「007シリーズ」、名曲・ヒット曲だらけの主題歌に見る50年の歴史

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007シリーズの最新作映画『007 スカイフォール』の公開がいよいよ迫ってきた。このシリーズ第一作となった『007 ドクター・ノオ』(日本公開時の邦題は「007は殺しの番号」)がイギリスで公開されたのが1962年だから、この最新作は007シリーズのちょうど50年の節目に当たる、記念すべき作品なのだ。そこでBARKSでは、テーマソングや主題歌の側面から007シリーズの50年の歴史を見てみることにする。

■名曲、大ヒット曲ばかりの007の音楽

映画にとって音楽は切り離せない不可欠な要素だが、007ももちろん例外ではない。というよりむしろ、音楽と映画がもっとも密接に結びついている代表のような存在だ。なにしろ007のメインテーマ、主題歌はどれも名曲ぞろいで、大ヒットナンバーばかりなのだ。

007シリーズの音楽として誰でも知っているのは第一作の『007 ドクター・ノオ』からメインテーマとして使われているインスト曲の「James Bond Theme」だろう。イントロのストリングスがなにやら不穏な雰囲気を醸し出し、それに続いて登場するエレキギターが緊張感をあおる。そこから一転してハネたビートのジャジーな4ビート、そしてスケールの大きいビッグバンドへと世界が広がっていく展開は、クールでとてもスリリング。迫力ある画面を見ながらはもちろんのこと、この音楽だけ聴いていても、スパイ映画ならではの緊張感がいっぱいに広がって、限りなく気分が盛り上がってしまうという名曲だ。

007映画には、作品ごとにボーカル入りの主題歌もあるのがほとんどだ。そして主題歌はいつも、それぞれの作品の雰囲気にマッチしていてとても結びつきが強い。だから、映画のタイトルを見るとそのストーリーより先に主題歌を思い出してしまうくらいだ。たとえば2作目の『007 ロシアより愛をこめて』(公開時の邦題は「007危機一発」)の主題歌はマット・モンローが歌ったムーディなジャズ・バラード「From Russia with Love」。これが映画の中では、最大のピンチを脱してトラブルを解決したエンディングに流れるからたまらない。これでもかと大団円ムードを盛り上げるメロウな歌声と甘くせつないメロディのこの曲は、英米で大ヒットした。また1977年公開の『007 私を愛したスパイ』の主題歌、カーリー・サイモンの「Nobody Does It Better」は、イギリスで7位、アメリカで2位という大ヒットを記録。明るさと寂しさが同居するようなバラードだが、キャロル・ベイヤー・セイガーの書いた歌詞は、ボンド本人に向けたラヴソングといった内容。ここを理解しながら映画を見ると、より味わい深く楽しめる。ちなみにこの映画でボンド・ガールを務めたバーバラ・バックは後にあのリンゴ・スターと結婚している。

■ポール・マッカートニー&ウィングス

007シリーズの主題歌の中でもっとも有名なナンバーといえば、なんといってもポール・マッカートニー率いるウィングスの「007 死ぬのは奴らだ」だ。ポールらしい優しくあたたかいピアノ弾き語りに始まり、後期ビートルズのような壮大なオーケストレーションに導かれてテンポアップする急展開、さらにはレゲエのような軽妙なセクション、これらが交互に繰り返されるスリリングな雰囲気は、スパイ映画にぴったりだ。ウィングスの5枚目のシングルとしてイギリスで9位、アメリカで2位という大ヒットを記録したこの曲は、ポールの代表曲にもなった。ウィングス時代もその後のソロ時代も、ツアーでは必ずこれを演奏するし、この曲がライヴでのハイライトにもなっているのだ。

さらにこの曲、ポールやその後の音楽界にとって重要な意味を持つ曲だとも言える。ポールはビートルズ解散後にウィングスを結成したものの、1stアルバムは商業的には失敗。1973年当時のポールは苦境に立たされていたはずだが、それを救ったのがこの007の主題歌だというわけだ。そして同時期にリリースしたシングル「マイ・ラヴ」とアルバム『レッド・ローズ・スピードウェイ』がヒットしてウィングスが軌道に乗り、その後の大成功へとつながっていくことになる。もしこのときポールが007の主題歌を担当していなかったらどうなったかと思うと、ちょっと恐ろしい。まあ、ポール・マッカートニーの持つ素晴らしい才能を考えれば、あの時代に消えてしまうようなことは絶対になかったはずなのだが。

■その時代の音楽シーンが見えてくる007シリーズの主題歌

もちろんこのほかにも大ヒットした主題歌がたくさんある。ナンシー・シナトラの「You Only Live Twice 」(『007は二度死ぬ』)やリタ・クーリッジの「All Time High」(『007 オクトパシー』)、ティナ・ターナーの「Goldeneye」(『007 ゴールデンアイ』)など、もう挙げたらきりがない。007シリーズの主題歌になればヒットが約束されていると思えるほどだ。人気映画の主題歌だからヒットするという理由もあるだろうが、その時代の一流アーティストが本気で取り組んだ名曲だから、音楽そのものも高く評価されるのだ。その意味で、007シリーズの映画は、音楽業界にとっても重要な存在といえるだろう。

歴代の007シリーズ主題歌を任されているのは、必ずその時代を象徴するアーティストだ。したがって、誰がどの作品の主題歌を担当していたかを見ていくと、その時代にどんな音楽がメインストリームに流れていたかを知ることができるのだ。

たとえば、1985年の『007 美しき獲物たち』の主題歌を歌ったのはデュラン・デュラン。80年代前半のニューロマンティックのムーブメントを牽引したのが彼らだから、007シリーズに起用されるのもうなずける。83年にアルバム『リオ』や『セヴン&ザ・ラクド・タイガー』、翌年には「ザ・リフレックス」や「ワイルド・ボーイズ」といったシングルも大ヒットさせ、パワー・ステーションやアーケイディアといったサイドプロジェクトも始動させるなど、85年当時はまさに絶頂期だったのだ。1997年の『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』では女性シンガー、シェリル・クロウを起用。93年のデビュー以来、世界中で驚異的なセールスを記録し、94年、96年とグラミー賞も獲得、カントリー&ウェスタン畑から世界的シンガーへと上りつめた時期にこの主題歌を担当したことになる。あのマドンナも、2002年の『007 ダイ・アナザー・デイ』で主題歌を歌っていて、女優としてこの作品に出演もしている。

新人の大抜擢というパターンもある。1981年の『007 ユア・アイズ・オンリー』のシーナ・イーストンがそれだ。人形のように愛くるしいルックスと澄んだ美しい声で「モダン・ガール」、「9 to 5」と立て続けに大ヒットを飛ばした新人歌姫は、この主題歌でも世界的な人気と評価を確立、翌年にはグラミーの新人賞を受賞し、スターダムに駆け上がった。

■最新作の『007 スカイフォール』、主題歌はアデル

そして2012年に公開されるシリーズ最新作『007 スカイフォール』で主題歌を担当するのは、イギリス出身のシンガー・ソングライターのアデルだ。まだアルバムは2枚しかリリースしていないものの、合計でなんと2000万枚以上という売り上げが彼女のすごさを物語っている。2009年のグラミー賞では最優秀新人と最優秀女性ポップ歌手を受賞したのに続き、今年のグラミーでは6部門を独占するなど、まさにノリに乗っているところ。今、イギリス出身女性シンガー・ソングライターの頂点に立つ彼女を起用するあたり、さすがは007シリーズと言わざるを得ない。

アデルによる本主題歌へのコメントは以下。
「私が『007 スカイフォール』のテーマ曲に関わることには、最初はちょっと及び腰だったの。ジェームズ・ボンドの曲といえば、もの凄く大きな注目が集まるし、プレッシャーも大きいから。でも、脚本を読んで文句なしに気に入ったし、ポール・エプワースも色々面白いアイデアを出してくれてたから、気が付いたら、これをやらない手はないって思うようになったのよ。あらすじに合わせて曲を書くことは本当に楽しかった。私にとって初めての経験だから、凄く面白かった。ストリングスを録音した時は、人生で最も誇らしく感じた瞬間だったわ。60歳になった時には、きっと髪を梳かしながら『私は昔ボンド・ガールだったんだから』なんて言ってるはずよ!」アデル

さて、シリーズ23作目にあたる『007 スカイフォール』、今回はMI6長官でありボンドの上司にあたる「M」の過去が解き明かされ、ボンドとの関係も怪しくなってしまうという。そしてMI6本部も標的にされ……。

おっと、これ以上はここでは明かせないが、文句なく楽しめる展開であることは間違いない。アデルがこの作品のために書き下ろした主題歌がどんな場面で使われるのかにも注目しながら、映画館でじっくりと楽しんでほしい。

『007 スカイフォール』
2012年12月1日(土)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
配給:ソニー・ピクチャーズ
監督:サム・メンデス
製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン
出演:ダニエル・クレイグ、ハビエル・バルデム、ジュディ・デンチ、ベレニス・マーロウ、ナオミ・ハリス、レイフ・ファインズ、ベン・ウィショー ほか

アデル、アルバム『21』
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BGJ-10107 \2,490(tax in)
ボーナストラック4曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付
アデル日本公式サイト: www.adele21.hostess.co.jp

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◆『007 スカイフォール』特設サイト
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