【インタビュー】HYDE from VAMPS、『SEX BLOOD ROCK N’ROLL』と世界を語る「証がほしいんじゃないですかね。HYDEがここまできたっていう」
■そんなに都合よく世界が日本のバンドを聴いてくれると思ってないんです
■できる限りのことをやって、より完璧を期したかった
──歌もそうですけど、全曲ミックスをやり直したり、演奏も一部録り直したというのは、今のVAMPSの音として統一感を出したかったからですか。
HYDE:より最善を尽くしたかったってことですね。今までのも全然悪いミックスじゃないんですけど、今ならもっとできることがあるんじゃないかっていうのと、単純に歌を全部歌い直しているんで、ハマリのいいところにもっていきたいっていう。錯覚かもしれないけど、歌だけ録り直しだと、曲から歌が浮いてしまう感じがして。ミックスもやり直さないと気持ち悪いということになりました。
──最初から歌は全部録り直したかったんですか?
HYDE:はい。より完璧を極めたかったんで。日本語を英語に直したっていうのもあるけど、もともと英語で歌ってた曲もさらに悪いところを直したかったんですよね。
──「LOVE ADDICT」とかすごく変わりましたよね。
HYDE:そうなんですよ。言葉を発するタイミングが違ってて、こっちのほうがネイティブが気持ちいいみたい。「REDRUM」は歌詞も書き換えてますしね。
──それはなぜでしょう。
HYDE:僕が今、歌うならもっと「REDRUM」はわかりやすいほうがいいと思って。最初に書いたときは、もっと精神状態が混乱してるイメージで言葉を選んでたんだけど、今の僕が表現するならもう少しわかりやすいほうがいいなって。混乱は残しつつ、もう少し話の流れがわかるものにしました。
──それもメジャー感とかキャッチーさを考慮して?
HYDE:いや、それはもう、僕のアーティストとしてのやりたいことですね。そっちのほうがグッとくると思ったんで。
──ミックスはL.A.で行なわれたんですよね。それはエンジニアのジョッシュ・ウィルバーさんがいらっしゃるから?
HYDE:スケジュール的には結構タイトだったんだけど、せめてミックスは向こうでやりたいなっていうのは僕が言いました。気に入ったスタジオでやるほうがジョッシュも気持ちいいだろうし。
──じゃあ歌は日本で全部レコーディングされたんですか。
HYDE:基本は。日本でネイティブの方にディレクションしてもらいながら歌って、それをL.A.に持っていって、さらにジョッシュにダメ出ししてもらったんです。日本で歌ったときはいかに自分の思いどおりに歌えるかが主題でしたけど、ジョッシュが“ここはおかしい”っていうところはかなり厳密に直して歌ったんで、僕の中ではかなり限界でした(笑)。これ以上、英語を突き詰めるのは現時点で僕には無理でしょうね。
──そこまで念入りに。あと今回、日本語詞の曲はすべて英語詞に書き換えたということですが、一方で、日本語をそのまま海外に輸出することもできたとも思うんですよ。
HYDE:僕ね、そんなに都合よく世界が日本のバンドを聴いてくれると思ってないんです。もちろん歌詞の一部が日本語っていうのもなくはないんですけど、今回は、やりようがなかったんですよね。日本語を面白い感じで入れることができなかったんで、全部英語にしたんです。
──日本語が効果的に面白く伝わるのであれば、それでも良かったのだけれども、と?
HYDE:そうそう。ただ普通に日本語を並べただけでは、そこまで受け入れられるとは思えない。だって日本語で出して、英語にしておけばよかったって思う可能性ってないですか? 例えば売れなかったときに。できる限りのことをやって、それでダメならしょうがないなって思えるじゃないですか。そこはより完璧を期したかったので。
──英語になると歌いやすさとかも変わりますか。こっちのほうがハマるな、とか。
HYDE:ああ、「ANGEL TRIP」はすごいですね、スピード感が出て。でも日本語は日本語でいいので、どっちがいいとは言えないですけど。「MEMORIES」は歌詞が入ってきたほうがグッとくる気がするんで、日本のファンで感動したい人は日本語のほうがいいって思うかもしれない。
──「SWEET DREAMS」は?
HYDE:これは歌い方もちょっと変わっていて。サビ前とか裏声を使わないで歌っているんです。今の僕がやるなら、そっちのほうがグッとくると思ったんで。
──グッとくる、というのは。
HYDE:起伏じゃないですか? もともとの日本語のほうは無理なくゆったりと最後までいく感じだと思うんですよ。サビの音程が低いんで、あれ以上ハードにはできないんですよね。でもサビの手前をガッと盛り上げることによってサビでの優しさがより伝わるというか。自分なりの楽曲へのアプローチの仕方が最新だということですね。
──ちなみにL.A.にはどれくらい行ってらしたんでしょう。
HYDE:2週間くらいかな?
──ZEPPツアー<VAMPS LIVE 2013>が始まる直前でしたよね。
HYDE:そうなんですよ。本当ならライヴのリハをやる時期なんですけど、もしもL.A.から帰ってきっちりリハをやろうとすると、レコーディングを先に仕上げないといけないので、余裕が無くなってしまうし、詰めてリハをすると、体に無理があるなと思ったので、だったら先にリハをやってしまって、忘れた楽曲を思い出してから、レコーディングをL.Aで思いっきりやろうっていう。で、L.A.から帰ってもう1回、ちょっと修正してからツアーに出ようっていうね。そのスケジュールは帰国してから短期間でガーっとギター弾いて“はい、本番”になってしまうけど、数週間前にリハを軽くやっておけばギターの弾きすぎにもならないし歌いすぎにもならないし……って、歌は結局ずっと歌ってましたけどね(笑)。正直言って僕、今までこんなに歌ったことないです。その前にシングル「AHEAD/REPLAY」のレコーディングもあったし、L.A.でも結局ずっと歌ってましたからね。
──ほぼ2ヵ月間、歌い続けていた、と。
HYDE:こんなに歌ったことないです。歌いまくったら歌いまくったで途中で声がかれてしまったりとか、こんなに大変な思いをしたのはホント初めてかもしれない。しかも基本が英語だから、自分のマインドで歌うにしても英語としてちゃんと成立しているかどうかを常に意識してないといけないし、アレンジのこととかもずっと考えていたし。たぶん、これまでのスキルがなかったら、できなかったですね。自分に対して“歌はある程度できるから”っていう前提がなかったら、とてもじゃないけど歌いきれなかった。
──HYDEさんをもってしても、そう言わしめるって相当ですよね。
HYDE:「AHEAD/REPLAY」の作業と並行してジョッシュが日本に来てたんで、最初に日本で歌録りをやってたときも、チェックしてもらってたんですけど、ジョッシュがまたかなり細かいんですよ。発音を気にするあまり、歌に魂がなくなってしまって。なので「AHEAD/REPLAY」が終わってジョッシュがアメリカに帰ってからは、魂を中心に考えて歌うようにして。で、向こうに行ってから、どうしてもジョッシュがアカン!っていうところを直したっていう。
──英語で歌いながらも魂を込めるというのは、かなり難しそうな……。
HYDE:キツかったね(笑)。ホント心が折れそうなくらい。自分のヴォーカリスト人生のなかでも相当キツかったですね。ジョッシュとの作業が過酷になるのはわかってたから、覚悟してL.A.に臨みましたけど。でも、行ってみたら案外スムーズで。
──ともあれ苦労した甲斐はあったでしょう。
HYDE:うん。それに全曲、歌い直したとは言ってますけど、どうしてもオリジナルのほうがカッコよければ、そこは元にもどしてますしね。だから本当に自分の中では完璧なんですよ。いいとこ取りです。
──5年間、歌い続けて熟成されたものがいちばんいい形で収められたアルバムということにもなりますね。
HYDE:そうだね。そういう意味では、すごく1stらしいアルバムですよね。これを超えるのは難しいと思うんですよ。
──1stアルバムってそういうものですか。
HYDE:普通、アマチュア・バンドがそれまでずっとライヴとかで演奏してた楽曲から選りすぐって入れるのが1stアルバムじゃないですか。まさにそのズルいバージョン(笑)。そういう意味では1stにしてベスト、かもしれないですね。前も1stアルバム作りましたけど、今回も1stアルバムだから、もっともズルいですよね(笑)。これ以上の1stアルバムは作れない。
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