なんです。事もあろうに元がキャラソンなのに、リードトラックになって映像もついちゃって、PV撮ってるのがあの行定勲なんですよ。アニメだからすごいってわけでもないと思うんですが、アニソンという全ての食材を消化することができる土壌も、客側の消化力もある。投げたものに対するリアクションが、ちゃんと消化してから返ってくる。すばらしい。

──受け手もちゃんと受け止めて、多角的に批評してくれるんですよね。

吉田:特に、いいものを投げた時に、ちゃんと「いいじゃん」って返ってくる。しかもあまり否定的じゃないんです。肯定的な上にしっかりと批評が返ってくるんです。いいだろ、って投げても返ってこないものは返ってこないという厳しさもありますけどね。

──吉田アナが、今後やってみたいことってありますか?

吉田:まさにアニソンDJです。アンセムを生むシステムなんです、見事に皆が楽しめる。アーティストがいなくても曲をかけるだけで楽しい。<ヨシダワイヤー>もすごく楽しかったんですが、<あきねっと>がものすごく楽しかったので、もっとやってみたいですね。アニソンのライブに人が来るようになったのってここ5年くらいだと思うんです。でもクラブってアニソンファンにとってはまだハードルがあるような気がします。そこを突破すると、お酒を飲んでアニソンを聴いたら楽しいに決まってるんだから…もっと多くやりたいです。やりたいことというか、海外みたいにもっとたくさん出来るといいな。僕も上海には呼ばれてて。せっかくアンセムになってるのに、ライブイベント以外で楽しめないのはもったいないです。最終的に目指すのは、アニソンのラブパレードです。LCCとかで皆で海外に行って、やっちゃいたいですね。

──最後に、BARKSアニメチャンネルの立ち上げに際して、コメントをお願いします。

吉田:アニメのメディアはたくさんありますけど、一般の人にもアニソンの音楽性の良さをわかってもらえるような、世の中にアニソンを伝えられるメディアになってほしいなと思ってます。アニソンの汽水域を大切にして、世の中の大海に向けて発信していけるのは楽しいですね。


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