【インタビュー】eliは渋谷系をどう見ていたのか。本当は何をやりたかったのか?
■線を引いて特別な世界にした方がいい
──音楽業界は全部そうね。音楽好きな人は、好きなものに対して金とか求めるなよみたいなとこが。
eli:そういうとこあるでしょ、昔から。昔みたいに、お前ら面白いからお金出してやるって言うそんな人ももういないし、大手の人が面白がってストリートに繰り出すってことももうないし。そしたら地産地消じゃないけど、その中だけで巡ればいいじゃんって。例えば、それが(チケットが)何枚ってなってて、その何枚に対してちょっと(CDを)売れればいいよねって。そうするとお得意様向けにやるでしょ。グローバリズムって逆じゃん。お得意様を捨ててくんだよね。で、グローラバイズの真逆ってのが、次の経済の考え方だとわたしは思ってる。だってデカくなりすぎたからおかしくなったんでしょ。だからもうあるところで巡るぐらいにすれば、子供とかが買うじゃん。で、孫が買うじゃん、みたいな。ごはん屋とかそうじゃん。(帰省したときに)あそこのカレー食べると帰った~って感じするんだよね、とか。あそこのラーメン食べると、とか。
──音楽はごはんになぞらえるのはいいですよね。
eli:あたしもいいと思う。料理してても思うしね、音楽みたいだって。だから、私の世代もそうだし次の世代もそうだと思うけど、テレビ偉いとか、大手がいいんだとか、もうそんなの随分前に崩壊したんだから、それに気付いてこの小さく巡ることをやったらどう?みたいな。で、それって共にみんながやってくれないと。一人じゃ絶対回んないから。地産地消ってそうじゃない。それで農業やって、ごはん食べて、全部帰っていくわけだから。そうすれば安全な食べ物が食べれるし、あと顔が見えるし、っていう。で、みんなが求めてるものがそれになり始めたわけじゃん。もうなんだか分からないものを買うのが怖いから、何々さんの農家で作りましたみたいなお野菜を売ってたりするでしょ。もうそういうのが欲しいって言ってる人がいるんだから、そろそろそれになっても。いいよ、マスはマスで。大っきいグローバライズするものは、世界中にマクドナルドがあるわけだからさ。あたしもそこまで文句言うつもりもないからさ。だから、それとほかに考えたらどうですかって。だってそこからどうでもいい人に知ってもらおうってつもりまったくないじゃん。音楽知らないんでしょ?って。だって、分かんないならどうしようもないよ。ほかの音楽聴かないんだから。洋楽ですら聴かないんだから。英語だとカラオケで歌えないから聴かないってハッキリ言っちゃうんだから。そういうふうに思っちゃう人たちばっかりだったら、そこなんかどうでもいいよねって。ってその時は思ったし、今でもちょっと思ってるところある。そこまでやる必要あるの?って。売れないのに。
──それでも入ってこれる間口は空けておいたほうがいいんじゃないですか? 勝手に入ってきたい人はどうぞって。
eli:そうは思ってるよ。だけど、ある線を引いて特別な世界にした方がいいってのがあって。昔、クラブ行くのにがんばんなかった? ダサいやつは絶対入れないから。中には芸能人もいるし、有名人もいるし、すっごい人たちがいるじゃん。その人たちと対等でいられるには、こっちはそれなりじゃないといけないみたいな。特別感がそこにはあるんだよ。その特別感ってのは、けっこう重要かも。渋谷行ったら渋谷印のまんじゅう買うみたいに、それで渋谷系買ったようなもんだと思うんだよね。だって行かないとなかったからさ。わざわざそこ行ってやっと買えたっていう。
──ローカルのシーンを作るってのは面白いですよね。
eli:あたしは渋谷のローカルを作ったわけですから。ZESTってのはうちのクルーエルもハンマーレーベルもあって、あそこでシーンが生まれていたようなもんだったんで。バアフアウトが隣にあったわけだからね、ウチの机の。そうやってシーンが作られてったんだから。
──今はどうですか?
eli:今はどうだろうなぁ? わざわざそこまでいく特別感はいろんなとこにそういうのあると思うんだけど、音楽でもあったら面白いかな。ブルー・ハーブなんてそうじゃん。わざわざ北海道に見に行くもんね。ブルー・ハーブは売れたからってこっちに来ないもんね。ガチ北海道だし。そういうのがあっちこっちに増えたら、相当面白いと思う。東京が真ん中じゃなくなるもん。