【ライヴレポート】DQS、ドラム10台が競演した爆裂のライヴ@下北沢CLUB Que

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DQSのワンマンライヴ<10 Drummers vs EARTH ~アルバム発売記念!爆裂10台ドラム!~ at 東京>が7月4日、東京・下北沢CLUB Queで行われた。

◆DQS@下北沢CLUB Que~拡大画像~

5月15日発売の初音源『10 Drummers vs EARTH』を引っさげて、不可能とも思われていたドラム10台フルセットを持ち込んでのバンド初のツアー、京都MUSE公演(5月21日)を満員御礼の大成功に終わらせての凱旋公演。音源リリース後初の東京でのライヴとあって、ソールドアウトとなった会場は、ステージだけでなくフロアにもセッティングされた10台のドラムを目の前にして、開演を待つオーディエンスの期待感であふれていた。

「2001年 宇宙の旅」のテーマが流れるステージに、お揃いの赤いツナギをそれぞれ個性的に着こなした10人のドラマー達が登場。

溝渕ケンイチロウ(ザ・カスタネッツ / KGSS ON THE PEAKS)、ヤマグチユキヒコ-ハジ(ハックルベリーフィン)、高橋浩司(HARISS / The Everything Breaks)、小関哲郎(about tess / dario)、森信行(ex.くるり)、ハギー(ソレカラ)、おかもとなおこ(つばき / THE GIRL)、HAZE/ハゼ(UNUS / ex.PICK2HAND)、比田井修(ex.School Food Punishment)、北野愛子(your gold, my pink)。そして、野口徹平(ギター、Hi-5)、平田博信(ベース、Swinging Popsicle)、堀越和子(キーボード、GOMES THE HITMAN)がステージ後方を固める。

SEが止まり、高橋浩司のカウント代わりの気合いの入った雄叫びを合図に、ステージ中心に向かって円を描くように並んだドラムが、一斉に激しく打ち鳴らされる。爆音が爆風となって会場内を吹き抜けるような、凄まじいパワーでDQSのワンマンライヴが幕を開けた。

オープニングから、スピード感のある重低音ドラムの迫力と、ギター&ベースのソリッドなサウンドで観る者を圧倒する「Metalish」。ステージ中央でリーダー溝渕ケンイチロウが指揮者となって、右サイドと左サイド、ステージ上とフロアなど、別のパターンを叩くパートを交互に指さして、見事にリズムを切り替えてみせる「Parallel」。次々と展開していく変拍子の複雑なリズムも、カラフルでポップに聴かせてしまう「Next9」。7パターンそれぞれのドラム(&タンバリン)のリズムが次々に重なり合うことで、不思議な揺らぎを生み出す「back to the PLANET」。ドラム10台のDQSだからこそ魅せられる楽曲とパフォーマンスを、止まることなく次から次へと披露していく。

MCコーナーでは、リーダー溝渕ケンイチロウと、LookHearRecordレーベル所長でもある高橋浩司の二人が、マイクを持ってステージ中央に立つ。満員の客席を前にして、二人とも感動に目をうるうるとさせながら。

「DQSの音源をどうしても出したかった。これは“音楽家としての使命”だと思って。10人のドラマーのバンドが作品を作れるわけないって、本人達さえも思ってた。でも無理かどうかは自分達が決めること。『10 Drummers vs EARTH』を出すことができて、やってできないことはないと思った。そして無謀と言われていた、京都にドラム10台を運んでワンマンをやること。これもやってみたら大成功。そういったことを経ての、今日のソールドアウト!」と高橋がその嬉しさを語った。

結成当時ドラマー9人で始めたDQSだが、7人、4人と次第に減っていき、ライヴができない時期もあった。また、所詮は企画モノバンドだと思われる悔しさもあったという。それが音源のリリースができ、京都ワンマンを成功させて、ホームグラウンドのQueでレコ発ワンマンができるなんて、一年前には想像もできなかったことだと溝渕が補足した。

席替えタイムとなり、フロアでドラムを叩いていた北野愛子が初めてステージセンターのドラムへ。「Wall of light」で、パワフルなドラムながらも可憐な雰囲気に魅了された。ライヴ後半で鬼軍曹と化したリーダーの鼓舞するアクションにもドラムを叩きながら笑顔で返すおかもとなおことの、女性ドラマー紅二点の存在はDQSの大きな魅力だ。アルバム未収録の新曲を披露した後、2度目のMCコーナーでは、本日4曲目の「back to the PLANET」のリズムを一人ずつ分解して、どんな風にリズムが重なっているのかを検証するドラム講座。そして恒例となった“歌心のあるドラムとはなんぞや?”の解説では、歌心のあるドラマー役を森信行が、歌心のないドラマー役をハゼが担当。どちらのドラムも高橋がKANの「愛は勝つ」を熱唱して実証するが、後者はまるでヘヴィメタ調のカバーのようになり、会場は爆笑の渦となった。

ここでアルバム『10 Drummers vs EARTH』のリード曲「RESCUE」のフィーチャリング・ボーカル、近藤智洋(GHEEE / The Everything Breaks)がステージに迎えられた。赤のツナギを着ていない、ボーカリストが登場したことで、ステージの風景が一瞬にして変わった。近藤のマイクスタンドを使ったパフォーマンスや次第に絶叫へと変わっていく歌声に、突き刺さるようなドラムの爆音はさらにパワーアップ。ドラムとのバトル・セッションはもちろん、野口徹平&平田博信の激しく弾きながらの暴れっぷりも凄まじかった!会場中のテンションを上げた一曲入魂の3分半は、嵐のごとく瞬く間に過ぎ去った。

リーダー溝渕がステージ中央に出てきて、最後の曲紹介。「みなさん知ってますか?ドラマーってドMばっかりなんですよ。僕はマゾ界のサドって呼ばれてるんです。かきまわし(ドラムを思い切り打ち鳴らすこと)って物凄くしんどくて、30秒やったら相当息が上がるんです。そんな腕が上がらなくなる様をみなさまにお見せしましょう。ドラマーの限界をお見せします」と始まったラストソングは「The circle of the rhythms」。スピード感のある力強いリズムが延々とループし、その上に乗ったキーボードの音色が明るく勇ましい彩りを添えるパワフルな曲だ。リーダー溝渕による歌もあり、一人ずつドラムソロを披露するメンバー紹介なども挟みながら、ノンストップで15分もある楽曲。10台あってもサボれる楽器ではないし、すぐに鬼軍曹と化したリーダーが近寄ってきて「もっと叩け!」と言わんばかりのアクションで叱咤する。さらにエンディングのかきまわしは5分間にも及び、シンバルは割れ、折れたスティックの先が飛んだ。出し惜しみなく、限界まで挑むDQSのドラム魂に魅せられた夜だった。

2時間半近くに渡って繰り広げられたDQSのワンマンは、いつまでも鳴りやまぬ拍手と笑顔で幕を閉じた。最後に、10月17日の東京・下北沢CLUB Queでの次回ワンマンが発表された。「さらに精度を高めて、体力と根性を鍛えて、舞い戻ってきます!」とリーダー溝渕。DQSのまた更なる限界への挑戦を見逃すことはできない。

取材・文●下村祥子
撮影●Ayako Sofue

◆DQS officia blog
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