【インタビュー】eliは渋谷系をどう見ていたのか。本当は何をやりたかったのか?
■演奏とか技術にお金を払うっていう発想がなかったら技術者や職人さんは残らない
──話がズレちゃったので戻しましょう。じゃあ、最近の音楽活動について教えてください。
eli:今度ね、ヴィヴィッド・サウンドでモスランズってバンドで、マーティン・デニーみたいなエスニック・サウンドの企画もの。あたし日本語と英語とインドネシア語(笑)を駆使して。
──インドネシア語できるんですか?
eli:ちょっとできる。すごい面白いんだよ。
──それは誰と一緒にやってるんですか?
eli:ファッシネーションズのヴァイブの人とはせはじむさんのプロデュースでやってるんだけど、売れることを考えてない(笑) ちょっとこんな、映画音楽っぽい…(と聞かせてくれる)まぁ、南国の、白人が考えた南国の音楽みたいな。
──エキゾな。
eli:エキゾな!で、これは10月くらいかな。
──なんでこれを夏に合わせて出さないかな(笑)
eli:はせはじむさんが売れ過ぎちゃって、あちこちやってるとなかなかできなかったっていうのもあって、これもこないだ録音して。まぁでもいいの、売れること考えてないんだから。だってね、顔が見えるもん、買う人の。この感じでこんどやるのと、ほら、あたしのインドネシア語。
──インドネシアにいたの?
eli:インドネシアにはいないよ。フィリピンにいたんだよ。
──何語喋れるんですか?
eli:喋れないよ。英語がちょっと喋れるだけで、インドネシア語はマレーシアの友達に。ピロートークまでは知らないから(笑)。これが10月に出て、ファッシネーションズでも今度やるのかな? いつ出るのかは知らない。そこに渡辺雅美くんっていう子がいて、その子が作った曲を1曲と、もう1曲は聖子ちゃんの「SWEET MEMORIES」をジャズ・バージョンで。やってって言われたから。ダメ人間天才型っているじゃない。どうしようもない、だけど天才型っていうのが渡辺くんなんだけど、ラヴ・タンバリンズ結成する頃から知ってるんだけど、20年ぶりぐらいに会って、で、突然曲作ることになってるみたいな。その子も面白い、あたしより上だけどね。お父さんの代からヴィブラフォン、ジャズの一家で。でもやっぱり頭おかしいもんね。ぜんぜん日常生活普通におくれなそうな感じだもん。久しぶりに見る、そういう人。けっこうまともじゃん、今のミュージシャンって。
──どうやって生きてるか分からない人。
eli:そう。夏なのにおまえその格好どうなんだ?とか、そういうとこからしてヘンっていう。絶対に職質されるなっていう。素でそうなっちゃう天才型ってたまにいるんだけど、今生きづらいね、そういう人たち。
──eliさんもけっこうそういうタイプなんじゃないですか。
eli:そうです。
──職質されてそう(笑)
eli:職質はされてない(笑)うちのパーカッショニストは、よくされるけど。ああいうガラガラガラガラっての(註:楽器を積んだキャリヤーのこと)持ってるから。楽器演奏者はしょうがないよ。そんな感じですよ。けっこう面白いことはやってますよ。
──自分の作品は?
eli:来年ぐらいかなぁ。交渉中ですね。
──曲を作ったりはしてる?
eli:そうです。でも(ゲスト)参加してて、曲提供とか、こないだのジャズ・コレクティヴもそうだし、そういうふうにしてることの方が多いのかな。なんか体力いるじゃん。アルバム作ると。それをする気力がもうずっと長い間なくて。
──あんまり音源にして残したいっていう気持ちがない?
eli:作りたいと思うけど、そんなに音楽を普段聴く人でもないので、そんなに重要?みたいになっちゃって。っていうとこはちょっと長い間あるかな。普段聴かないの。聴かないよね。
──まぁ、作る人は聴く人じゃないからね。
eli:そうそうそう。だから、人がまとめてくれないと何も発するつもりがないっていうか。需要があるからやるんですっていうところがあって。もともとの性格がそうでしょ。CD出すつもりなかったわけだから、もう自分の中で完結しちゃうことが多い。で、みんなが何か手伝ってくれたりして、ウチでライヴやってくださいとか話になるので、じゃあ、っていう。自分の中から発してることがあんまりない。
──でも、音源は音源で作ってって人が多いですよね。
eli:う~ん。予算とか考えるのイヤになっちゃうし、頭痛くなるから。誰かが代わりにやってくれるならいいけど、わたしが考えるのかって思うと、もう心が。お金の計算をしたくないの。もうそこで心が折れてる。ポキン!って。で、もうヤダって。
──じゃあ、ライヴの方が活動の中心ですか。
eli:そうだね。今はみんなそうだよ。
──いまアコースティックで、パーカッションとギター、または鍵盤で、そういう編成が多いじゃないですか。そういう編成のほうがやりやすいからなんですか?
eli:ま、あたしはね。
──フルバンドはやりたくない?
eli:だってフルバンドのところって、お金半分もってくのが嫌いなの。
──全部そういう理由ですか!
eli:そうそうそう。ギャラ払いなよっていう。なんでミュージシャンから持ってくことばっか考えて、っていっつも思ってて。演奏とか技術にお金を払うっていう発想がなかったら技術者や職人さんは残らないのに、なのに残らないことに対して寂しいとか言うんだよね。けっこう勝手だなって。ライヴハウスもけっこうそういうこと言うじゃないですか。はぁ?って。あたしそういうのも嫌いなの。嫌いだとやっぱり線引いちゃって、来んなってなっちゃうんで、ダメなの。