【ライブレポート】ザ・ローリング・ストーンズ、自然に溢れ出す笑顔やアイコンタクト
7月13日(土曜日)、ザ・ローリング・ストーンズがロンドン/ハイド・パークで2回目の公演を行なった。この先、世界各地でさらなるショウを開くとの噂もあるが、とりあえずのところ、2012年11月のロンドンO2アリーナ、12月のニューヨーク、ニュージャージー、そして5月3日にLAでスタートした全米ツアーに続き、地元ロンドンで<50 & COUNTING...>ツアーの最終日を迎えた。
◆ザ・ローリング・ストーンズ画像
1週間前に開かれた1回目の公演同様、この日もUKでは稀な真夏日(最高気温は年に何日もない30度)だった。太陽が輝く土曜日の公園+ビール、そしてミニ遊園地が付設された会場はまさにお祭りムード。なによりザ・ローリング・ストーンズの記念すべきパフォーマンスが観られるとあって、その高揚感は半端なく、早い時間から熱気と興奮、そしてハッピーなヴァイヴに包まれていた。
44年前、同公園で開いたフリー・ライヴに近づけようと、巨大なオークの木の模型が設置されたステージ。バンドが登場する5分前になると、「Let's Spend The Night Together」が流れ、“今夜一緒に夜を過ごす”オーディエンスの姿がビッグ・スクリーンに映し出された。6万5,000人のオーディエンスからの割れるような拍手喝采と大合唱で盛り上がったところ、ステージが暗転。ドラム隊によるトライバル・ビートが流れた後、「Start Me Up」の鋭いイントロが鳴り響く。このギター・リフと共に大スクリーンにキース・リチャーズが映し出されると、それだけで感極まり涙ぐむファンの姿が続出する。
そして、無敵のフロントマン、ミック・ジャガーの登場。ボーカルもスマートな外見も全くと言っていいほど変わらず、ショウをリードしていく。あの独自の動きが出るたびに会場から大歓声が上がった。続く「It's Only Rock 'N' Roll (But I Like It)」では、キースが何度も笑顔を見せ、本当に気持ち良さそうにギターをプレイする姿が印象的だった。自由過ぎて脱線しそうになる彼をしっかり支えるチャーリー・ワッツとロニー・ウッド。この2週間で立て続けに行なわれたグラストンベリー・フェスティヴァルと1回目のハイド・パーク公演で“国宝”と評されたパフォーマンスが、幕を切った。
この夜は「Emotional Rescue」や「Ruby Tuesday」がプレイされ、また、ファンからのリクエストでは「Street Fighting Man」が選ばれた。
ハイライトを挙げたらきりがない。「It's Only Rock 'N' Roll」や「Honky Tonk Woman」「Miss You」「Jumpin' Jack Flash」など大合唱になった曲は数知れず。「Ruby Tuesday」は、長年のストーンズ・マニアによると「これまでで最もロマンチックでエモーショナルなパフォーマンスだった」というし、それまでカラフルだったスクリーンの映像が一転しモノクロに変わり、その世界に引き込まれていくような「Paint It Black」は演奏も演出も粋だった。そして、女性バック・ヴォーカリスト、リサ・フィッシャーとのパワフルなデュエット「Gimme Shelter」、渋く光ったキースのリード・ヴォーカルによる「You Got The Silver」、炎の映像と赤いライティング、スモークでステージが煌々と燃え上がっているように錯覚させた「Sympathy For The Devil」…、どの曲も聴き応えがあったが、中でも特筆すべきはミック・テイラーがジョインした「Midnight Rambler」だった。ミックのハーモニカとテイラーのギターの掛け合いは、まるで楽器で2人が会話を交わし、詞があるわけでもないのにその内容が理解できてしまうかのごとく情緒に溢れていた。同時に、ストーンズのブルージーなルーツを堪能させてくれる逸品だった。
メンバーの様子も始終リラックスしていて、自然に溢れ出す笑顔やアイコンタクトが多かったように感じた。4人全員がザ・ローリング・ストーンズというバンドでプレイすることを楽しんでいたように見えたのは、ファンの希望的観測というだけではなかったと思う。あれだけ大きな会場でありながらバンドと一体感を持つことができたのは、このためではないだろうか。
英国の“国宝”どころではない。当然のこと“世界宝”であり、ザ・ローリング・ストーンズが史上最強のロックンロール・バンドであることを再認識させるパフォーマンスだった。
この日もライヴ撮影を行ったオフィシャル・フォトグラファーの有賀幹夫は、下記のように2日間の歴史的な50周年ライヴを振り返ってくれた。
「13日のハイドパーク公演は事前予想を遥かに超え、僕が1989年以降観てきた中でもベスト3に入る素晴らしい内容でした。6日同様晴天という、野外コンサート日和な天候も今振り返ると、全てがストーンズに味方したようで必然だったと思います。6日の会場でこれまで見たことのない大掛かりなカメラ機材による映像収録を目の当たりにし作品化を確信したので、慎重を期す為、13日に関してもセットリストに前回からの変更はほとんどないのでは?と予想していたのですが、そんなことはありませんでした。5月のUSツアーで初披露となった「エモーショナル・レスキュー」、野外で特に栄える「ルビー・チューズディ」、ロンドンならではな「ストリート・ファイティングマン」等、コア・ファンからそうでない人までが楽しめる深く、そして幅広い最強セットリストでした。深く幅広いと言えば、いつになく男女共に幅広い年齢層が集まっていたのも印象的で、これは50周年プロジェクトにおいて、若い世代を取り込むことを視野に入れて制作されたであろう「クロスファイヤー・ハリケーン」の狙いが当たったのではないでしょうか? また僕が撮影した場所の近くにいた20代後半くらいの男性グループは、ポーランドから観に来たとのことで、世代や国境を超えたオーディエンスを集めるのも世界的規模なバンドならではでしょう。ここまでバンドのパフォーマンス以外のことを話してきましたが、各メンバー言葉にできないほど神々しかったです。これだけ長い活動歴を持ちながらさらにバンドを次のレベルに持っていこうとするメンバーの業のような気迫を感じたからです。最後に、大掛かりな映像カメラ設置の為だと思いますが、今回の写真撮影場所はステージからかなり遠く、とても厳しいものでした。これもいい経験だと捉えて臨みましたが、その分ハイド・パークの素晴らしい映像作品が完成されるのを楽しみに待ちたいところです。」
取材・文:Ako Suzuki
撮影:有賀幹夫
<50 & COUNTING...>7月13日@ロンドン・ハイド・パーク公演2日目
1.Start Me Up
2.It's Only Rock'N' Roll (But I Like It)
3.Tumbling Dice
4.Emotional Rescue
5.Street Fighting Man(ファンからのリクエスト)
6.Ruby Tuesday
7.Doom And Gloom
8.Paint It Black
9.Honky Tonk Women
10.You Got The Silver(キース・リチャーズ:リード・ヴォーカル)
11.Happy(キース・リチャーズ:リード・ヴォーカル)
12.Miss You
13.Midnight Rambler(with ミック・テイラー)
14.Gimme Shelter
15.Jumpin'Jack Flash
16.Sympathy For The Devil
17.Brown Sugar
アンコール
18・You Can't Always Get What You Want(with the Voce Choir and members of the London Youth Choir)
19・(I Can't Get No) Satisfaction(with ミック・テイラー)
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