ザッカリー・アルフォード、「『ザ・ネクスト・デイ』はとても勢いがあると同時にオーガニック」
布袋寅泰のツアーで来日中のドラマー、ザッカリー・アルフォードが、デヴィッド・ボウイ新作『ザ・ネクスト・デイ』のレコーディングの様子を語ってくれた。極秘レコーディングの真相が明らかとなる貴重な証言だ。
◆ザッカリー・アルフォード画像
「「ユー・フィール・ソー・ロンリー・ユー・クッド・ダイ」を初めてスタジオでリハーサル演奏をしたときだ。演奏が終わってからデヴィッドは言った。最後にこんなビートを入れてみよう。そう、それがあの曲の最後に出てくる「5年間」のビートだよ!」──ザッカリー・アルフォード
ザックはニューヨーク育ちのドラマーで、これまでボウイはもちろん、ブルース・スプリングスティーンやビリー・ジョエルなど、多数の大物アーティストからツアーやアルバムへの参加を請われているすご腕のミュージシャンだ。音楽好きの兄姉の影響で小さいときからロックン・ロール、ブラック・ミュージックに親しんで育ったザックは、10代前半にはすでボウイの音楽に出会っていたという。中学生の頃にはもうドラムを叩いていたが、同世代のアマチュア・ドラマー仲間の友達にスターリング・キャンベルがいた。1990年代初頭からボウイの作品に参加することになったキャンベルの紹介でボウイのツアーに招聘されたのは、1995年のアルバム『アウトサイド』発表に伴うワールド・ツアーだ。そのツアーで翌1996年には来日も果たしている。
「その前にも一度、別のバンドの仕事で来日はしていたのだけど、駆け足のそのときとちがって、1996年のツアーでは日本全国をまわった。なかでも思い出深いのは京都。デヴィッドと一緒に苔寺を訪れて、禅の導師とデヴィッドの芸術や宗教についての対話も聴いて、とても感動したよ」
ザックはそのままアルバム『アースリング』(1997年)のレコーディングに参加したが、実は意外や、その後もずっとツアーには参加していても、ボウイのアルバムのスタジオ・レコーディングに関しては今回の『ザ・ネクスト・デイ』はそれ以来の2回目となる。
「今回の『ザ・ネクスト・デイ』のレコーディングは『アースリング』のときとは何もかも違ったよ。あのときのテクノロジーとコンピューターを駆使した最先端のレコーディングとくらべると、『ザ・ネクスト・デイ』のレコーディングは1990年代以前のオールド・スクールなやり方と言ってもいいものだった」
なにしろ極秘のレコーディングで、スタッフやミュージシャンは全員、このレコーディングや内容について一切口外しないという守秘義務契約書にサインしての参加。さらにレコーディングする曲に関しても、なんと、その曲をレコーディングする当日に、みながスタジオに集まってから、初めてボウイが作ったデモ・トラックをミュージシャン、スタッフ全員で聴かせてもらい、リハーサル演奏をしてからすぐにレコーディングしたというのだ。
「厳密な意味での一発録りじゃないけど、それに近いものだった。ほとんどの曲がスタジオで1~3テイク録っただけじゃないかな。時間を重ねてコンピュータ上で綿密に音の追加や抜き差し、加工をしていった『アースリング』のレコーディングとは対極だった。そしてその一発録りみたいな演奏がほとんどなんの加工もされずにそのままレコードに記録されている。『ザ・ネクスト・デイ』はとても勢いがあると同時にオーガニックな感触の作品になったと思うよ」
かつてロック・ミュージックがどんどん革新されていった頃の、『ロウ』~『スケアリー・モンスターズ』といった1970年代末から1980年代初頭の頃のボウイの作品がフェイバリットだと言うザックには、この『ザ・ネクスト・デイ』はとてもあの頃の作品に近い感触を持ったアルバムになったという思いがある。そのため、長年のボウイ・ファンならば絶対に大歓迎するサウンドになったという確信も。
「デヴィッドはとてもクレバーな人だし、いつも物事をよく考えている。いまのポップ・ミュージックがどれも加工されすぎたサウンドになっている中、人と違うことをやりたかったんだろうし、いまだからこそオーガニックなサウンドに立ち返る意味は大きいって思ったんじゃないかな。それに、彼のこの前の『ヒーザン』と『リアリティ』があまりにも洗練されたサウンドだったから、ちょっと違う感触の音にもしたかったんだと思う」
ザックは、ボウイと共に仕事をしていると、自分自身がロックの長い歴史の一部に参加しているのだという喜びを感じると語る。
「彼のバックで演奏していると、いままさに自分はロックの歴史を演奏しているのだなという気分になれるんだ。ライヴで過去の名曲を演奏するとき、特にそう思えるんだ。この曲はあのバンドのあの曲のプロトタイプだったんだなあっていうような発見がいつもあるんだよ」
ライヴとツアーの予定はあるのだろうか。即座に返ってきた答えは「なにも聞いていないし、知らない」というものだった。『ザ・ネクスト・デイ』のときは、「レコーディングに関して一切口外しない」という守秘義務契約書にサインしたザックに、重ねて訊いた。ひょっとして2枚目の守秘義務契約書にサインをしていない?ザックはただ笑うばかりだった。
インタビュー・文:吉村栄一
<TOMOYASU HOTEI Rock'n Roll Revolution Tour 2013>
ザック・アルフォード参加、アルバム『COME RAIN COME SHINE』リリース&全国ツアー開催中。
2013年3月15日(金)市川市文化会館大ホールから5月19日(日)大阪フェスティバルホールまで全国22会場24公演開催。
http://www.hotei.com/special/tour2013/
◆デヴィッド・ボウイ・オフィシャルサイト
◆ザッカリー・アルフォード画像
「「ユー・フィール・ソー・ロンリー・ユー・クッド・ダイ」を初めてスタジオでリハーサル演奏をしたときだ。演奏が終わってからデヴィッドは言った。最後にこんなビートを入れてみよう。そう、それがあの曲の最後に出てくる「5年間」のビートだよ!」──ザッカリー・アルフォード
ザックはニューヨーク育ちのドラマーで、これまでボウイはもちろん、ブルース・スプリングスティーンやビリー・ジョエルなど、多数の大物アーティストからツアーやアルバムへの参加を請われているすご腕のミュージシャンだ。音楽好きの兄姉の影響で小さいときからロックン・ロール、ブラック・ミュージックに親しんで育ったザックは、10代前半にはすでボウイの音楽に出会っていたという。中学生の頃にはもうドラムを叩いていたが、同世代のアマチュア・ドラマー仲間の友達にスターリング・キャンベルがいた。1990年代初頭からボウイの作品に参加することになったキャンベルの紹介でボウイのツアーに招聘されたのは、1995年のアルバム『アウトサイド』発表に伴うワールド・ツアーだ。そのツアーで翌1996年には来日も果たしている。
「その前にも一度、別のバンドの仕事で来日はしていたのだけど、駆け足のそのときとちがって、1996年のツアーでは日本全国をまわった。なかでも思い出深いのは京都。デヴィッドと一緒に苔寺を訪れて、禅の導師とデヴィッドの芸術や宗教についての対話も聴いて、とても感動したよ」
ザックはそのままアルバム『アースリング』(1997年)のレコーディングに参加したが、実は意外や、その後もずっとツアーには参加していても、ボウイのアルバムのスタジオ・レコーディングに関しては今回の『ザ・ネクスト・デイ』はそれ以来の2回目となる。
「今回の『ザ・ネクスト・デイ』のレコーディングは『アースリング』のときとは何もかも違ったよ。あのときのテクノロジーとコンピューターを駆使した最先端のレコーディングとくらべると、『ザ・ネクスト・デイ』のレコーディングは1990年代以前のオールド・スクールなやり方と言ってもいいものだった」
なにしろ極秘のレコーディングで、スタッフやミュージシャンは全員、このレコーディングや内容について一切口外しないという守秘義務契約書にサインしての参加。さらにレコーディングする曲に関しても、なんと、その曲をレコーディングする当日に、みながスタジオに集まってから、初めてボウイが作ったデモ・トラックをミュージシャン、スタッフ全員で聴かせてもらい、リハーサル演奏をしてからすぐにレコーディングしたというのだ。
「厳密な意味での一発録りじゃないけど、それに近いものだった。ほとんどの曲がスタジオで1~3テイク録っただけじゃないかな。時間を重ねてコンピュータ上で綿密に音の追加や抜き差し、加工をしていった『アースリング』のレコーディングとは対極だった。そしてその一発録りみたいな演奏がほとんどなんの加工もされずにそのままレコードに記録されている。『ザ・ネクスト・デイ』はとても勢いがあると同時にオーガニックな感触の作品になったと思うよ」
かつてロック・ミュージックがどんどん革新されていった頃の、『ロウ』~『スケアリー・モンスターズ』といった1970年代末から1980年代初頭の頃のボウイの作品がフェイバリットだと言うザックには、この『ザ・ネクスト・デイ』はとてもあの頃の作品に近い感触を持ったアルバムになったという思いがある。そのため、長年のボウイ・ファンならば絶対に大歓迎するサウンドになったという確信も。
「デヴィッドはとてもクレバーな人だし、いつも物事をよく考えている。いまのポップ・ミュージックがどれも加工されすぎたサウンドになっている中、人と違うことをやりたかったんだろうし、いまだからこそオーガニックなサウンドに立ち返る意味は大きいって思ったんじゃないかな。それに、彼のこの前の『ヒーザン』と『リアリティ』があまりにも洗練されたサウンドだったから、ちょっと違う感触の音にもしたかったんだと思う」
ザックは、ボウイと共に仕事をしていると、自分自身がロックの長い歴史の一部に参加しているのだという喜びを感じると語る。
「彼のバックで演奏していると、いままさに自分はロックの歴史を演奏しているのだなという気分になれるんだ。ライヴで過去の名曲を演奏するとき、特にそう思えるんだ。この曲はあのバンドのあの曲のプロトタイプだったんだなあっていうような発見がいつもあるんだよ」
ライヴとツアーの予定はあるのだろうか。即座に返ってきた答えは「なにも聞いていないし、知らない」というものだった。『ザ・ネクスト・デイ』のときは、「レコーディングに関して一切口外しない」という守秘義務契約書にサインしたザックに、重ねて訊いた。ひょっとして2枚目の守秘義務契約書にサインをしていない?ザックはただ笑うばかりだった。
インタビュー・文:吉村栄一
<TOMOYASU HOTEI Rock'n Roll Revolution Tour 2013>
ザック・アルフォード参加、アルバム『COME RAIN COME SHINE』リリース&全国ツアー開催中。
2013年3月15日(金)市川市文化会館大ホールから5月19日(日)大阪フェスティバルホールまで全国22会場24公演開催。
http://www.hotei.com/special/tour2013/
◆デヴィッド・ボウイ・オフィシャルサイト
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