【インタビュー】ジャンク フジヤマ「時空間も次元も関係なくいいものはいいという自分の想いを託した作品になっていると思います」
2012年のデビュー以来、3枚のシングルをリリースし、2013年3月にはフル・アルバムも完成させたジャンク フジヤマ。艶やかで力強い歌声と独自の世界観溢れる歌詞、そして洗練されたあたたかみのあるシティ・ポップス・サウンドでリスナーのハートをガッチリつかみ、日本ポップス界の重鎮たちをもうならせてきた。そしてメジャーデビューからほぼ1年となるこの6月には、CMとドラマのダブル・タイアップとなる両A面シングル「To The Sky/栞」がリリースされる。信念にしたがい、自らの熱い想いを託したというこの作品がどのようにして生まれてきたのか、ジャンク フジヤマに語ってもらった。
■受け取る側の想像力によってイメージが変わってくる
■玉虫色というか、そういうのが大事なんじゃないかな
――先日はSHIBUYA-AXでのライヴお疲れさまでした。とても熱のこもったライヴでしたね。
ジャンク フジヤマ(以下ジャンク):そうですね。お客さんも、1曲目から総立ちになってくれて。そのエネルギーにもう“ウワアァッ”となっちゃいました。こっちがエネルギーを発散する前に、お客さんのほうからガーッと来たものだから、それに応えなきゃいけないと。
――MCでも普段のライヴでは総立ちは珍しいと言ってましたが、1曲目からですもんね。
ジャンク:予想外でした。びっくりしましたね。この期待に応えなきゃという使命感に燃えて、1曲目から“行くぞーっ!”って感じになりました。
――今回リリースされる「To The Sky」はライヴ初披露でしたよね。
ジャンク:新曲って聴いてる方々はわからないですからね。どういう構成なのかとか、どんな歌詞なのかとか、耳を傾けながら聴いてますから、なかなかノリノリっていう雰囲気にはなりにくいんです。この曲も、東芝さんのスカイツリーのエレベーターのCMのタイアップ曲なんですが、まだ流れてなかったから、耳にした人は少ないはずなんです。でもとても盛り上がってくれて、終わった後のダァーッという拍手は本当に気持ち良かったですね。
――ライヴで初めて演るときって、やはり特別な感じですか?
ジャンク:歌う人間もそうですけど、それ以上に演奏陣に緊張感があるんじゃないでしょうか。僕はむしろ緊張感というより集中力を必要とされる感じですかね。どうしても聴いてる方々の反応を見ながらやることになるので、一瞬の迷いみたいなものが生じないように、楽曲を自分の世界の中で消化しながらやっていかないと、という気持ちを持っていましたね。
――この「To The Sky」は今回のバンドメンバーでもある坂本竜太さんの作曲ですね。曲を仕上げるまでに、どんなやりとりがあったんですか?
ジャンク:まず坂本さんにメロディをいただいて、そこに歌詞をつけていったんです。坂本さんから、これは重要なフレーズだよ、というのがあって。“Take me to the sky”とか。ここはぜひ使ってほしいと要請がありました。ただ、僕はできるだけ日本語で展開したかったんで、1番のサビについては日本語に差し替えたりしながら作りました
――日本語で展開したいというのは?
ジャンク:日本語でしっかりと物語を描きたいというのももちろんありました。ただ今回は、エレベーターのCMで使ってもらうことが決まっていたので、それに向けた楽曲に仕上げるというのが重要だと思っていたんです。それで、エレベーターを連想させるように日本語で“どこまでも運ぶ空の彼方”っていう日本語の歌詞を乗せて。でもタイアップに向けるだけではなくて、全体像としてはちゃんとCMのイメージだけではない世界観がある、そういう作り方をしたかったんです。
――CMで流れるのは30秒とか60秒くらいですから、そのイメージをきちんと伝えるのも重要ですよね。
ジャンク:CMでどこが流れるのかはわからないんですが、多くの場合はサビを使いますよね。そう考えた時に、より印象に残るフレーズをサビに持ってこようと。楽曲は同じでも全く違うCM用の歌詞を書くという方もいらっしゃるけど、僕はそういうことをしたくなかった。タイアップ感を出しつつ、なおかつ作品として意味を持ったものにするのが重要だと思ったんです。
――“どこまでも運ぶ空の彼方”っていうのはエレベーターのCMに寄せた歌詞だから、だったんですね。
ジャンク:そのイメージです。だからCMでその部分が流れれば、ああそういうことなんだな、と想像してもらえると思うんですが、全体を聴いてもらえばホントはそうじゃなくて、違うところにも焦点が当てられてるっていうのがわかると思います。受け取る側の想像力によってイメージが変わってくる、玉虫色というか、そういうのが大事なんじゃないかと思ってます。
――この歌詞にはCMのイメージだけではなくて、ジャンクさんご自身の想いも託されてるわけですね。
ジャンク:そうです。僕は「あの空の向こうがわへ」という楽曲でデビューして、それから色々シングルもアルバムも出した今、より一層求められているジャンク フジヤマの世界観というのを鮮明に出したいと思いました。それはおそらく“夏サウンド”なんですよね。ミュージシャンとしては、聴きたいと思われているものを作らないと、という思いもあるし、自分の作品感を出しながら求められるものを作る、それがプロの仕事だと思っているので。その意味では、この「To The Sky」はバッチリなんだと思うんです。サウンドは夏、突き抜ける感じになっていて、タイアップに寄せながらもちゃんと世界観のある歌詞になったし。“時間旅行”って言葉も使いましたけど、時空間も次元も関係なくいいものはいい、という自分の想いを託した作品になっていると思います。
――やはりジャンクさんといえば空とか宇宙とかいった雄大さ、そして爽やかな夏を思い出させるサウンド、というイメージが大きいですからね。
ジャンク:“夏サウンド”っていうのも、パーティ的なもの、“走り抜ける”とか“一緒に楽しもうぜ”っていうのはよくあるんですが、僕のはすごく個人の視点なんですね。30人でわいわい騒ぐとかじゃなくて、二人でクルマで飛ばしてるとかそういうレベル。そのほうがスピード感とかが出る気がするんです。
――歌詞で“あなた”が対象になっているところとか、言ってみればミニマムで等身大な感じもしますしね。
ジャンク:歌詞の“あなた”の部分で言うと、これ会議でモメたんですよ。“あなたに届く”じゃないですか?って。僕は、いや“と”だ、“あなたと”だ、と。一緒に手をつないでいくという雰囲気が欲しいと思って作ったところなので。
――“時間旅行”という言葉もありますね。音楽でも、ご自身のルーツミュージックも含め、いいものは時間を超えても残っていくという、ジャンクさんの想いも込められているような気がします。
ジャンク:そうですね。それはつねに持ち続けてる想いですし、僕にとって羅針盤のようなものです。それが僕の基軸というか、絶対にこれは曲げないという部分。
――ポップスやAORがルーツミュージックのひとつだということですが、やはりこの曲のサウンドもAORっぽい感じがします。
ジャンク:80年代にあったサウンドというか、16ビートでガチガチと決まっていく感じですね。でも実際歌ってるのは今の時代の人間だし、作ったのも今だし。スカイツリーは80年代にはないわけですからね(笑)。だから全く違うものができてると思います。あのバブリーな世界観はここにはない。今の、2000年代の16ビート・ポップスなんです。
――80年代のポップスを今の自分として消化した結果であると。
ジャンク:そうですね。まあ、要するにバブリーじゃないんです。バブルを経験してない人間が歌ってますから。サウンド面を作ってる竜太さんとかはあの時代を過ごしてきてますから、“オレはバブリーなんだよどうしても”とか言ってますし(笑)。あの時代のあこがれというか、湧き上がるエネルギー感みたいなのを忘れられないらしいですが、僕は知らないですから。
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