【インタビュー】山崎まさよし、アルバム『FLOWERS』リリース「このアルバムを花のように使ってもらえたら嬉しい」

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■気持ちをそのまま出したタイトルはあまりなかったですね
■考えたことや感じたことを変に避ける年齢でもないかなと

──歌詞については“花開く”まで、苦労もありました?

山崎:歌詞はいつもね、悩んでます。悩まんとアカンところだと思いますね。

──「Flowers」からは“さぁ行こうぜ!”という勢いよりも、人生に対する深い感慨のような思いが伝わります。

山崎:ウエディングソングや、友だちに贈る曲のようなイメージで作りました。そうするとイメージが広がっていって、花が人の生活の中でいろいろ使われる局面を歌おうと考えました。タイトルにも合ってくるし、考えてみると花のある場面ってけっこう多いんですよね。冠婚葬祭にはついて回るし、「おめでとう」という意味で贈ることもあれば、人を送り出すとき=別れの場面で手渡すこともあるし、供養に使うこともある。これって、歌と似ているなと思って。それこそ、何かの閉会式とかね。

──確かに、イベントなどの閉会式には、歌もあれば花もありますね。

山崎:そういうイメージが、アルバム全体と合致しました。それに、花には希望の象徴という側面もある。こういう風に、気持ちをそのまま出したタイトルは、いままでにあまりなかったですね。考えたことや感じたことを、変に避ける年齢でもないかなと。

──5~10年というスパンでの年齢的な変化ですか?

山崎:いや、最近ですよ。震災が起きてからの3年間です。震災があって、いろいろなことが露呈して、自分が無知だったと知ったこと、守る家族が増えたこと、悲しい別れがあったこと、そういうことが大きいですね。 きっと……自分の気持ちに正直になってるだけだと思う。それこそ、カッコつけたり、着飾ってやっていくと疲れるんですよ。普段の自分が持っている目線で歌いたい、とは思っています。

──そうした気取りのない感覚がサウンドにも表れているように感じました。山崎さんの作品は張り詰めた緊張感も魅力のひとつですが、今度のアルバムは聴いていて心が軽くなりますね。

山崎:歌詞に何か含ませたり、聴き手に謎をかけるようなものはないし、わかりやすさはあると思います。考えてみれば、昔は“わかるかなぁ?”みたいな姿勢で作っていた曲もある気がする(笑)。“お前なんかの出題者か?”って話ですけどね。今回は、何も解かんでええし、考えんでええアルバムになっています。これ、花の使い方と同じですね。花を贈って“何の花かな?”“どんな意味かな?”なんて考えさせたくない。ただ、喜んでもらえればいいものだから。

──「#9 story」という英詞の曲も、アルバムの中で存在感があります。

山崎:これは憲法九条のことについて日本語で書いて、それを英訳してもらったものです。少年が物語の9ページ目を母親に書き換えられると、夢の中で銃を持っていた……という話です。きれいなメロディができたので、最初はクリスマスソングにしようと思っていたんですけど、歌詞を考えているころにレコーディングスタッフと九条の話をしていたら、急にむかっ腹が立ってきて。Simon & Garfunkelの曲に「7時のニュース/きよしこの夜」というのがあって、これが二人の美しいハーモニーに、現実的な戦争関連のニュースが関わってくるという構造で、聴いていて怖くなったのを覚えていたんです。その曲に誘発された部分はあると思います。

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