【インタビュー】塩ノ谷 早耶香「私にとって歌とは“いろんな世界に連れてってくれるもの”」

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2013年1月23日にシングル「Dear Heaven」でデビューを果たした塩ノ谷 早耶香。独特の“ミスト・ヴォイス”は19歳とは思えない緻密な感情表現を可能にし、心という肌に霧のような優しさでジワリジワリと沁み込んでゆく。5月15日に到着する2ndシングルは、そんな彼女の武器を全開にした感動バラード「片恋」と、聴き手と対話する軽やかな「Smile again」の両A面。より幅広く、深く、物語へと誘う2曲と、47都道府県を回る“うた修行”で得た“歌への想い”について訊く。

■「片恋」は“辛い別れの中にも意味がある”というメッセージ
■幸せな時間を過ごせたからこそ今の辛さがあるんだと気付く

――全国47都道府県を回る“うた修行”を2月にスタートして。現時点(取材は5月7日)では45都府県終了されていますが、なぜ、そんな過酷なツアーを行おうと決めたんでしょう?

塩ノ谷 早耶香(以下、塩ノ谷):1月23日にデビューさせていただいたばかりなので、まずは全国に私の歌を届けたい。そしてアーティストとして、人間としても成長していきたかったんです。

――裏を返すと、日々“人間として”足りない部分を感じる場面があるってこと?

塩ノ谷:たくさんありますね。特に感じるのがMC。アーティストの一番の仕事は、もちろん歌を届けることですが、そこで歌い手のバックグラウンドや人となりを知っているか否かで、伝わり方も大きく変わってくるじゃないですか? となるとMCでの言葉の選び方、表現の仕方ってすごく大事だし、人間としての力量も問われてくる。自分自身に全く魅力がなかったら、どんなに上手く話せても伝わらないと思います。そういう面を鍛えるための“うた修行”でもあるんです。

――“修行”というからには、苦労も多かったはずですよね。

塩ノ谷:3ヶ月間ほぼ毎日歌ってきたから喉のケアが大変で、いつも通りのパフォーマンスが出来なかった日は、やっぱり辛かったです。でも、全体的にはすごく楽しかったですよ。一番テンション上がったのが、鹿児島で白くまを食べられたこと!

――白くまって、かき氷にフルーツや練乳がかかってる?

塩ノ谷:そうです。もともとアイスが好きで、お父さんに“鹿児島で白くまを食べてきた”って自慢されてから、ずーっと本場の白くまを食べるのが夢だったんです(笑)。もちろんライヴ自体でも嬉しいことはたくさんあって、3月に19歳の誕生日を迎えたときは、サプライズでお客さんがバースデーソングを歌ってくれたんですよ! 雨が降ってて人がすごく少なかったときでも、一生懸命盛り上げてくれようとしてくださったお客さんや、雨に濡れながらチラシを配ってくださっているスタッフさんの姿を目にして、逆に幸せな気持ちになれました。“こんなにいろんな方々に私は支えていただいてるんだな”って。もちろん今回の「片恋/Smile again」も全箇所で披露して、特に「片恋」は歌い続けていくうちに、どんどん曲に対する理解が深まって、世界観も広がっていきました。

――失恋の悲しみや切なさを歌いつつ、それを乗り越えた先の光を歌っている曲ですよね。

塩ノ谷:はい。“辛い別れの中にも意味があるんだ”っていうメッセージを持った曲。でも、この曲の主人公自身、最初はすごくもがき苦しんでるんですよ。相手を憎んだり自分を責めたり、悶々と悩み抜いてようやく、彼との幸せな時間を過ごせたからこそ今の辛さがあるんだってことに気づく。曲で言うとクライマックスの落ちサビの部分で感情が爆発して、そこで彼を愛していた自分を取り戻す……っていうストーリーが自分の中で細かく組み立てられるようになってきてから、どんどん感情を籠めて歌えるようになってきたんですよ。

――もう、主人公になり切って?

塩ノ谷:はい。誰か訴えたい相手がいるんじゃなく、自分に言い聞かせているような曲なので、特に主人公になり切って世界に入り込むことが重要だなと思ったんですね。“別れにも意味がある”ってことを誰かに教えてもらってるんじゃなく、自分の中で想いを消化して答えを出す物語になっているから、切ない曲調の中でも私の歌声で希望や光を表現していきたいと考えながら歌いました。実際、作曲してくださったJin Nakamuraさんにも、“悲しいけどダイナミックな世界観を持った曲だから、サラッと歌うんじゃなく自分の中でしっかり理解して歌わないと、感動を伝えられないよ”って言っていただいたんです。

――感情の抑揚が激しい曲なぶん、歌い終えたときの疲労度も大きいんじゃありませんか?

塩ノ谷:疲れますね! 落ちサビで爆発してスッと裸の自分に戻る……っていう変化を表せるようにレコーディングでも意識しましたし、1曲歌うと1本映画を観たくらいの気持ちになります(笑)。MVでも窓辺で歌っている悩み苦しんでいる場面と、白いカーテンの中で歌う場面のサビでは光が見えた状態と、二人の自分を登場させることで、心境の変化が表現できたかなって。

――ストーリー仕立てで曲の世界観を膨らませてくれるMVですよね。それにしてもBメロにもある“痛みを感じる想いの分だけ 幸せをもらってた”という心境に、19歳で辿り着けたのは凄い。

塩ノ谷:それも結構スンナリ入ってきたんですよ。性格的に“辛いからやらなければよかった”って思うタイプじゃないし、例えば友達とケンカしたときだって辛いけど、ケンカできるのも相手が自分を見放さずに向き合ってくれてる証拠なんだって。そういう身近なところで実感できる心境ではあるんです。

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