【インタビュー】Loe、ドラム&ヴォーカル率いる異色3ピースが1st EPリリース「ノンストップです。止まってるように見せたくないから」

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■歌詞がついてない状態でもメッセージ性を感じる──安井
■3つのピース、12曲で1セット、作品としては別々だけど続いてる──山口

──今回、1st EP『放つ音』が10月23日にリリースされるわけですが。曲によってメロディアスだったりラウドだったりするけど、今日のライヴのMCでも「音楽で世の中を変えていきたい」と言ってらした通り、単にエンタテインメントとして楽しんでもらって“ああ楽しかったね”で終わるんじゃなくて、その先に手を伸ばしてほしい、もっと深いものを訴えかけたい、っていう想いが、曲からも音からも滲んでますよね。

山口:なんかこう、パワーにしてもらって、次の日から何かいいことやってもらえたらなと思って。ゴミ拾ってもいいし、何でもいいんで。俺らも有名になって、人に発信できるようになったら、ビーチクリーンとか企画してもいいなと思ってて。僕、サーフィンやるんですけど、海が汚かったらイヤなんですよね。みんなでそういうことをやってもいいし。

安井:歌詞がついてない状態で聴いても、メッセージ性というか、何かを感じるんですよね、やっぱり。

大浦:このプロジェクトに参加した自分も、ピアニストとして高みに行けるなっていう気がしてるし。僕はクラシック畑の人間だったんですけど、今まさにロックの世界に一歩踏み入れたところなんで。まだまだこれからなんですけど。

山口:それにしては、いいアプローチしてくれるんですよ。ピアノソロも弾いてくれてて。ギターソロも好きなんですけど、僕はピアノソロのほうが好きなんですよ。僕の注文の仕方もすごい抽象的なんです、「数学的なフレーズ入れて」とかそういう感じで頼むんです(笑)。一回でバッチリなフレーズを仕上げてくれたので。

大浦:でも、“数学的な”っていう言い方が、僕にとってはわかりやすかったんですよね。ちょうど僕も、Loeに合うピアノっていうのを考えた時に、一個アイデアとしてあったのが“無機質”だったんですよ。“無機質”と“数学的”ってすごくマッチしてると思ったんで、行ける!と感じました。もちろんエモさもほしいんですけど、和音の重ね方にしても、何て言うか……浮わついてないというか。シンプルなんだけど、カーン!みたいな。放つ音!っていう(笑)。

──“数学的な”っていうリクエストに、“シンプルだけど、カーン!”。感覚に感覚で返すわけですね(笑)。

山口:いい関係です(笑)。ギターに関しても……弾いてもらったものに対して、“なんか違う”とか“なんか重い”とか、そういうことしか言えないんですけど。いちばん厳しく言ったのが、“弦っぽくないよ”って。“手元感がない”とか。音が綺麗すぎるのはイヤなんですよね。「掌のアンドロイド」のイントロには、ミュートの音が入ってるんです。本当は入れないところだったんですけど、“それも活かしてほしい”っていうのは言いましたね。人間っぽさとか、そういうところは求めますね。テクニックは別に僕、要らないんですね、あんまり。

──“テクニックは要らない”っていうのは、もともとテクニカルなレベルが高いから言えるんだと思いますけど?

山口:まだまだですけどね。それはほんまに思います。ライブのペース配分からしてもそうですし(笑)。やっぱり、お客さんがノってくれると、こっちもノってしまって、1曲目からどんどん飛ばしてしまうので。どんどんライブを重ねていって、お客さんのリアクションが熱くなった時が怖いですね。3曲目ぐらいでバターン!みたいな。失神!っていうのも最高のパフォーマンスかなぁとも思うので。最後の曲は、いつもそういうつもりでやってるんですよ。終わった後にしばらく動けないぐらいのパフォーマンスはしたいなと思ってるんですけど。

──今日のステージも、演奏は5曲でしたけど、もう全力投球でしたしね。

山口:そうなんですよ。でも、これからもうちょっと長いセットでライブの展開を組み立てていく時は……ギターも好きなんで、途中でギター&ヴォーカルをやろうとか、いろいろ考えてるんですね。ギターとドラムでは全然違うんですよ、体力の使い方が。「アー」って声を伸ばしてても、キックを踏んだら声は揺れるじゃないですか。ライブではドラムを叩きながらヘッドセットマイクで歌ってるんですけど、マイクがドラムの音をすごく拾ってて。モニターは全部ドラムを切ってもらってる状態でも、やっぱりドラムの音って大きいんですよね。やりにくいのはやりにくいんですけど、やるだけの価値はあるんじゃないかなと思いますね。

──確かに、ドラム&ヴォーカルのスタイルが山口さんの音楽的アイデンティティになってるのはよくわかりますね。

山口:はい。絶対にドラムを捨てることはしないと思うんです。でも、何でもやったほうが面白いかなとは思うので。インキュバスみたいにジャンベとかも叩きたいと思ってるし(笑)。すごい好きなんですよ、インキュバスのブランドン・ボイドが。あの人、ディジュリドゥとかも吹くじゃないですか。僕も吹けるんですよ。だから、何でもやったら、何でもできるなって思われそうだなって。もう、やってみたいことだらけなんですよ。

──1曲目の「放つ音」みたいな、ピアノ・ロック・バンドとしてのベーシックを提示するような曲がある一方で、リード曲にもなっている2曲目の「掌のアンドロイド」みたいな、エッジのきいたラウドロック・ナンバーもありますよね。

山口:そうなんですよ。ドロップDのチューニングでギター弾いてたら、いいリフができてしまったんで、ぜひこれはモノにしたい!と思ってたんですけど。どうしても歌詞が日本語では乗らなくて……僕が音楽的によく相談してる井上太郎っていうマンドリン弾きがいるんですけど、彼に話したら「俺に歌詞書かしてよ」って言ってくれたので。「曲を聴いて、思ったように書いてくれれば全然いいよ」っていう感じで渡したら、ものすごくいい内容の英語の歌詞を書いてくれたんですけど、これ訳すのが大変で。“Futuristic architect(未来から来る建築家)”とか(笑)。それも全部調べて、訳をつけて……すごい世界観なんですよ。神様目線なんですよ。

──“みんなただのレプリカントなんだから”ってすごい歌詞ですね。

山口:そうですね、映画『ブレードランナー』みたいな。みんなレプリカント、人造人間っていう。で、この「掌」っていうのが、原発を意味してるんですよ。そこがすごく気に入ってて。これだけみんなボロカス言ってるけど、やっぱり生かされてるよ、っていう。ただ“NO NUKES”って言うんじゃなくて、しっかり考えた上で、メッセージを掲げるなら掲げるという内容になってるんですよね。

──この「放つ音」が10月に発売されて、その後12月、2月にもEPの3作連続リリースが決まってるんですよね。

山口:ノンストップです。止まってるように見せたくないんですよ。みんな、忘れていくのが早いですよね? 半年に1枚出してるようじゃ、なんとなく止まってるように見られちゃうと思うので。ライブしてることを知らない人もたくさんいるし。本当はこの「放つ音」も、最初9曲入りで出そうって考えてたんですけど。今回も、その次の音源ももうできてるんですけど、捨て曲が1曲もない形で出せるのはいいなと思いますね。9曲の時は結構、箸休め的な曲も入れてたりしたので。それがなくなることで、“全部いいわ、このバンド!”って言ってもらえると思っています。で、3つのピースで、12曲で1セットっていう。作品としては別々だけど、続いてるよっていう感じにはしたいですね。

取材・文◎高橋智樹


1st PIECE「放つ音」
2013.10.23 Release
DCR-001 ¥1500(tax in)
1.放つ音
2.掌のアンドロイド
3.9月の風
4.BABY DON'T CRY
※フルアルバムを3PIECEに分けて制作するというスタイルで完成。今後リリース予定の2枚のEPと合わせて、1つの作品となる3部作の1st PIECEである。3PIECEにすることでより個々の曲に対する熱が込められ、それぞれに違うカラー、それぞれに伝えたいメッセージが鮮やかに表現されている。

◆Loe オフィシャルサイト

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