【インタビュー】陰陽座、新曲2曲を含む燦然と輝く龍と鳳凰を冠した7年ぶり2枚目のベストアルバム『龍凰珠玉』

ポスト

■初めて陰陽座に触れる方もずっと応援してきてくれた方も
■すべての皆様に楽しんでいただければ幸せでございます

――それを伺うと人間賛歌的な響きも感じられます。そして名リリーフの「生きもの狂い」というネーミングは、“死にもの狂い”から来ているんだとか。

瞬火:そうです。死も厭わないほどの気持ちで懸命にやるというのが“死にもの狂い”の意味ですけれど、むしろ“死ぬ”ことよりもよっぽど大変な“生きる”という気持ちで懸命にやるほうが、何倍も強い意志がある気がして捩ってみたという……要するに、ただの屁理屈ですね。

黒猫:最初に曲だけ聴いたときは、単純にライブで盛り上がりそうなカッコいい曲だ!と思ったんですが、歌詞を貰ってさらに深味が増しました。こんな楽しい曲調で、人生の悲哀だったり人生哲学的なことを歌われると、グッとくるなぁって。特に瞬火の声で、そういうことを歌っている曲が、私は無条件で大好きなんですよ!

――メインボーカルは瞬火さんですもんね。仰る通り、曲調とは対照的に歌詞はシリアスで、特にAメロでは人間のネガティブな側面が描かれているのが意外でした。

瞬火:だって何のストレスも不満も不安もなく、楽しいだけで生きている人間なんて、此の世にいないはずじゃないですか。もしもいるならそれは幸せなことですけども、どんなに幸せそうな人でも、その幸せを失いたくないという不安があったり、自分の生きてきた道に誇りを持っていても、ふとした瞬間に“本当はどうだったのかなぁ?”と疑問に苛まれたりもする。そうやって誰もが迷いながら省みながら、とにかく今、現在を肯定し続けていくのが“生きる”ということだと思うので、その“省みる”という瞬間にネガティブなことが垣間見えるのも当然なんです。僕自身が常にそうですからね。だから結局のところ言いたいのは、表に出している外側の自分も、人には見せられない内側の自分も、全部“本当の自分”なんだということなんです。どちらも本当なのだから、そのどちらが見えても何もおかしいことはないと思います。

――他人に見せている姿は偽りだから、内側に渦巻く“本当の自分”を誰か受け止めて!みたいなのはクソッタレだ!と、以前のインタビューでも仰ってましたよね。

瞬火:それは「生きることとみつけたり」について話したときですね。今回のベストではDisc『凰』の最後に収録されていますが、この曲タイトルも武士道の“死ぬこととみつけたり”から来ているんですよ。楽曲的には「生きもの狂い」はアルバムの中でも個性を放っている曲としてライブでも親しまれ、故にベストに選曲されるという流れが仮定できる楽曲だと思います。

狩姦:個人的には英語の歌詞が入りそうな洋楽っぽいカッコよさを感じて、最初に聴いたときから無条件に大好きな曲です。

――内容面では「生きることとみつけたり」に通じる面もありつつ、曲調は楽しげでコミカルな部分もあり、粘りあるギターフレーズも招鬼さんの十八番かと。

招鬼:でも、リードギターとソロは瞬火なんですよ。

――ええ!?

瞬火:僕の中での“自分内設定”としては、陰陽座の招鬼に憧れたギターキッズが、“招鬼みたいなギターが弾きたい!”と思って弾いたという設定ですね。つまり、招鬼らしいプレイをイメージしてデモにギターを入れたら、招鬼に“これでOK”と言われてしまったという。僕を1人のギタリストとして、ある程度ギタリスト2人が信頼してくれているために時々そういう、ファンの人にとっては不幸な事故が起こることがあるんですね。

招鬼:僕が弾きそうなソロを弾いてきたら、僕より良かったというか(笑)。もっとカチッとしたソロだったら、そのフレーズ通りに僕が弾くことも当然できるんですけど、こういうちょっとしたニュアンスが活きる曲の場合、それを僕が覚えて清書するみたいなことをすると……ちょっと違うんですよね。基本的にレコーディング段階では、ギターが3人いるっていうのが陰陽座の考え方なので、そこで無理して“いや、俺が弾く!”って主張する気は無いですし。実際このソロ、いいでしょ?

――いいです。ロックでブルージーでグッとくる。

招鬼:そういうことです。陰陽座の作品として結果カッコよければ、誰が弾くとかどうでもいい。当然ライブになれば僕が弾くわけですから、むしろ楽しみですよ! 他人が作った僕っぽいフレーズを僕が弾くっていう、これも面白い体験ですからね。

――単なるベスト選曲+新曲ではなく、まさしく新曲も含めたベスト盤であることに間違いはありませんが、その一方、今回の収録曲以外でもベストに選んで遜色ない曲が多数あるのが、陰陽座の悩ましいところですね。

瞬火:そうですね。最終的な収録楽曲については一つの正解だと僕らは確信していますけど、“瞬火、全然センスねぇ!”って異を唱える人もいるかもしれないと思えることが、逆に嬉しいというか。ベストアルバムが出て、“必要な曲は全部ここに入ってますね”と言われてしまうのが、一番悲しいことですからね。リリース直後に行われる<冬の三都に馳せ侍ふ也>も『龍凰珠玉』を引っ提げてのツアーではありますが、実は決まったのはツアーが先なんです。たまたまベストアルバムのリリースと並んだだけなので、ベストアルバムだけで語れるバンドではないということも垣間見えるツアーにしたいと思います。東名阪3本しかないぶん、濃縮してやりたいですね。

招鬼:もともとは年末、2013年をファンの方たちと一緒に楽しく盛り上がって終わりたいということで決めたツアーなので、もう、全力で楽しみたいってことだけですね。

狩姦:今年はホントに良い年だったなぁということを実感しながらステージに立ち、来年に向けてのパワーをお客さんからも貰い、そのために僕も楽しんでライブに臨みたいです。

――ちなみに、今年が良い年だった一番の理由は?

狩姦:ベストアルバムが出るじゃないですか!

黒猫:ベストアルバムを2枚も出せるということは、それだけ長く続けてこられたということ、たくさんの方に支えていただいたことの証ですからね。今年はライブの本数が例年より少なめで、制作だとか皆さんの目に見えないところで活動していたんですが、ステージで歌い足りていない!っていう想いを、ライブを観足りてないよ!っていう皆さんと共有して全力で臨みたいです。また、このベストアルバムを聴いて“ライブに行ってみようかな”と思ってくださる方がいるなら……あの、陰陽座のライブは本当に楽しいライブなので。いろんな曲がありますけど、最終的に“楽しかった!”と帰ってもらえるライブをしてますから、怖がらずに、ぜひ足を運んでいただきたいです(笑)。

――そして来年お目見えするであろう新作アルバムについては、「吹けよ風、轟けよ雷」を聴きながら想像を膨らませてほしいと。

瞬火:あの曲が次のアルバムを、ビックリするくらい照らしてますからね。もう、眩しすぎて見えないくらいに(笑)。その全容が明らかになるまでは、この『龍凰珠玉』を聴いていただいて。初めて陰陽座の音楽に触れる方も、今までずっと応援してきてくれた方も、すべての皆様に楽しんでいただければ幸せでございます。

取材・文●清水素子

『龍凰珠玉』
2013/12/04発売
KICS-1990~1 ¥3,048+税
●初回仕様:特製スリーヴケース/ピクチャーディスク仕様/特製ポートレート(5枚組)封入
Disc-『龍』
1.吹けよ風、轟けよ雷(新曲)
2.紺碧の双刃
3.組曲「鬼子母神」~徨
4.蒼き独眼
5.がしゃ髑髏
6.組曲「九尾」~玉藻前
7.組曲「鬼子母神」~鬼拵ノ唄
8.紅き群闇
9.相剋
10.生きもの狂い(新曲)
11.鎮魂の歌
12.序曲
13.魔王
14.骸
15.喰らいあう
Disc-『凰』
1.甲賀忍法帖(龍凰Remix)
2.組曲「義経」~悪忌判官
3.黒衣の天女
4.組曲「鬼子母神」~鬼子母人
5.ひょうすべ
6.組曲「鬼子母神」~月光
7.紅葉
8.道成寺蛇ノ獄
9.組曲「鬼子母神」~鬼哭
10.慟哭
11.焔之鳥
12.鳳翼天翔
13.悪路王
14.にょろにょろ
15.生きることとみつけたり

<冬の三都に馳せ侍う也>
12月18日(水)名古屋 CLUB DIAMOND HALL
[問]サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
12月20日(金)大阪 なんばHatch
[問]大阪ウドー音楽事務所 06-6341-4506
12月29日(日)東京 TOKYO DOME CITY HALL
[問]ディスクガレージ 050-5533-0888

<TOWER RECORDS SHIBUYA RENEWAL 1st Anniversary『冬のタワレコに馳せ侍ふ也』>
2013年12月10日(月)19:00
タワーレコード渋谷店 B1F「CUTUP STUDIO」

<陰陽座×TSUTAYA presents『初春の蔦屋に馳せ侍ふ也』>
2014年2月6日(木)渋谷O-WEST

◆インタビュー(2)へ戻る
◆インタビュー(1)へ戻る

◆陰陽座 オフィシャルサイト
この記事をポスト

この記事の関連情報