【ライヴレポート】豪華アーティストが唄う名曲の数々で心が揺さぶられた<SongLetters-Handing over the Hope->

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2002年~2004年、大阪でおこなわれた『SongLetters』シリーズが、WOWOWとFM802の共同主催で9年ぶりに東京と大阪で開催された。

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今回は、同じ時代を生きる多彩な女性ヴォーカリストたちが日本のミュージックシーンを支えるトップミュジーシャンとともに、自身のオリジナル楽曲はもちろん、意外な名曲カバーも交え、想いを重ねて次の世代へ伝えていこうという趣旨の元行われた。

5月24日。NHKホールに集まったのは、絢香、アンジェラ・アキ、大塚 愛、矢井田瞳、そして、この日、バックバンドのメンバーとして参加していた、バイオリンの岡部磨知と、同じくコーラスで参加していたHanah Spring。さらに、東京だけのスペシャル・ゲストとして、一青窈が出演したのだった。

トップバッターは矢井田瞳。オリジナル曲である「My Sweet Darlin’」で幕を開けた彼女は、白地に黒の大きな水玉のカジュアルなスタイルで、屈託の無い歌声を響かせた。彼女が選んだカバー曲はTHE BLUE HEARTSの「ラブレター」と、斉藤和義の「歌うたいのバラッド」。この日のために、“歌ってほしい曲はありますか?”と、リクエストを募ったところ、リクエストが多かったという「歌うたいのバラッド」は、彼女も大好きな曲なのだとか。バイオリンと、矢井田の奏でるアコギの音色が、矢井田の歌を優しく包み込んだ。そんな自然体な表現も、実に矢井田らしかったのだが、彼女は後半、この曲をプログレッシブなアレンジで盛り上げたのだ。少し気だるさを感じる歌い方に変化させた矢井田の歌声を受け、エレキギターがかき鳴らされたパワフルなサウンドは圧巻。この日のスペシャルバンドとしてバックサウンドを担った、河野圭(Key)/玉田豊夢(Dr)/安達貴史(B)/田中義人(G)/朝倉真司(Per) /杉浦琢雄(Key)と共に、自らもアコギをかき鳴らし、矢井田色の「歌うたいのバラッド」を届けてくれたのだった。

続いて登場したのは大塚 愛。矢井田の呼び込みにより登場した大塚は、ステージ下手で矢井田と両手を合わせると、柔らかな笑顔で1曲目の「One × Time」を歌った。「さくらんぼ」を歌っていた頃の可愛い印象とは違う、大人の女性の包容力を感じさせた彼女は、透明感のあるウィスパーな歌声でオーディエンスを包み込んだ。そして。彼女が歌詞と楽曲を作る上で大切にしている“自然に人の心を動かせる言葉”“言葉が作り出すグルーヴ”】という2か条を告げると、その2か条にピタリと当て嵌まるリスペクト曲だと、中島みゆきの「糸」と電気グルーヴの「Shangri-La」を紹介し、2曲続けて歌い上げた。ラストに、久々に届けられた自身のヒット曲「プラネタリウム」では、客席から大きな歓声が上がっていた。

大塚からバトンを受け取ったのはアンジェラ・アキ。ステージ中央に置かれたグランドピアノの前に静かに座ると、ピアノの音だけで「サクラ色」を届けた彼女。ときおり腰を浮かし、全身の魂を歌とピアノに捧げるように歌うアンジェラに、オーディエンスは言葉を無くし、ただただ引き込まれていった。「この『SongLetters』は、半分オリジナル曲、半分カバー曲ということなので、リスペクトして止まない2曲を選んで来ました。違う時代の曲なんですが、この曲たちを初めて聴いたとき、自分の体のリアクションが同じだったんです。放心状態といいますか、動けなくなっちゃったんです。シンガーソングライターとして、自分もこんな曲作りたい! 悔しい! と思った2曲です」(アンジェラ・アキ)。

憧れとリスペクトが詰まった2曲として紹介されたのは、五輪真弓の「恋人よ」とRIP SLYMEの「熱帯夜」。自らのピアノを中心とし、バンドメンバーと届けた渾身の「恋人よ」と、いろんな楽器の音色が操れるという、ループマシーンを使い、その場で録音してループさせたリフに合わせて届けた見事な歌とパフォーマンスに、オーディエンスは大きな拍手を贈った。

そして。ここで、バックバンドのメンバーとして出演していたバイオリンの岡部磨知が、学生時代に大好きだった曲として、スピッツの「チェリー」をバイオリンで演奏した後、“この日、プログラムには載っていない、ゲストを紹介します!”と一青窈を紹介。思いがけないスペシャル・ゲストの登場に、客席は大きく沸いた。

一青窈は、ステージ中央に、ペタンと座り込むと、大ヒット曲「もらい泣き」を披露。その独特な歌い姿は一瞬のうちにオーディエンスを魅了し、瞬間的にその場を彼女色に染めたのだった。そんな彼女が選んだカバー曲は、プリンセス・プリンセスの「M」と、岩崎宏美の「思秋期」。プリンセス・プリンセスは、昨年の復活ライヴにも足を運んだほどの大ファンで、髪を短くしたのも、奥居香(プリンセス・プリンセスのVo)に憧れてのことだと打ち明け、会場の笑いを誘った。一青窈らしさを感じさせなかった「M」はとても新鮮に響いた一方、阿久悠の作詞、三木たかしの作曲を、改めて素晴しいと感じさせた「思秋期」では、まるで彼女のオリジナル曲ではないかと錯覚させられたほど、素晴しく一青窈らしいステージを魅せてくれたのだった。

再びここで、この日のバックバンドメンバーのコーラスとして参加していたHanah Springが、Hanahの「愛されたくて 愛したいだけ」のカバーを届け、トリを務めた絢香に繋げたのだった。

オリジナル曲の「おかえり」からの歌い出しに、オーディエンスは大きな歓声を贈った。さらに。飾らぬナチュラルなスタイルと、大きく包み込むようなあたたかな絢香の歌声に、オーディエンスは立ち上がって手拍子を返した。絢香はMCで、とても楽しい楽屋であると、バックステージでのエピソードを話し、自分の出番も、プライベートでも大の仲良しだというアンジェラ・アキが楽屋まで知らせに来てくれ、おまけに、丁寧にステージ袖までアシストしてくれたと語り、客席の笑いを誘った。そんな和やかな空気にオーディエンスを導いた後、テレビ番組でも本人と一緒に歌ってもらった、大好きな曲であるという、小田和正の「たしかなこと」を歌い、今年2月にリリースした「beautiful」を届けて盛り上げると、ラストに久保田利伸の「LA LA LA LOVE SONG」を歌い届けたのだった。ドラマ『ロングバケーション』の主題歌として、ドラマと共に大ヒットしたこの曲は、誰もが口ずさめる曲とあって、会場は大合唱になったのだった。ラストにはピッタリの選曲と言えただろう。


フィナーレでは、絢香が、この日の出演者を全員ステージに呼び込んだ。

時が流れ、時代が移り変わろうとも、人の心を揺さぶる歌は、いつ聴き返しても、いつの時代も、また新鮮に心を大きく震えさせてくれるもの。

『SongLetters』。歌の手紙。人から人へ。
歌は、歌い継がれることで生き続ける──。

この先も、心を揺さぶる名曲たちが歌い継がれていってくれることを。この先も、歌い継がれていく名曲が生まれ続けていってくれることを、切に願いたい。

取材・文●武市尚子

<SongLetters-Handing over the Hope->
2013.5.24 NHKホール
セットリスト
矢井田瞳
01. My Sweet Darlin'
02. ラブレター(THE BLUE HEARTS)
03. 間違いだらけのダイアリー
04. 歌うたいのバラッド(斉藤和義)
大塚 愛
01. One×Time
02. 糸(中島みゆき)
03. Shangri-La(電気グルーヴ)
04. プラネタリウム
アンジェラ・アキ
01. サクラ色
02. 恋人よ(五輪真弓)
03. 熱帯夜(RIP SLYME)
04. 告白
岡部磨知
01. チェリー(スピッツ)
一青窈
01. もらい泣き
02. M(プリンセス プリンセス)
03. 思秋期(岩崎宏美)
04. ハナミズキ
Hanah Spring
01. 愛されたくて 愛したいだけ
絢香
01. おかえり
02. たしかなこと(小田和正)
03. beautiful
04. LA・LA・LA LOVE SONG(久保田利伸)

◆SongLetters-Handing over the Hope- オフィシャルサイト
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