【インタビュー】Crack6、PENICILLIN千聖がソロプロジェクトとしてリリースした問題作「Loveless」
PENICILLINのギタリスト千聖が、自らの名前をMSTR(ミスター)と変えて活動しているソロプロジェクトCrack6。プロジェクトのコンセプトを「Hybrid Music Project」と掲げ、様々なジャンルのミュージシャンとライヴや楽曲制作でコラボレーションし、ヴィジュアル面や音楽性を多彩に表現している。そのCrack6が活動10周年、そして結成20周年を迎えたPENICILLINのアニバーサリーも同時進行するなか最新シングル「Loveless」をリリース。Crack6の現在・過去・未来についてギタリスト千聖にその思いを語ってもらった。
■「Loveless」は選曲会でスタッフも交えみんなの意見を聞いた
■そうすることで自分には分からない自分らしさが発見できた
──ソロプロジェクトCrack6が活発化する一方で、結成20周年を迎えたPENICILLINのアニバーサリーも同時進行するという、活動の充実ぶりがうかがえます。
MSTR:20年間走り続けてるPENICILLINを止める気はないですね。どんなことでもそうだと思うんだけど、止まってしまうより常に動き続けているほうが困難も多いけど、活性化すると思うんですよ。それはバンドはもちろん、スタッフも、ファンの人たちもね。
──動いているからこそ風通しがよく、自らに刺激を与えることもできるという?
MSTR:そう。いつもフレッシュな環境で活動を続けられていることに感謝してますね。
──Crack6も、2013年6月6日に活動10周年を迎えるわけで。
MSTR:正直なところ、スタート当初はそんなつもりもなかったんですけどね(笑)。最初はホント、趣味に近いカタチだったから。
──そもそもCrack6の成り立ちを教えていただきたいのですが、その前に千聖としてソロデビューをしていますよね。
MSTR:まず、1996年にPENICILLINがメジャーデビューすると同じ年の半年後にオレとHAKUEIはソロデビューするんですけど……意味不明ですよね。そんな前例はなかったし、いまだにそんなアーティストはいないでしょうから(笑)。オレのソロワークスはそこから始まっているんです。その後、PENICILLINが独立して事務所を立ち上げたのが、今から11年前のことで。これを機に千聖ソロというパーソナルなものではなくて、いろいろなミュージシャンと交流可能なプロジェクトを作りたい思ったんですよ。それがCrack6始動の経緯ですね。
──初期はDragon Ashの馬場さんや桜井さんが参加していましたし、その後もChirolynさんや淳士さん、HIMAWARIさんが参加するなど、顔ぶれも豪華なプロジェクトです。
MSTR:1stシングルで馬場さんと桜井くんに参加してもらったのは、当時よくみんなで遊んでたってのもあるんですが、こういうコラボレーションで生み出されるものを消化することで、新たなもの追求したかったからで。やっぱりそれが音楽の面白さなんですよ。メンバーに関しては、ギタリスト兼サウンドプロデューサーのSHIGE ROCKS以外は流動しながら、屈託なく活動してきましたね。
──音楽的な自由度の高さを象徴する“ハイブリット・ミュージック・プロジェクト”というコンセプトが掲げられていますが?
MSTR:とりわけ最初はそういうテーマを謳ってましたね。それまでの千聖ソロとは違う手法を採り入れたりしたので、始動当初はメロディがないリズム主体な曲も結構多かったんです。でも、オレはやはり絶対的なメロディがある曲が好きなんですよね、たとえリズム主体なノリ重視の曲だとしてもどこかにキラって光るメロディ。2007年以降は特にそういう方向へ音楽性がシフトしたと思います。
──PENICILLINもメロディが核にあるバンドですが、Crack6との違いはどのように捉えてますか?
MSTR:オレ個人だったらこういうことや、こんな感じなことをしてみたい、という表現であることは、千聖ソロ時代もCrack6も変わらないです。まぁわかりやすい話をするとオレが歌っている時点ですでにPENICILLINとは違うんですけどね(笑)。
──確かに(笑)。それに作詞者であり、ツインギタースタイルということもPENICILLINとは異なりますし。ここ最近は、MSTRとSHIGE ROCKSに加えて、ベーシストにTENZIXX(長野典二)、ドラマーにJIRO 6(O-JIRO)というメンツで固まってきているようですが?
MSTR:そうですね。ただ、パーマネントなバンドの場合、誰かひとり欠けたら困るんですが、Crack6はそこはなんとでもなる面白味があって。たとえばレコーディングとライヴのメンツを変えてもいいし、変えなくてもいい。そういう意味では、やはりSHIGE ROCKS以外は流動的に考えているんです。で、今のこのメンバーは、“こうやったらもっと面白い”というアイデアを楽しみながら生み出そうとする意識が高いんです。オレという御輿をみんなで担いで、その御輿を装飾する部分はこの色がいいとか、こういう素材がいいんじゃないかと考えてるプロデューサー集団という感じですね。
──シングル「Loveless」はそういった雰囲気のなか、制作されたわけですね。
MSTR:まさにタイトル曲の「Loveless」はその象徴で。これまでは、ほとんど自分で収録曲を決定することが多かったんですよ。ところが今回は選曲会を開いて、スタッフも交え、みんなの意見を聞いたんですよ。そうすることで、自分には分からない自分らしさが発見できたというか。その6?8曲のなかから選ばれたのが「Loveless」です。
──今回のシングルは、初回限定盤を含めて全3タイプがリリースされます。「Loveless」と「記憶の匣」は全タイプに共通して収録されるほか、通常盤Type-Aには「Blade in the Soul」、通常盤Type-Bには「桜花の花」といった曲が収録されているわけですが、これらタイプの異なる全4曲のセレクションもその選曲会で?
MSTR:選曲会に挙がった曲で残っているのは「Loveless」と「桜花の空」だけで、あとは全部作り直しました。そのあたりはPENICILLINと共通したところがあるんですが、同じ曲調、同じテンポのものをひとつの作品の中に入れたくないんですよ。今回はシングルとはいいながら4曲もあるので、せっかく聴いてもらうんだったら、いろんな側面を見せたい。でも、その根本はライヴを想定しているプロジェクトだから、ノリはいろいろですけど、全曲、身体が反応するリズム作りをしているんです。
──タイトル曲の「Loveless」は、キャッチーなサビが印象的なナンバーですね。
MSTR:原曲を作っていたときに、サビのメロディと同時に歌詞が一緒に出てきちゃったくらいでしたからね。とにかくサビがハッとするというスタッフの意見も多かったし、まずは説得力のあるサビから始まるアレンジにしました。
──そのイントロ部分に詰め込まれた情報量というか、密度が濃いんですよ。スクリーモや様式美メタル的なアプローチなど、Aメロに入る前の50秒間にどれだけの要素を詰め込んでいるんだと(笑)。
MSTR:はははは(笑) イントロはいろいろ考えたんですよ。たしかにいろんな要素が混じってますね。最初のドラムの入り口はLAメタルだし、ハードコアやヴィジュアル系っぽい2ビートもある。様式美的なギターのハモリはオクターヴのユニゾンで、スクリーモ系っぽいということはTENZIXXも言ってましたね。冒頭の“Loveless Break My Heart”っていう語りの部分を、ああいった語りの感じじゃなくてTENZIXXやオレがシャウトしたら、間違いなくスクリーモ系になるでしょ(笑)。でも実はその語りの部分は、後半にいくにしたがってTENZIXXの声が大きくなるんだけどね。だんだんスクリーモ系になっていくという遊び心というか、面白さもありますね。
──右チャンネルと左チャンネルに、それぞれ異なるギターが入っていますが、これは両方ともMSTRが弾いたものですか?
MSTR:この曲に限らず、今回のギターのレコーディングはほとんどオレですね。でもライヴで振り分けるというイメージありきで2本のフレーズを作っています。たとえばPENICILLINのギターはオレ1人だから、1人で弾くことのカッコよさを求めるんですが、Crack6の場合はツインリードがどんどん出てきます。バッキングも2人が全然違うことを弾いているんだけど、合わせるとひとつのフレーズになっているみたいな。そういうL・R的な面白さも追求したいんです。だからスピーカーで聴くのとヘッドフォンで聴くのとでは、印象が違って聞こえるかもしれない。
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