『春子の部屋』、こだわり抜いて手抜きなし

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NHK連続テレビ小説『あまちゃん』発で、脚本の宮藤官九郎が自ら監修・選曲したコンピレーションアルバム『春子の部屋―あまちゃん80'S HITS―』が8月28日にリリースされ、その選曲やこだわりの仕様が話題を呼んでいる。

◆ 『春子の部屋』画像

7月末、ソニーミュージック編とビクター編同時リリースの告知と収録楽曲が発表されると、そのこだわりの選曲は多くのバズを生み出した。松田聖子「風立ちぬ」、村下孝蔵「初恋」、ジュディ・オング「魅せられて」など、ドラマ内の登場曲を多く収録するソニー編には、スターボー、大沢逸美、水谷麻里らを選曲。一方薬師丸ひろ子「セーラー服と機関銃」、小泉今日子「まっ赤な女の子」と出演者の楽曲を擁するビクター編にも、セイントフォー、少女隊、藤井一子と、こだわりの“宮藤官九郎セレクト”が光る。

さらに今回は、その商品仕様の隅々にまで垣間見える80年代へのこだわりをご紹介しよう。

●ジャケット
ジャケットは有村架純演じる「若き日の春子」。お馴染みとなったヘアスタイル"聖子ちゃんカット"のソニー編&ビクター編の2パターンだ。左下に配されたロゴは、ソニー、ビクターともかつてのレコード時代に見覚えのある懐かしいロゴが前面に押し出されている。またブックレットの裏側は、それぞれのロゴがまるでかつてのEP盤内袋を思わすようなレイアウトになっている。1980年代にシングルを買っていたファンなら、思わずニヤリとするところ。太巻さんも駆け出しの頃の若き苦味を思い起こすことだろう。

●ブックレット
ブックレットの内部には、宮藤官九郎書き下ろしによるライナーノーツが全曲入っており、劇中に登場した楽曲についてはもちろん、他の選曲についても言及している。そのこだわりをみると、いかに『あまちゃん』の世界観が丁寧にこだわりながら構築されているのかが思い知らされる。なお、ブックレットのスペシャルポイントは、「天野家2F隠し部屋」…つまり「春子の部屋」の見取り図が掲載されているところだろうか。その細かな設定をみながらドラマのシーンに想いを馳せると、気分はすっかり1980年台なのである。

●ケース
1980年代の雰囲気にこだわった仕様では、バックカバーにカセットテープの写真を採用。今回リリース元となった、ソニーミュージック、ビクター双方の親会社であるソニー(株)、(株)JVCケンウッドが、各社のアーカイブからこの写真のためにカセットテープの実物を提供したというこだわりのワンショットだ。ジャケットのテイストにあわせた青いAHF60(SONY)、赤いDYNAREC60(Victor)は、エアチェックに夢中だったあの頃を思い出させるだろう。ちなみにソニーのAHFは、AHF、BHF、CHFという3グレードの中で最も上位のもの。でもその上にはDUADというクロムテープがあり、とっておきの録音に使っていたっけ。90分で当時1200円という超高級カセットだったなー。実は更にその上にメタルテープを使用したMETALLICなる最高級機種も登場、あまりに眩しくて手に取るだけで震えたものです。

なお、昨今ではCDを納めるトレイは絵柄を多く見せるため透明なものが主流となっているが、今作はあえてあまり使われない白トレイを採用。こちらも1980年代へのこだわりだ。

なお、制作担当によると、他にもまだ隠された仕掛けが仕込まれているようだ。印刷の裏を見るべくケースを外したりなんだりで、宝探しと謎解きのお遊びも、実際にアルバムを手にした人だけが楽しめる特権だ。

この見事に対になった、2つの「春子の部屋」。『あまちゃん』音楽担当の大友良英による新収録のインスト曲含め、たっぷりとご堪能いただきたい。
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