【ライブレポート】aus、ヨーロッパで味わう日本のサウンド・コラージュ
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◆aus画像
ausの音楽は、予め(プリペイドで)録音されたサウンド・オブジェクトの再生を重ねあわせながら、ライブでミニ・キーボード、シーケンサーの演奏をしつつ展開されるサウンド・コラージュ。これらのサウンド・オブジェクトは、彼自身が作曲した旋律であったり、雨音などの自然音であったり、彼の交流が培ってきた様々なアーティストの演奏であったりするという。この日のステージは約30分続き、ステージの前方に配置された小さなトランジスタ・ラジオから静かに流れる、美しい旋律でしっとりと締めくくられた。
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しかし、この日の彼のステージには静と動、緩急がはっきりしたサウンド・コラージュがあった。ドイツのライブハウスにおける聴衆はいい意味で本当に正直で、つまらないライブだと途中で自分勝手にベラベラ喋りだしたりして、音楽を聴きに来ているのか、近況報告会をしているのかよくわかない空間が繰り広げられたりするのであるが、本日のausのステージで、そういった態度をとる観客は皆無であった。このこともこの日の彼のステージの成功を証明するだろう。
後半は春のヨーロッパ・ツアー中のマーシャ・クレラのステージ。2012年リリースされた『Analogies』からの楽曲を中心に、今年のヨーロッパ・ツアーを繰り広げてきた彼女らの演奏は、彼女の音楽に真摯に耳を傾けるハンブルクの観客を大いに酔わせた。
ausの活動は日本よりもヨーロッパのほうが注目度が高いようだ。実際、「君はausと知り合いかい?」と尋ねるハンブルガーも数人いた。先日のマヘル・シャラル・ハシュ・バズに関する原稿(参照:https://www.barks.jp/news/?id=1000087596)でも書いたが、過去から現在にかけて、日本ではどのような音楽に対する実験が行われてきたのか?、そしてその実績がヨーロッパなど外国においてどのように受け止められ評価されているか?実は私たちはすぐ隣りで起きている新しく素敵なムーヴメントを見逃しているのではないだろうか?これらのことを僕たち日本人は今一度、考えるほうがいいのだろう。
ヨーロッパで味わう日本のサウンド・コラージュは、日本で味わうのとなんだか違う味がした。
文:Masataka Koduka
◆ausレーベルサイト