【ザ・ローリング・ストーンズ50thスペシャルインタビュー】ミックジャガー「いつだっていちばん新しい曲が俺のお気に入りだね」

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止まらず、惑わず、流されず、50年にわたり歴史を牽引してきたザ・ローリング・ストーンズ。偉大なる50周年を記念し、ここにスペシャルインタビューをお届けしよう。全3回にわたってお届けするインタビュー、その第一弾はミックジャガーへの直撃インタビューである。

◆ザ・ローリング・ストーンズ画像

──あなた方の新曲「Doom And Gloom」は、最新アルバムに当たる『GRRR!~グレイテスト・ヒッツ1962-2012』に収められていますね。バンド全員で再びレコーディングのためにひとつの部屋に集まったとき一番強く感じたのはどんなことですか?

ミック・ジャガー:全員が同じテンポで演奏する(笑)…音楽だから当然演奏する(笑)。一緒に演奏して、本気になって演奏して、曲を覚えて、それぞれが自分のパートを解釈して自分なりのスタイルで表現していく。だけどレコーディングして、完成したものは言うまでもないが、ある種の加工品なわけだ。映画みたいなものだね。テレビの生放送とは違う。持っている機材を使って好きなだけのことができる。最近は特に凄いね、どんなことだってできる。大きな違いだね。生の素材をひとまず揃えたらそれを好きなように料理すればいい。でもサウンドを記録した時点ではプレイしたそのままの音がありのままに聴こえる。まあ当たり前だ。でも実はそうじゃなくてもいいんだ。レコーディングを初めて経験した時から録ったままの音だったことなんて1度もない。レコーディング・スタジオっていうのはそれ自体がまるごと一つのでっかいツールみたいなもので、ミュージシャンが最高のプレイをして、みんなで協力して、納得できるまでできるように作業する…そういう場所だ。ザ・ローリング・ストーンズは長くやってきているからそれは簡単なことだけどね。俺たちは本当にいいパターンを見つけることができたし、全員が同じグルーヴを共有しているからね。そしてそのあとはオーヴァー・ダビングの作業に進むわけで、だからいきなりやって来てドカドカ演って終わればさっさとさようならっていうわけじゃないんだ。まるで違う。

──なぜザ・ローリング・ストーンズというバンドはこんなにも長く続いているのでしょう?

ミック・ジャガー:いい質問だけど、そいつに答えられたことは今まで一度だってない。ひとつ言えるとしたら…自分では説得力のある説明だと思っているんだけど、ザ・ローリング・ストーンズはずっとうまくやってきたバンドだってことだろうね。もちろん浮き沈みはそれなりにあったけれども、大きな成功を収めているし、とても人気がある。もしもザ・ローリング・ストーンズが皆から支持されていないバンドだったら、間違いなくとっくに消滅していたと思うよ。だから、今まで続いている理由のひとつは熱心にサポートしてくれるオーディエンスがいてくれたからってことになるだろうね。

──あなたたちは常に時代と向き合いながら活動を続けてきました。バンドがスタートしたころを振り返って、自分たちはどんな存在だったと思いましたか?また現在のあなた方についてはどうでしょう。

ミック・ジャガー:バンドを始めたころはカレッジの学生を相手に演奏するブルース・バンドだった。あの頃は、なにか新しくて楽しいものを彼らに提供していたんだろうな。それからアート・スクールの学生たちの前でもプレイしたし、まあ俺たちはいわゆるカレッジ・バンドみたいなもので、ブルースと、それからリズム&ブルースやロックン・ロールもちょっとばかり演奏していた。まあレパートリーの大半はブルースだったけどね。だけどやがて人気が出始めてからは、まったく違った種類のバンドになった。ティーン向けのポップ・バンドになったんだ。随分と長いあいだ流行ものを好む若者たちのためのアイドルをやっていたように思う。だけどその後またカレッジ・バンドになった(笑)。まあ俺たちはいろいろなことをしてきたわけだ。うまく総括しているとはいえないな。だけど所変われば品変わるってやつだ。あ、そうだ、最近ある女性たちに会った。まだ15歳とか16歳とか17歳とか、とにかくそのくらいの年齢のころ、イギリス中、俺たちを追っかけ回していたっていう人たちだ、よくライヴも観に来てくれたし、サインしたりもしていたらしいんだが…彼女たちの姿が写っている結構有名なデイリー・ミラーの写真があってね、その写真のおかげで俺は彼女たちのことを微かに覚えていた。2週間か3週間くらい前にサマセット・ハウスで開催された写真展にその彼女たちが来ていたんだ。「私たちのことを覚えていないの」と言われたよ(笑)。で、俺は「いや、何となく覚えているよ」と答えた。そしてまた一緒に写真を撮って、サインをして…要するに彼女たちにとって、俺たちは今もアイドル・グループなんだな。反抗的な存在だとか何だとか、ザ・ローリング・ストーンズのことをそんな風に考えたことはなかったんじゃないかな。要するに人気のポップ・グループのひとつだったんだよ、俺たちは(笑)。

──あなた方が『Let's Spend The Night Together(夜をぶっとばせ)』のような"スキャンダラス"なレコードをリリースしたころとは世間の物事の考え方は大きく変化しました。そうした変化にローリング・ストーンズというバンドはどんな役割を果たしたと思いますか?

ミック・ジャガー:オブラートに包むようなことをしない、剥き出しで率直な表現と言えばいいかな…ストーンズは、そういうやり方を率先してポピュラー・ミュージックに持ち込んだ。俺たち以前に、あんなにも直接的な表現を歌詞に持ち込んだ者はいなかっただろうし、俺たちは一般の人たちが感じていたことをありのまま歌った。俺たちが現われる前は、甘ったるい音楽が主流で幅を利かせていたけれども、俺たちは自分たちがよく聴いていたブルースをヒントにしてもっとダイレクトなアプローチを取ることにした。そう、ああいう直接的で飾り気のないスタイルっていうのは自分たちがブルースを聴いていて感じていたことと大きく関係していたと思う。それにボブ・ディランのような影響力の大きいソング・ライターの存在もあった。そのときどきのイメージの影響も大きかったけれども、そのあたりについてはここで細かく触れ始めるときりがない。『CROSSFIRE HURRICANE』を観てもらえれば、どんな風に盛り上がっていったのか、よくわかると思うよ。しかし今思い出しても、ローリング・ストーンズや俺たちみたいなバンドに向けられた反感の大きさっていったらなかった。俺たちは誰でも知っているようなあんなバンドだった。そしてその俺たちに対する風当たりといったら、おそらく今では誰にも想像もつかないくらい凄まじいものだった。今の20代くらいの連中には「なぜその程度のことが」って話で大変な騒ぎになり、酷い目に遭った。今の人にはあの時代を想像してみることなんて到底不可能だろうね。当事者の俺だって、とても理解できないんだから。

──ローリング・ストーンズのメンバーとして、確かな達成感を覚えたときのことを教えてください。

ミック・ジャガー:ファースト・シングルを完成させたときは俺たちはやったんだって思ったね。チャート上の成績はまるで大したものじゃなかったけど、それでも俺は天にも昇るような心地だったな。本当に俺たちは有頂天になっていた。初めてイギリス・ツアーを行えたときも嬉しかったね。これもまあ、ロクな稼ぎにはならなかったけど(笑)。それでも劇場クラスの会場のステージに立てるようになったんだからね。ようやくそういう場所で歌えるようになったっていう達成感があった。それまでは200人くらいの規模のクラブが主体だったからね。俺たちを観に来ようなんて人はいないも同然だった。それが短期間でそこそこの会場でやれるようになったわけだから、これはもう大変な出世だったわけだ。最高の気分だった。あれ以上大きな成功を収められるなんて考えてもいなかったけど、達成感はあったね。

──「この人気は50年続くかもしれない」と思ったりしたことはありましたか?

ミック・ジャガー:いや、そんな風に思ったことは一度だってなかった。おそらくそんな風に感じたらいけないんだと思うね。そういう考えを持たなかったのがよかったんだろう。

──もしも今、20歳の自分に助言できるとしたらどんな言葉をかけますか?

ミック・ジャガー:「大丈夫。そのままがんばれ。心配は要らない。まだいける」

──ローリング・ストーンズというバンドが誤解されていると思う部分はありますか?

ミック・ジャガー:いや、もうこれまで散々あれこれ言われてきたからね(笑)。いろんな人がそれぞれ勝手に解釈するし。『CROSSFIRE HURRICANE』を観てもらえればわかるけど、本当にいろいろだ。眺めてみている側はそれぞれで違った感想を持つんだ。見たものから自分が好きなように解釈する。だけど俺は、これまでのことをいちいち訂正するためにここにいるんじゃないしね。まあ、要するに、誰もが過去にあったことについていろんな見方をするということだね。過去っていうのは失われて忘れ去られるテリトリーに属するものだからだよ。それを思い出そうとする時にいつも改変されるんだ。大概は自分に都合のいい方にね。誰にとってもそれは同じだ。記憶ってものは基本的にそういうものだと思うよ。決定的な欠点だな。誰もが過去にあったことについて違ったストーリーを語る。今日の朝ベッドから起きたときに経験したことでさえ、人によって違うことを言う…そんな具合だ。10人くらいの人に座ってもらって交通事故のフィルムを見せて、目にしたばかりのものを語ってもらうっていう実験があるだろう?皆、決して同じ話をしない(笑)。それぞれにまったく違ったものになっている。だから、俺たちの場合、人生すべてがそんな実験に使われているようなものか知れないな。

──あなたはこれまで刑務所に入ったりテレビでビショップに火炙り(詰問)にされたりと、権威と何度もぶつかってきました。旧来の価値体系との衝突で最も大きかったものは何ですか。

ミック・ジャガー:火炙りビショップとは旨そうだね(笑)。オリーブオイルかなんかをちょっと振りかけてくれればもっといい!まあ、あのレッドランズのドラッグ所持の逮捕っていうのはでっち上げだったと思うね。今じゃ廃刊になったニュース・オブ・ザ・ワールド、当時のオーナーはルパート・マードックじゃなかったけど、かなり嫌な連中の集まりだったよ。それとニュース・オブ・ザ・ワールドとつながっていた警察だ。最近あった共謀事件ととても似ているよ。警察の袖の下にいくら入ったとかなんとか…。連中は共謀してあの麻薬事件…めちゃくちゃな話をでっち上げたんだ。何の罪もない、何の変哲もないただの週末のパーティーだったんだけどね。まあ、ちょっとは奔放なところもあったにはあったけど、だからどうした?そもそも奔放なグループなんだからね。俺たちと似たような感じのは世界中にいくらでもいたよ。それをいかにもけしからん、事実とは全く違う事件に仕立てたんだ。文化的な週末だったのにね(笑)。田舎でのんびり週末を過ごしていたら社会に対する脅威みたいな扱いを受けてしまったってわけだ。どこもかしこもおかしな話だったんだよ。で、まあ、とにかく大騒ぎになったわけだけど、面白いのは…と言うかちょっと退屈かもしれないけど、新聞紙のタイムズの登場でがらりと状況が変ったことさ。タイムズといえばあのころは体制派の中でも中心的だった部類で、エスタブリッシュメントと言えばタイムズと言うくらいの存在だった。ほかの新聞とは違う位置にあった。信頼性は天下一品で…今ではそういうのはないんじゃないかな。アメリカでいうならニューヨーク・タイムズみたいな感じかな。そのタイムズが俺たちを擁護したことで、状況が一変したんだ。三流紙が騒ぎ立てている中に権威ある一流紙のタイムズが救援に現れて、何を些細なことで騒いでいるんだと一喝し、くだらない話を一蹴してくれたわけだ。

──あなたとキースとの関係はよく結婚生活に喩えられますが、最近の結婚生活はいかがですか?

ミック・ジャガー:よくそういうことを言う人がいるけど、まったくばかげていると思う、これ以上愚かな喩えはないと思うね。誰かと仕事をするってことは結婚生活とはまったく別物だ。キースとは長いあいだずっと一緒に仕事をしてきた仲だ。でも一緒に働いてきたんであって、結婚とまったく比較しようがない(笑)。どこをとっても別の話さ。結婚生活を経験しているからはっきりと言えるけれども、結婚には喩えられない。仕事上の関係だよ。仕事だからきついことはしょっちゅうあるし、しゃれにならないような、本当に頭にきてどうにかなりそうなときもある。それでもなんとか乗り切らないといけないんだ。そうするしかない。そういうものだよ。

──何度プレイしても飽きない曲はありますか?

ミック・ジャガー:ないね。毎晩、歌い、演奏していたらどんな曲だって絶対にいつか飽きがくる(笑)。だからセットリストをすっかり入れ替えたりするんだ。例えば20曲やることになっていて、そのメニューが気に入らないとすれば6曲くらいを取り替えてしまえばいい。大したことじゃない。

──個人的に思い入れの深い曲はありますか?

ミック・ジャガー:ない。いつだっていちばん新しい曲が俺のお気に入りだね。

──ザ・ローリング・ストーンズのショーに匹敵し得るロックン・ロールのコンサートなんてものがあると思いますか?

ミック・ジャガー:これまでに数え切れないほどのロックン・ロールのコンサートを観てきた。とはいえローリング・ストーンズのコンサートだけは、俺は観たことがないわけだけから(笑)、公平に判断することはできないな。すばらしいロック・コンサートはたくさんあるし、ローリング・ストーンズのコンサートももちろん素晴らしいと思う。俺たちは最高のショーを楽しんでもらえるようにできるだけのことをしているからね。とはいえ優れたらしいステージを披露するバンドはこれまでにも何組も存在したし、今も抜群のショーを見せてくれる連中がいる。このまま続いていってくれるといいと思うよ。

──11月のコンサートではどんなことが期待できそうですか?

ミック・ジャガー:正直なところまだ何とも言えないな。今のところ俺たちはリハーサルを始めたばかりだし、どの曲をプレイすることになるかもわからない。皆が知っているあのザ・ローリング・ストーンズのコンサートになることは間違いないよ(笑)。ミステリアスな何かが待っているとは思わない方がいいんじゃないかな。いつも通りのローリング・ストーンズのショーだろうからね。メニューが同じってことはないだろうしきっといいショーになるだろう。

──60周年記念に何か計画はありますか?

ミック・ジャガー:60周年…水晶玉でも覗いたほうがよさそうだね。水晶玉なんてないか(笑)。当てになりそうにないな(笑)。この質問の答えはまたの機会に取っておいた方がいいだろうね。

インタビュー:Mick Jagger/Mark Ellen interview~ミック・ジャガー/マイク・エレン
対訳:KR Advisory Co., Ltd.
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