【ライブレポート】シド、<TOUR2012 『M&W』>ファイナル、最後の言葉はナマ声の「愛してます!」
ステージ前に下りた紗幕に宇宙旅行を思わせる幻想的な映像が流れたあと、1曲目は最新アルバム『M&W』と同じ「コナゴナ」からスタート。七色のライト、巨大な三面スクリーンに展開される映像、そして「MOM」では女性サックス奏者が登場してステージ後方で激しく踊る、どこを取ってもゴージャスなステージだ。最初のMCでマオが叫ぶ。
「トーキョー! 今日はファイナルです! このツアーの動員数は約10万人で42公演。今日は集大成なんで、みんなも一緒に盛り上げて行きましょう!」
前半は「ドレスコード」や「いつか」など、『M&W』に収録されたポップかつアダルトなムードのナンバーが続くが、2004年の1stアルバム『憐哀 - レンアイ』収録曲「空への便箋、空への手紙」は三拍 子のリズムを持つ壮大な曲。明希のベースがどっしりと大地を固め、Shinjiの奏でるガットギターの音色が、みずみずしく美しいノスタルジーの世界へとオーディエンスを誘ってゆく。
再び下りた紗幕に水中の泡やマリンスノーのイメージが映し出され、その静けさを受け継いで始まったのは「糸」。たおやかな打ち込みのダンスビートが徐々に熱いバンドサウンドへと変貌し、続く「御手紙」では強烈な赤いバックライトが点灯して、メロウな曲調ながらビートの強い楽曲を力強く盛り上げる。三たび下りた紗幕には炎、機械、花、宇宙など様々なモチーフが映し出され、オーディエンスは固唾を呑んで注目。派手でカラフルなライブ序盤と比べて、ライブ中盤はじっくり見せる/聴かせる演出がばっちりはまっている。
さあここからは後半のスタートだ。オーバーオールに白いキャップというラフな格好に着替えたマオが、明るくポップな「冬のベンチ」を歌いだすと、白日夢から覚めたように会場全体が湧き上がる。前半のMCで「気合入りすぎて空回りしてます!」と告白していたマオもいつもの調子を取り戻し、ゆうやの衣装の話をきっかけに始まったMCタイムでは、マオとゆうやが絶妙の掛け合いを繰り広げる。
オモシロMCの次にゴリゴリにヘヴィな「S」を持ってくるのがシドらしい展開で、同じくヘヴィでパンキッシュながらジャズテイストなノリも取り込んだ「ゴーストアパートメント」、さらに明るくポップな「gossip!!」ではステージ左右から銀テープが発射される。曲調もムードも緩急自在、猛スピードで突っ走るジェットコースター状態でライブはいよいよ終幕へと突入する。
「オレと恋しようか、トーキョー!」
キック四つ打ちの明るいダンスロック「夏恋」は、メンバーよりもオーディエンスが主役だ。手を振り、足を踏み、一斉にジャンプして、国際フォーラムの床も天井も揺れている。シドのライブは“見せられる”だけではなく、聴衆参加型のライブだということがよくわかる。曲が終わってマオがピースサインを作ると、会場からも全員がピースサイン。本編14曲はスピーディーに、しかし濃密な約80分だった。
そしてアンコール。ゆうやのドラムがステージ前方にセットされる特別な形で、黒いツアーTシャツに着替えた4人が「Café de Bossa」と「cosmetic」を演奏する。と、ここで突然マオが「記念撮影したい!」と言い出し、まずはマオのケータイでパシャリ。本当に突然だったようで、カメラマンがなかなか登場しないこともネタにして、なごやかな笑いが会場中に広がる。アンコールの4人は本当にリラックスしていて、本当に楽しそうだ。
お楽しみはまだまだ続く。次はこの日がライブ初披露となった11月21日リリースのシングル「V.I.P」で、爽快に駆け抜けるビートと明るいメロディが楽しくて心地よいナンバーだ。さらにインディーズ最初期のナンバー「循環」では、歌詞にあわせてオーディエンスがくるくる回り、「one way」と、「エール」では♪君は一人じゃない♪という歌詞を全員が大合唱。そしてアルバム『M&W』のラストでもあるドラマチックで壮大な「残り香」を歌いきって、アンコールはすべて終了した。
…はずだったのだが、ここで奇跡的なハプニングが起きた。終演後のBGMが不意に途切れたことをきっかけに嵐のようなアンコールの拍手が湧きあがり、メンバー4人が額を寄せてしばらく話し合ったあと、マオが叫ぶ。
「みんなの声に押されたよ。もう1曲やります!」
始まったのは、予定にはなかった「Dear Tokyo」。結局アンコールは8曲というボリュームで、ライブの時間は2時間半を超えた。さらに、メンバーが去ったあとに一人でステージに残り、ツアーを無事に終え改めてファンへの感謝の言葉を伝えるマオに、この日一番と言っていいあたたかい拍手と歓声が降り注ぐ。最後の言葉は、ナマ声の「愛してます!」だった。
来年(2013年)は結成10周年ということで、1月に初のベスト盤、3月に今回のツアーのライブDVDリリース、そして10周年記念ライブの開催(詳細未定)も発表された。あたたかいオーディエンスの拍手と歓声に支えられ、シドはさらに前進を続けてゆく。
取材・文●宮本英夫
写真●江隈麗志
New Album
『M&W』
2012年8月1日発売
【初回生産限定盤A】CD+DVD
KSCL2091-2092 ¥4,500(tax in)
○初回豪華仕様:三方背BOX / デジパック2Discトレイ / 豪華ブックレット32P
○初回特典DVD TOUR 2012 『M&W』preview ライブ映像Ver. A
※初回AとBで収録内容は異なります
【初回生産限定盤B】CD+DVD
KSCL2093-2094 ¥3,800(tax in)
○初回特典DVD TOUR 2012 『M&W』preview ライブ映像Ver. B
※初回AとBで収録内容は異なります
【通常盤】CD
KSCL2095 ¥3,100(tax in)
○初回仕様あり
[収録楽曲]
1. コナゴナ
2. ゴーストアパートメント
3. 冬のベンチ
4. 糸
5. Cafe de Bossa
6. S(映画「貞子3D」主題歌)
7. MOM
8. いつか(TBS系「CDTV」オープニングテーマ)
9. ドレスコード
10. gossip!!
11. 残り香(日本テレビ系「スッキリ!!」テーマソング)
◆シド オフィシャル・サイト
◆ソニーミュージック
◆BARKS ヴィジュアル系&V-ROCKチャンネル「VARKS」
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