【インタビュー】子供ばんど、25年ぶりのニューアルバム『CAN DRIVE 55』について、うじきつよし大いに語る
■「55(歳)でも十分行けるぜ」というのはどうだろう?
■「制限速度でいいじゃない」のんびり行こうよ
──それはちょっと意外かもしれない。
うじき:そう言われることが多いけどね(笑)。「なんであんな軟弱なのが好きなの?」って。軟弱じゃねえじゃん。ジャーニー、カッコいいじゃん! 好きだったなあ。でも基本的にはヘヴィなギターと、黒っぽいヴォーカルのものが好きですね。今でも新しいバンドを聴く時には、ギターがガンガン鳴ってるバンドが好きですね。フー・ファイターズとかすごい好き。メロディはカッコよくてきれいだけど、ギターがガンガン鳴ってるじゃない? ギターがぶっとくてガンガン鳴ってて、ドラムが煽ってるみたいなやつはみんな好きだなあ。
──そういえばアルバムの中に、もろツェッペリンな曲がありますよね。どれとは言いませんが(笑)。
うじき:それはもう、今回ストレートにやったんです(笑)。「ひねりなくやる」というのが今回のテーマのひとつなので。聴いてくれた人がニヤッとしてくれればもうけもん、みたいな感じ。でも、ツェッペリンも知らない人が今はいるから。
──そうでしょうね。
うじき:そういう人たちは、歌詞や歌から入ってきてもらって、「この音にはどうやら元があるらしい」となれば、それはそれで面白いし。ツェッペリン、ハンブル・パイ、グランド・ファンク、ディープ・パープルとか、ロックにおいてはクラシックじゃないですか? そのカッコよさはベートーベンと一緒で、「ジャジャジャジャーン」(「運命」)でも「ダッダッダーン、ダッダッダダーン」(「スモーク・オン・ザ・ウォーター」)でも、あれ以上のものはないんですよ。それがもう出来てるんであれば、あえてそれを踏まえて別のことをやる必要はないんじゃないかと思うし、そのまま取り入れてきちんとリスペクトさせていただこうと。そんな、別のことをやってるヒマなんて、この年になってくるともうないんですよ(笑)。考えてるうちに死んじゃうかもしれないんだから。やっちゃえ!っていうのはありますね。
──いやー、痛快です!
うじき:だって、カッコいいもんね。それを踏まえてほかのことをやってやろうとすると、大概カッコ悪くなる。自分たちが思いつくことなんて、「下手の考え休むに似たり」的なことになっちゃうから。だから仮タイトルが「ツェッペリン」とかなんだよね(笑)。あと「フー」とか。「あの「フー」はどうする?」「「フー」は「フー」のままでやるんだ!」とか(笑)。
──うけます、その会話(笑)。
うじき:たぶんバレてるから言うけど、「55」のイントロには、違うイントロがついてたんですよ。そこそこカッコよかったんだけど、ギリギリになってトーベンが「いらねんじゃね? そのイントロ」って言い出して、今の「ジャーン!」っていうイントロになった。元に戻っちゃった。まあ、ピート・タウンゼントに会った時にあやまればいいだろうって(笑)。笑われると思うけどね(笑)。でもね、ツェッペリンもフーも、やってみると、ああいうふうにはならないんだよ。やっぱり自分たちで演奏して、日本語の詞が乗ると、全然そういうふうにならない。良くも悪くも自分たちの味がちゃんと出てくるんで、そのアプローチは今回はうまくいったんじゃないかな。本物の持っている強いエッセンスはいただいて、結果的には自分たちの味も出せたということで。
──日本のロックの縮図みたいな話ですね。というか、ロックってそもそもそういうものかもしれない。
うじき:あくまで結果論ですけどね。やってる間は、そんなことができるかどうかさっぱりわかんないから。そこを探りながらやっていくと、結果的に自分たちのガイダンスは間違った方向ではなかったんだなというのはあったかな。
──タイトルが「CAN DRIVE 55」。55歳のうじきさんのロック魂がそのまま出ている、まさに今の作品だなと。
うじき:実際55だし、中には59の奴もいるわけだから(笑)。昔、サミー・ヘイガーのヒット曲に「CAN'T DRIVE 55」というのがあって、55(マイル)というのはアメリカの一般道の制限速度で、それを思い出したんですよ。若い頃のサミー・ヘイガーが、「55マイルじゃ物足りないぜ、65マイルにしてくれよ」とか歌いながら、警察につかまって、最後は裁判所に行くという、そのまんまのプロモーション・ビデオがあったんだけど(笑)。それを思い出して、「55(歳)でも十分行けるぜ」というのはどうだろう?と。CAN’TじゃなくてCANにして、「制限速度でいいじゃない」と。のんびり行こうよ、という意味も入れてみたりして。
──ぜひいろんな世代に、ロック本来の楽しみをまた与えてほしいです。最後に、若い世代に伝えたい言葉はありますか?
うじき:情報がものすごく多いから、いろんなことが飛び込んできて大変だと思うんですよね。それがかえって、自分のことを縛っちゃうこともあるので、「いいな、カッコいいな」と思うものに、素直にのめりこんでいけばいいんじゃないですか。そのほうが結果的に、自由になれるんじゃないかな。情報が多すぎるからね。でも自分たちもそうですよ。あんまり変わらないかもしれない、若い奴と。むしろ若い人のほうがそのへんは賢いんじゃない? 情報をシャットアウトする方法も知ってるだろうし、コンピューターに対しても、オレたちよりももっと肉感的に操ってるかもしれないし。なるべく自由でいいんじゃないですか?
取材・文●宮本英夫
『CAN DRIVE 55』
5月5日発売 CD+DVD
LNCM-1025 \3,500(tax in)
1.55
2.Na.Na.Na.
3.カモン!絶好調!
4.馬鹿な男のR&R
5.月下酔人
6.マンモスの唄
7.風来坊
8.生タマゴ
9.River of sorrow ~ 孤独の河
10.All Because of Me
11.声をきかせて
12.サムライダマシー
付属DVD: 過去映像を含むインタビューショット他最新映像(約28分)
<子供ばんど ミニライブ&握手会>
5月5日(日・祝) 13:00スタート(集合12:30)
開催場所 タワーレコード渋谷店 B1F 「CUTUP STUDIO」
[問]タワーレコード渋谷店 03-3496-3661
<ロックの日!「子供ばんど×フラカン」>
6月9日(日) 下北沢GARDEN
出演:子供ばんど/フラワーカンパニーズ
[問]ネクストロード 03-5712-5232(14:00~18:00)
◆子供ばんど オフィシャルサイト