【ライヴレポート】INORAN、バースディライヴ@渋谷公会堂で2014年3月アルバムリリースを宣言
本当にカッコいい年の重ね方をしているアーティストだ。
◆INORAN~拡大画像~
あらためて、そう思わせてくれたのが全国ツアー<INORAN TOUR 2013-MAKE YOU BANG!!!->のまっただ中の9月29日(日)に渋谷公会堂で行なわれたバースディライヴ。昨年は一夜限りのスペシャルライヴだったが、今回はツアーの中の東京公演であり、特別な意味も持つステージだ。
開演予定の17時30分を過ぎた頃、INORANのロゴが掲げられ、キャンドルが灯るステージが暗転。無数の電飾がライトアップされると声援と指笛が響きわたり、いよいよ秒読み。手拍子の中、ドラムのRyo Yamagata、ベースのu:zo、ギターのYukio Murata、マニュピレーターのdーkikuが定位置につき、黒のロングジャケットに黒のパンツ、赤のネクタイでシックにキメたINORANが最後に登場すると大歓声。一発目は本ツアーのオープニングを飾ってきた会場限定シングル「Something about you」だ。間奏のRyoのドラムをキッカケにアクセルを踏みこむように加速し、熱を帯びていく演奏はど迫力! 白のジャズマスターに持ち替えたINORANが次にかましたのは小気味いいパンクチューン「One Big Blue」。上手、下手へと動きまわりながら煽り、場内の温度を上げていくこの曲では、暴れまわってエフェクティブなソロを鳴らすMurataが興奮のあまり、足をとられて転倒する(一瞬だったが)ハプニングまで飛び出した。続けて、本能直撃のアッパーチューン「Hide and Seek」。
「東京! 元気だったかい? 戻ってきました! 名古屋、岡山、福岡と廻ってきて、どの場所もめっちゃ熱かったよ。今日は人数が多いはずです!」と“盛り上がれるよね?”と言わんばかりの笑顔。そして、「今日は悪魔が生まれた日です」とジョークを飛ばし、“1、2、3!”のカウントを叫び、重低音の効いたビートが最高にカッコいい「No Name」へとなだれこむ。ギターを低くかまえて、客席を指差し、挑発するパフォーマンス、パワーと深みを増したヴォーカル、音と音の隙間を縫って鳴らされる色気とエッジのあるギターのフレーズ。どれをとっても、1年前のINORANとは芯の太さが違う。そして、彼をサポートするミュージシャンたちが誰ひとり陰に隠れず、自己のプレイを爆発させているのが素晴らしい。INORANのシャープなカッティングのイントロに場内のテンションがアガる「Super Tramp」から全員の楽器の絡み合いが絶妙な「no options」へと。ぐいぐい、ひきこまれていく。
「毎年、この日はここ(渋谷公会堂)でやらせてもらってるんですけど、1年ってアッという間ですね。メンバーやスタッフとつい“この間だったのに、もう!?”って。それだけ充実した日々を送っていることにしましょう」と照れながら、「今日、初めて生で僕を見た人いますか?」と問いかけ、手を挙げた人たちのほうを見て、「ありがとう! こんなヤツだけど、よろしくお願いします」と自己紹介し、「去年も、この場所に来た人いますか?」とたくさんの手が挙がった客席を見て笑顔。
「じゃあ、最近、あんまりやってないんですけど、次の曲をやりたいと思います」
曲名を告げて演奏された「千年花」にはイントロから歓喜の声があがった。リクエストライヴで1位を獲得したことがある曲が2013年ヴァージョンと言ってもいいラウドな音で鳴らされる。“千年も前の世代と同じ願いを歌うよ いつまでもこの景色が途絶えることのないように”とメッセージするこの曲に込められた想いは永遠だ。
u:zoのベースとd-kikuの音像がフィーチャリングされ、心地よさと緊張感が同化する「Nine closets」、超グルーヴィーな演奏に揺らされた「Parallel Reality」。エネルギッシュなロックンロールを鳴らすとともに、奥行きのあるディープでセンシティブな世界観で魅了する。
アコースティックギターを弾き、叙情的でトリップ感のあるインストゥルメンタル「HOME」から、INORANの誕生日を祝福するように会場にライターの火が揺れた「Joshua」へと移行する中盤の流れも1つのハイライト。INORANのホームに招かれたような温かくオーガニックな空気が会場を満たし、みんなの歌声が響きわたった。
ここでINORANがいったんステージを去り、本ツアー恒例のカヴァータイム。MC役(?)のu:zoが「いつも俺がここでしゃべるので、たまにはMurataさんに」と振ると、Murataはステージで転んだ後にさりげなくINORANが「だいじょうぶですか?」と声をかけてくれたという、ちょっといいエピソードを披露。そこに戻ってきたINORANは、今回のツアーで、みんなにパワーをもらっているという話をした上で、Murataのバンド、my way my loveとu:zoとRyoが結成したバンド、Sonz of Freedomの曲を演奏することに──。
どっちの曲を最初にやるかは、いつも、じゃんけんやあっち向いてホイなどでステージで決めているらしいが、今回は客席からのリクエストに応えて、“あっち向いてホイ”が採用されることに。「それ、Murataさん苦手なんですよ」とフォローするu:zoだが、「やりましょう! 僕の“あっち向いてホイ”を見ても笑わないでください」と受けてたつMurata。しかし、3回勝負の結果は、応酬が1度も続くことなく、みごと惨敗。みんなに爆笑されていたが、コーラス以外はINORANがギターに徹するカバーコーナーは実に新鮮で「両方のバンドともカッコよくて、この曲たちを絶対、やりたいって俺が思って」と言っていたのも印象的だった。
「3時間ぐらいで作っちゃった曲」と話した新曲「Black Velvet」(限定シングルC/W)から、ステージに派手にスモークがたかれた「smoke」で加速していき、ライヴは早くも後半戦。
「暴れていこうか!?」と煽ったINORANは、その言葉どおり、「Nasty」でギターを降ろし、ハンドマイクでステージのはじからはじまで動きまわって歌い、オーディエンスの興奮度はさらに上昇。予測不可能なINORANのパフォーマンスにスタッフが慌てて、マイクのコードを伸ばしている光景がまた臨場感を増幅させる。そのまま、「Rightaway」へとなだれこみ、ステージを走り、“何を掴みたくて 何を逃げてるんだい”と歌いながら、ついには客席に降りてしまい、一瞬、客席はパニック状態。
この熱量と大胆さこそが今のINORANである。そこが椅子のあるホールであろうと、至近距離のライブハウスであろうと、自らのエネルギーの全てを放出して、恥ずかしがったり、ためらったりしてる人たちもふくめて、楽しませて、解放させてしまう。ガラガラになった声で、「もっと行こうぜ!! 次の曲がラストソング!!」と叫び、「Get Laid」では、「1人1人が大声出しましょう。クシャッて顔するんだぜ!!」と、コール&レスポンス。渋谷公会堂に響きわたるみんなの声のデカさはINORANの想いが伝わっていることを物語っていた。
帰ろうとしているメンバーを紹介し、「最高の時間です!! ホントにみんな、今日はありがとう」と感謝の言葉を述べて、「来年の3月に新しいアルバムを出したいと思います!」と宣言したINORANは大声で「言っちゃったぁ!知らねーぞ」と悪戯小僧のような笑顔。鳴りやまないコールの中、「じゃあ1曲プレゼントしちゃおうか」とアコギを弾きながら、ファンとの繋がりを強く感じさせるナンバー「I’ll be there」を歌い始めた。途中からバンドのメンバーも演奏に加わり、最高のハッピーエンディング。
5人が肩を組んで、挨拶をしてステージを去ったあとは、みんながバースディソングを大合唱。客電がつき、退出のアナウンスが流れても、その歌は大きくなるばかり。
贈りかえされた心からのプレゼントにINORAN1人が再びステージに登場し、大歓声。
「自分で言うのも何だけど、もう1回歌って」と嬉しそうにその歌に聴き入り、「どうもありがとう!! 最高の誕生日です!」と熱い夜を締めくくった。
ツアーファイナルは梅田CLUB QUATTRO 2デイズ。季節は移り変わっていくが、INORANは終わらない夏を駆け抜けていく。
取材・文●山本弘子
撮影●Keiko Tanabe
<INORAN TOUR 2013 -MAKE YOU BANG!!! ->
10/6(日)札幌CubeGarden
10/10(木)金沢AZ
10/12(土)梅田CLUB QUATTRO
10/13(日)梅田CLUB QUATTRO
[問]Backstage Project 03-5786-2400
◆INORAN オフィシャルサイト
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