【インタビュー】AKIHIDE(BREAKERZ)、ソロ第二弾『 Lapis Lazuli 』完成「今回ほどアコースティックギターという楽器と深く向き合ったことはない」
■自分の努力で音色やニュアンスを変えられる
■最終的に思うのはギターは本当に面白い楽器だなと
──一方で、「Home」ではジャジーかつメロウなプレイも披露していますね。
AKIHIDE:『Lapis Lazuli』の中で唯一、アルバムということを踏まえずに作った曲です。他の曲は全部書き下ろしなんですけど、「Home」は僕のホームページでずっと流れてる曲なんですよ。たぶん7年くらい前に作った曲だと思います。今回のアルバムについてスタッフさんと会話する中で、“ホームページの曲を気に入ってくれている人も多いよね”という話が出て。ただ、1分もないくらいのトラックをループさせたものだったので、新たにいろいろな要素を加えて今のカタチに仕上げました。
──ジャジーなパートは?
AKIHIDE:自分のホームページ自体、いつも変わらずにそこにあって、訪れてくれた人にとって家みたいなものでありたいなと思ったんです。それに伴って作った曲だったから、家に帰った時の夕食の団らんの感じとか、みんなで談笑している感じとかを出したくて。ハネたリズムやジャズの要素を入れることで、そういうことを表現できるんじゃないかなと思ったんです。
──アイデアを思いつくのは簡単でも、それをカタチにするのは難しい場合が多いと思います。アコギでジャジーなプレイをするのは大変じゃなかったですか?
AKIHIDE:難しかったです。ジャズは聴くだけで、ちゃんと弾いたことがなかったし。でも、今回はギタリストとしての勉強もしながら作品を作っていきたいという想いもあったので。だから、ジャズの音の構成とかを調べるところから入って、理論をある程度理解したうえで弾きました。“それっぽく”で終わらせるのは嫌だったし、この曲に限らず『Lapis Lazuli』を聴いていただいた方に心地いいと感じてもらわないと意味がないので。もうやれることは全部やろうという意識で取り組みました。
──さすがです。曲調の多彩さに加えて、アレンジの豊富さもポイントだと思うのですが、まずは生ストリングスを多用していることが印象的です。
AKIHIDE:僕が普段よく聴くインストゥルメンタルのアルバムが、坂本龍一さんの『1996』なんです。この作品は、坂本龍一さんが作られたいろいろな曲をチェロとバイオリンとピアノの3人編成でやり切ったもので。自分もいつかそういう作品を作りたいとずっと思っていたんです。今回のアルバムを作るにあたって、自分はピアノが弾けないから、チェロとバイオリンとアコギはどうだろうと考えて。あとは、そこにドラムとベースが加わったりすることを想像したら、すごくカッコいい音楽がイメージできたんですよ。結果、バイオリンとチェロをよりフィーチャーしたカタチを採ることにして、それらのパートも基本的に自分で考えてから、弾いてもらいました。
──打ち込みなどではない本物のチェロやバイオリンの豊かな音、深みのある質感に耳を惹かれました。
AKIHIDE:生楽器が持ってる“良さ”にこだわりたかったんです。音源をリリースするにあたっては、CDにしたり、配信したり、いろんな方法があるけど、そこにはどうしてもフィルターが掛かってしまうじゃないですか。根本の楽器を生にすることで、音楽の色気や深みといったものを最大限残せると思ったので。よく耳を澄まして聴いていただくと、僕の息づかいやミュージシャンの息づかいまで入っているんですよね(笑)、今回のアルバムには。ギターのちょっと粗いところとかもそのまま活かしているし。そういう空気感が『Lapis Lazuli』みたいに生活の一部になって欲しい作品だったり、そもそもインストゥルメンタルだったりには、すごく馴染むんじゃないかなと思って。
──たしかにナチュラルなサウンドに仕上がっていますね。
AKIHIDE:虫の音とか波の音が入っている曲もあるんですけど、最初はサンプリング音を使っていたんですね。でも、そうじゃないなと思って。わざわざ富士山のほうまでレコーダーを持って行って、延々と虫の声を探しました(笑)。でもね、虫の声が聴こえる場所が見つかったとしても、簡単には録れないんですよ。ちょっとした車の音とか風の音とかが入ってしまうと、もう使えないから。それでも諦めずに録って、虫の声を入れたりしました。
──生の音にこだわったのは大正解だったと思います。チェロやバイオリン以外でもドラムとベースが入っている曲があったり、ベースレスでドラムだけだったりと、楽曲によって形態を細かく変えていることも印象的です。
AKIHIDE:無理に入れなくていいかなと思ったんですよね。絶対にドラムがないといけないとか、リズムがないといけないといった思考ではなくて。あくまでもギターがあって、より情景を深めることのできる楽器は何かなと考えて、必要なものを入れるというカタチを採りました。だから形態が幅広いのもバリエーションを増やすことを狙ったわけではなくて、自然な結果なんです。
──さすがです。アコースティック・ギターのレコーディングはいかがでしたか?
AKIHIDE:正直、今回ほどアコースティック・ギターという楽器と向き合ったことはなかったですね。深さと、楽しさと、難しさというものを改めて感じました。エレキギターはエフェクターとかを使って音を変える方法がいろいろあるけど、アコースティック・ギターは基本的にそういうことができなくて。でも、爪で弾いたりとか、指で弾いたりとか、叩いたりとか。弾き方をはじめとする自分の努力で音色やニュアンスを変えられるというのは、ギターならではのものなんじゃないかなと強く感じました。レコーディングでは、得意としてきたプレイもあれば新たに挑戦したものもあるけど、最終的に思うのはギターは本当に面白い楽器だなということです。そういう風に楽しんでいることが作品を通じて伝わるといいなと思いますね。
──では、プレイ面でAKIHIDEさん自身が特に印象の強い曲をあげるとしたら?
AKIHIDE:いわゆるソロギターの奏法は結構盛り込んでいて。たとえば「Lapis Lazuli」と「Lost」では、ギターでスラップをしているんですね。スラップは一般的にベースの奏法ですけど、ギターだとまた違ったニュアンスを出すことができるんです。前からやっていたんですけど、ギターをパーカッション的に叩くのと同じで、これまでなかなか披露する場がなくてね(笑)。今回ようやくフィーチャーすることができました。あと、「Tomorrow」ではタッピングもしています。ただ、爪が伸びているアコギ・ギタリストには、タッピングはキツいんですよ、爪があたってカツカツ鳴ってしまうから(笑)。そういうロックな遊び心も入れたかったので、1ヵ所くらいならいいかなと思って入れることにしました。
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