【ライブレポート】KANA-BOON、<僕がステージに立ったら>ファイナルで幾度も重ねた「ありがとう」

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KANA-BOONがフルアルバム『DOPPEL』リリースに伴って東阪ワンマンライブ<僕がステージに立ったら>を開催した。そのファイナルとなった11月15日の大阪公演の詳細レポートをお届けしよう。

◆KANA-BOON 拡大画像

フロアのあちこちから「おかえり」の声がかかると、ボーカル&ギターの谷口鮪が笑顔で「ただいま」と応える。会場は心斎橋BIGCAT、まさに大阪ならではのやりとりだった。KANA-BOONは堺市出身のバンド、つまりこれは地元公演であって、フロアには熱烈歓迎の空気が充満していたというわけである。しかしそのファンのモードは、前売りチケットが瞬殺でソールドアウトしていたことを思えば、公演のずいぶんと前から発生していたということになる。

いや、いまのKANA-BOONに対する熱烈歓迎モードは、地元大阪のファンが抱いているだけのものではない。9月のメジャー・デビュー後、初となるワンマンはこのBIGCATの前にもう1公演、東京の渋谷クアトロで行われていて、こちらの前売りチケットもあっという間のソールドアウト。地元だから盛り上がるというレベルのバンドではないのである、いまのKANA-BOONは。

BIGCATのステージから谷口は幾度も「ありがとう」といった。チケットが売り切れたことに対するお礼で、フロアがファンで埋め尽くされたことをメンバーは全員、いたく喜んでいた。しかし、第三者の冷静な視点でいえば、ソールドアウトは想定内だった。たとえば1ヵ月前の10月13日、KANA-BOONは同じBIGCATのステージに立ち、満員のフロアを目撃している。大阪ミナミ一帯のライブハウスで、3日間にわたり400組ものアーティストがアクトを繰り広げるビッグ・イベント<MINAMI WHEEL 2013>での出来事で、ワンマンとイベントではライブの趣旨が違うので同じ満員といっても単純比較はできないけれど、KANA-BOONを観たいという受け手の心理は同じものである。

さらに今年の8月4日、茨城県のひたちなかで行われたビッグ・フェス<ROCK IN JAPAN FES. 2013>。KANA-BOONはWING TENTという、マックス3000人のステージを入場規制状態にしてしまった。しかも、野外のステージで壁がないことから、漏れてくる音だけでも楽しみたいというオーディエンスが続々と集まり、おそらく、見た目では(あくまでも見た目、である)WING TENT内外あわせて、そこには5000人はいたのではないだろうか。当然、その異常なまでの熱烈歓迎ぶりをKANA-BOONは体感していて、加えて、自分たちがネクストブレイクの最右翼と評されていることはメンバーの耳にも届いていると思う。だからおそらく、この11月のクアトロとBIGCATのワンマンがソールドアウトになることはバンド側にとっても想定内だったのではないか。どちらの会場もキャパは850人なのである。

しかしKANA-BOONは冷静である。ポジティブな状況に取り囲まれた現在、そしてこの人たちが新人であることを思えば、気合いが空回りしたとしても、たとえ調子に乗ったとしても、それでいいじゃないかと思うのである。しかもここは大阪、地元公演。カッコつけて、カッコイイところを見せたくなるのが若いバンドというものである。ところがKANA-BOONは冷静であるからして、一音一音をていねいに奏でた。谷口は一語一語をはっきりと発した。「クローン」にしても「盛者必衰の理、お断り」にしても「ないものねだり」にしても、このバンドには性急なビートで展開していくノリ抜群のロックンロール・ナンバー、ダンス・ナンバーが多い。メロディもキャッチーなので、CDを持っていない人にとってもじつに親しみやすい音楽ということで、フェスやイベントの動員力が破格である理由のひとつはそれ。しかしKANA-BOONは絶対にノリ一辺倒の演奏をしない。なぜか。自分たちのやっていることをしっかりと伝えたいからである。

KANA-BOONはコミュニケーションの重要性を歌うバンドで、それは、大切な“きみ”とどう接するべきなのかという自分たちに対する問いかけでもある。コミュニケーションが重要なんだよ、などと受け手にただ押し付ける横柄な歌など1曲もない。バンドに横柄さはもちろん、油断もないからである。自分たちの置かれた立場を冷静に受け止めているからこそ、やさしくてあったかい歌、ていねいな演奏をアウトプットすることができるというわけで、そのスタンスがこれでもかというくらい伝わってきたのがBIGCAT公演だった。ただそこで谷口は「笑われてもいいけど」と前置きをして、「大阪城ホールでやりますから」と豪語した。地元のキャパ10000人のアリーナ会場でワンマンを成功させたいという野望ははたして、現実のものとなるのだろうか。それはだれにもわからない。だからKANA-BOONはていねいに歌い、ていねいに演奏する。自分たちを観に来てくれた人たちに対し「ありがとう」という。ロック・バンドはこれを繰り返していくしかないのだ。そして、ネクストのプロジェクトは5月からの、初の全国ツアー。ファイナルは6月21日(土)、地元大阪のなんば Hatch。このライブハウスのキャパは1500人。KANA-BOONは焦らず、一段ずつ、階段を上っていく。

取材・文◎島田諭
撮影◎田浦ボン

■<KANA-BOON 東阪ワンマンライブ「僕がステージに立ったら」>
2013年11月15日@心斎橋 BIGCATセットリスト
1.1.2. step to you
2.ワールド
3.ストラテジー
4.クローン
5.MUSiC
6.東京
7.白夜
8.ウォーリーヒーロー
9.見たくないもの
10.目と目と目と目
11.かけぬけて
12.羽虫と自販機
13.ハッピーエンド
14.夜をこえて
15.盛者必衰の理、お断り
16.ないものねだり
17.眠れぬ森の君のため
E1.さくらのうた
E2.A.oh!!

■<KANA-BOONワンマンツアー開催決定!>2014.05.17 (sat) 東京 新木場 STUDIO COAST
2014.05.18 (sun) 北海道 札幌 PENNY LANE 24
2014.05.30 (fri) 石川 金沢 AZ
2014.06.01 (sun) 新潟 新潟 GOLDEN PIGS RED
2014.06.07 (sat) 宮城 仙台 MACANA
2014.06.12 (thu) 愛知 名古屋 DIAMOND HALL
2014.06.14 (sat) 福岡 福岡 DRUM Be-1
2014.06.15 (sun) 広島 広島 CLUB QUATTRO
2014.06.21 (sat) 大阪 なんば Hatch
チケット情報等、後日発表!

◆KANA-BOON レーベルサイト
◆KANA-BOON オフィシャルサイト
◆「BARKS×ARTIST DELI SHOPPING」
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