【インタビュー】AKIHIDE(BREAKERZ)、ソロアルバム『Amber』は自分色100%「今日までの音楽人生の集大成になった」
■BREAKERZで得たものに自信があるからこそソロでは全然違う方向へ振り切れた
■カバンにいろいろと詰め込めば詰め込むだけ人生もカラフルになる
──歌詞そのものが幾重の層を持っていて、サウンドと合わせて味わうと、いろいろな心情や場面を想像できますね。「星の狂想曲」はミュージックビデオが制作されましたが、その映像は3ピースの演奏シーンを核にしながら、モノクロームのこだわりの色彩が封じ込められています。映像に関してもご自身のイメージを形にされたのでしょうか?
AKIHIDE:ミュージックビデオは、自分からアイデアを出してディスカッションしながら膨らませました。たとえば、静かに歌ってる場面と激しいバンドシーンを入れることでコントラストを出したいという話をしたり。色彩的には、最初は白く静かな世界観から幕を開けるんですけど、楽曲が進むにつれ、後半は汚れるように灰を降らせてだんだん黒い世界に変わっていくという。そのなかで描かれている女性は、狂っていく感じを出したかった、“狂想曲”ですからね。多少エロティシズムも入ってるんですけど、微妙なバランスを取りつつ、そこにはいきすぎないように(笑)。
──BREAKERZのアートワークは、ブライトでヴィヴィッドな色彩イメージが強いと思うんですけど、今回は闇や黒という色をフィーチャーしたのはなぜですか?
AKIHIDE:モノクロームは、想像色と言われているんですね。白と黒の2色しかないから、見た人それぞれが自由に想像して好きな色に置き換えることができる。そこにリスナーの方々が参加することができると思って。ミュージックビデオやCDジャケットなど、今回のアートワークをモノクロームだらけにしてるのは、『Amber』というアルバムは僕だけで完成されるものではなく、聴いてくださったひとりひとりの方が最終的に作り上げるものだと思ってるんです。だから自由な色を塗ってほしいし、広がる世界を想像色で表現したかった。これはソロプロジェクトだからできた挑戦かもしれないですね。
──BREAKERZの世界観とは逆の世界観を表現したと言い換えることもできますか?
AKIHIDE:そこは強いかもしれないですね。やっぱりBREAKERZで5年半、みんなで切磋琢磨してきたし、そこで得たものに自信があるからこそ、ソロでは全然違う方向へ振り切れる勇気を持てたと思います。
──CDジャケットや、そこに描かれたイラストなどのアートワークもAKIHIDEさん自身が監修されたとか。
AKIHIDE:ミュージックビデオ同様、最初に自分からアイデアを投げて、それをデザインチームの方々と一緒に作ったんです。ブックレットページのアートワークは、最初はCG合成しようという話だったんですけど、PC上にデジタルで作るのではなく、実際に大きい板に貼ったりというアナログ的手法で立体感を出したらおもしろいんじゃないかと盛り上がって(笑)。なので、2メートルぐらいの長いキャンバスに、粘土を付けたりして奥行き感を出しているんです。これはデザインチームの方々はもちろん、すべてのスタッフさんに手伝ってもらったからできたものなんですね。その結果、人の温かみを感じられるものになったし、実際には色がついていたり、トータルワークとしての味わいを出すことができました。さらに歌詞を貼り付けたりしたので、すごく大変だったんですけど、その甲斐あって独特な世界観を作ることができたと思います。音を聴きながらブックレットの絵を見てもらうことで、リスナーの方々が楽曲から得る感触も変わると思いますし、そこからまた想像を膨らませたりというリンクが、より深まると思います。
──「Hello! Mr. Sadness」のオブジェには、ファンの方々からのメッセージ、ひとつひとつが乗っているんですよね。
AKIHIDE:ファンの方から希望の言葉をいただいて、それを自分たちなりに色をつけて花を描いたものです。それらをデザインすることで、世界でひとつだけのジャケットが共有できたらと思って始めたことなんですが、それ以上に、本当に1枚1枚の言霊というか、パワーが凄かったです。ひとりで始めたソロ活動だから、どこか孤独感もあったんですけど、このアートワークを見たとき、ファンの方ひとりひとりとの絆、手伝ってくれたスタッフさんとの絆、BREAKERZメンバーとの絆、絆とか繋がりがなければ実現し得ないアルバムになったなと、完成したときにグッとくるものがありましたね。この作品を作って本当に良かったと感動しました。
──「Hello! Mr. Sadness」はアルバムのラストに収録されたナンバーで、“Mr. Sadnessが輝く未来に向かっていく”という結末ですよね。このタイトルからして両極を感じさせるものであり、悲しみと希望といういう相反するものが描かれていますが?
AKIHIDE:悲しみは誰もが抱えてるものだし、ずっと付きまとうものですよね。ならば、悲しみを捨てるより一緒に生きるというか、そうしなければ前向きに生きられないのかなということを最近すごく感じるんです。この曲の最後には足音を入れているんですけど、それは自分が前へ歩いていくとき、悲しみが後ろから追いかけてくる、そして最後は共に歩んでいくというイメージで。悲しみを受け入れることで広がる未来をアルバムの最後に描きたかった。それをリスナーの方に伝えたかったし、共有したかったんです。
──モノクロームな世界観もカラフルな未来を描くポジティブなものになる、それは心持ち次第だという。
AKIHIDE:このアルバムに収録した楽曲たちの根底のテーマは全部一緒だと思ってるんです。人生はいろいろあるけれど、明るくするのも暗くするのも自分次第。このアルバムはそれを明るくするひとつのきっかけになれば、というメッセージを込めました。だから人生を旅にたとえた「涙の河」からアルバムがスタートして、ラストの「Hello! Mr. Sadness」では悲しみも受け入れていこうと。生まれてから、時間は自然と流れていくものだし、自分では選べない道もある。だけど、それをポジティブにとらえるかどうかは、その人次第だと思うんです。
──アルバムには歌詞はもちろん、アートワークにもミュージックビデオにも、そういった人生のテーマが息づいているんですね。
AKIHIDE:このアルバムは自分がいちリスナーとして、聴きたいものを作りたかったんです。だから、自分自身がそう言ってもらいたいし、そう思いたかった。カバンにいろいろと詰め込めば詰め込むだけ人生もカラフルになる。そういう風に一緒に生きていきたいねという。
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