【インタビュー】AKIHIDE(BREAKERZ)、ソロ第二弾『 Lapis Lazuli 』完成「今回ほどアコースティックギターという楽器と深く向き合ったことはない」
2013年6月の1stアルバム『Amber』リリースを機に、ソロアーティストとしての活動もスタートしたBREAKERZのギタリストAKIHIDEより、前作からわずか5ヵ月という短いスパンでソロアルバム第二弾『Lapis Lazuli』が届けられる。全曲の作詞作曲をはじめヴォーカルも手がけた前作とは異なり、『Lapis Lazuli』はギタリストとしてのすべてを注ぎ込んだアコースティック・インストゥルメンタル・アルバムに仕上がった。AKIHIDE曰く「『Amber』と『Lapis Lazuli』は対になる作品」だという意欲作について、曲作り、レコーディング、サウンド&プレイなどあらゆる角度から語ってもらった。ギタリストとしての挑戦も本質も込められているという意味では自身と向かい合った作品ではあるが、同時に、この作品は強くリスナーを意識して作られたものでもある。
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■僕がリスナーとして聴く音楽は歌ものではない
■生活の中にあるリズムとして聴くにはインストが心地よい
──アルバム『Lapis Lazuli』は、アコースティック・ギターを核にしたインストゥルメンタル・アルバムですね。
AKIHIDE:最終的にそうなりました。『Lapis Lazuli』に至るまでの流れを改めて話すと、まずはソロ活動をしようという話が2012年に出たんですね。そこで、自分が作りたい作品というものを改めて考えたときに、“今まで作り溜めてきた楽曲を自分で歌う”という構想と、“ギターのインストゥルメンタルをやりたい”という想いが同時に出てきたんです。でも、そのふたつをひとつの世界にまとめるのは難しい部分があると思っていて。
──そこでまず、自身が作詞作曲はもちろん、ヴォーカルもギターも手掛けたアルバム『Amber』を発表したわけですね。
AKIHIDE:そうです。自分の音楽の歴史を刻んだアルバムを作るべきだと思って『Amber』の制作に入りました。ただ、その頃から僕がリスナーとして聴く音楽は、歌ものではない作品が増えてきていたんです。歌があると、どうしても歌に耳がいってしまうし、生活の中にあるリズムとして聴くには、インストが心地いいなと感じることが多くなっていて。そういうところで、自分もインストゥルメンタル・アルバムを作りたいという想いが一層強くなっていたし。『Amber』が完成したことで背中を押された感覚もあったので、次作はインストにしようと決めました。
──その時点でアコースティック・ギターというテーマもあったのでしょうか?
AKIHIDE:いいえ、エレキギターということも考えていました。実は『Amber』を最初にレコーディングした時点で、すでに『Lapis Lazuli』収録曲の「Lapis Lazuli」と「Sayonara」はレコーディングしていたんですよ。その時にエレキギターを使ったインストも何曲か録ったんです。アルバムの方向性に関しては、ギリギリまで悩みましたね。アコースティック・アルバムを作りたいという話をスタッフさんにした後も、やっぱりエレキギターを半分くらい入れようかなと考えたりもしましたし。
──それがアコースティックになったのは?
AKIHIDE:しっかりとした方向性が見えたのは2013年6月の<1st Live Tour 2013 “Amber”>が終わって、1ヵ月後くらいのことでした。いわゆるソロギタリストって沢山いるじゃないですか。1人でギターを使って表現することがアマチュアの方の間でもすごく増えてきているし、自分もそういうことが好きなんですね。最終的にアコースティック・ギターに特化することを決めたきっかけは、ソロギタリストができることをバンドみたいなサウンドと合わせたら面白いだろうなと考えたときに、パッと開けた感じがあって。そこから一気に残りの曲ができたんです。
──紆余曲折があったんですね。アコースティックという形態を採りつつ曲調が多彩なことも『Lapis Lazuli』の特徴になっています。
AKIHIDE:アコースティック・ギターを使ってはいるけど、アコースティック・ギターという言葉からイメージする“優しさ”や“癒し”といったものだけにはしたくないという想いがあったんです。僕はやっぱりロック・ギタリストで、アコースティック・ギターというもので自分なりに新しいことに挑戦するのがロックだと思っていたので。そういうスタンスは、表題曲の「Lapis Lazuli」だったり「Lost」や「Battle」といった曲を聴くと分かってもらえると思います。
──感じました。特にパワフルかつ乾いた味わいの「Battle」は、アルバムの中で異彩を放つ1曲です。
AKIHIDE:今回のドラムは僕が好きなmouse on the keysというバンドの川崎昭さんにお願いしているんですね。「Battle」はスタジオで川崎さんと向き合って一発録りしたんです。だから、ドラムの音がギターのマイクに被っていたりして、すごく生々しいトラックになりました。ギターもギターらしいことをしてなくて。ボディをパーカッシヴに叩いたりしているし(笑)。そういうところでもすごく印象の強い1曲で、『Lapis Lazuli』にこういうテイストを入れられたことに満足しています。
──『Lapis Lazuli』に収録されたパーカッシヴなサウンドは、もしかすると全部アコースティック・ギターのボディを叩いて出したものでしょうか?
AKIHIDE:そうです。「Battle」の他にも「Sayonara」や「Home」がそうですね。ラウル・ミドンという、1人で和音とリズムを出して歌われるアメリカのアーティストがいまして、最初は見よう見まねでやっていたのが、だんだん僕なりのやり方になって身につきました。そういうことを10年くらい前からやっていたんですけど、BREAKERZやサポートギターとかでは披露する場がなかなかなくて。今回は打ってつけでした。『Lapis Lazuli』には、パーカッショニストは入れてなくて、シェイカーとかも含めて全部自分が手がけています。
──ギターを叩く奏法はぜひライブで見たいです。話を楽曲に戻しますが、ラテン/サンバ・テイストを活かした「Sayonara」や、沖縄をモチーフにしたうえでブルージーなボトルネックを挿入した「Okinawa」なども要チェックです。
AKIHIDE:「Sayonara」は、アコースティック・ギターとロックの融合ということを考えたときに自然と湧いてきた曲で、ラテンとかを意識したわけではないんですね。僕は元々キューバ音楽とかも好きで、そういった音楽はアコースティックのものが多いじゃないですか。それが反映されたんだと思います。あと、この曲はソロをやろうと決めた最初の頃に作ったものなんです。僕はずっと歌ものをやってきているので、制作初期に作った曲は歌もの的なアレンジが活かされているんですね。「Sayonara」や「Lapis Lazuli」は、その流れを汲んだキャッチーさがありますね。
──「Okinawa」はタイトル通り、沖縄を彷彿とさせるサウンドです。
AKIHIDE:僕の母が沖縄出身なんです。祖母は戦争をはじめとした惨状を目の当たりにしたり、痛みを経験してきていながらも、それを感じさせない優しい笑顔をいつも見せてくれていて。そういうことを表現する優しい曲を作りたいという想いが元になって取り組んだのが「Okinawa」です。制作にあたっては沖縄のメロディーとかを自分なりに勉強して、ラインを作りました。そうしたら三線の音が欲しくなったんですね。スライド・ギターのパートは戦争などの痛みを表現していて、それをくぐり抜けて静かな波の前に祖母が佇んでいるという曲構成のイメージになっています。そういう意味では、「Okinawa」はこういう曲を作ろうと思ってできた曲と言えますね。
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