【インタビュー】ボカロP×歌い手が集結『BabyPod』完成!HoneyWorks「ニコ厨としての思いをCDにしたかった」
初音ミクのブレイクをきっかけに、「ボカロ」や「ボカロP」といった用語が世に広まるようになった昨今、絶好のタイミングで最高の作品が登場した。アルバム『BabyPod~VocaloidP × 歌い手 collaboration collection~』は、ニコニコ動画のエンタメ・音楽動画ランキングをにぎわすボカロPと歌い手が大集合し、有名曲のリミックスと新曲を混ぜ合わせた全13曲のカラフルな音絵巻で、トータル・プロデュースを手がけたのはコンポーザーのゴム、使徒と、イラストレーターのヤマコによるユニット・HoneyWorks(通称ハニワ)。ディープなニコ厨とライトなJ-POPリスナーとの壁をぶち破るパワーに満ちたこの作品について、ゴム、使徒の二人がたっぷりと語ってくれた。
――すごく中身の濃い作品になりましたよね。次から次へといろんな曲と声がたくさん出てくる、遊園地のような、あるいは幕の内弁当のような内容で。
ゴム:曲調が全然違いますからね。なかなかBGMにはできないです(笑)。
使徒:コンピレーション・アルバムっぽい、いろんな曲を詰め込みました。ほんと、ニコニコ動画をそのまま詰め込んだような感じなんですよ。
――もともと、どんな作品にしようというコンセプトを持って始めたんですか?
ゴム:新鮮さは出したかったですね。歌い手さんの組み合わせだったり、新しいアレンジだったり。
使徒:ほかのニコ系のCDではニコニコにあがっているアレンジを、変えずに使う事も多いと思いますが、今回は既存曲は全てアレンジして新しい表現に挑戦したかったんですよね。歌い手さん達も、今ランキングを賑わせているようなフレッシュな方々にもお願いしたりしました。
――思わず数えちゃいましたけど、ハニワの二人と、原曲とリミックスのPさんと歌い手さんを含めると、たぶん総勢41名です。
使徒:かなり連絡取りましたからね(笑)。大変でした。
――声をかけて、みなさん即答OKだったんですか?
使徒:そうですね。スケジュール的にちょっと…というのはありましたけど。赤飯には、それでも曲を送ってみたら「この曲はオレが歌いたい!」と言ってくれて、うれしかったですね。超ギリギリでしたけど、どうしても赤飯に歌ってほしいと思っていたので良かったです。
――プロデューサーというよりもファン目線で、「これ好き!」と思うのは、たとえばどの曲だったりします?
使徒:ギガPがリミックスした「Mr.Music」はすごい華やかになって、原曲のいいところを残しつつ、パーティー感満載の、1曲目にふさわしい曲になったと思います。ニコ厨ではない一般のリスナーの方が聴いても「いいな」と思えるダンスミュージックになっていると思います。
ゴム:「Mr.Music」に参加してくれているみうめさんは、ニコニコ動画内では踊り手さんとして有名なんですよ。そのみうめさんに「歌はどうでしょう?」と言ったので、本人はビックリしてましたけどね。収録に立ち会ったらとても上手くて、お願いして良かったと思いました。
ゴム:あと「千本桜」はすごい人気曲ですけど、スズムくんのアレンジで、原曲とはまた違った派手さや華やかさが出たと思います。歌い手の花たんも歌唱力を生かして、想像以上に力強く歌ってくれたので、素晴らしい仕上がりだと思います。
――「千本桜」「深海少女」「弱虫モンブラン」とか、こういう有名曲、人気曲をアンレジし直すのって、楽しいけどプレッシャーもあるんじゃないですか。
ゴム:アレンジをお願いしたボカロPさんは、「プレッシャーだなー(笑)」と、言ってました(笑)。
使徒:言われました(笑)。
ゴム:僕らも「弱虫モンブラン」をアレンジさせてもらいましたけど、一番大胆に変えたかもしれない。アップテンポにしちゃったし。
使徒:でも、ニコニコ動画はそもそも二次創作に寛容な場所なので、僕たち自身もそこにはあんまり抵抗がないです。たとえば僕らの曲をアレンジしてもらう際には、自由に「面白くやってほしい」という感じですね。原曲の制作者さんにはもちろん敬意を払っているんですけど、思い切り変えてみたいとか、この曲のいいところを僕らの方法で引き出してみたいという気持ちもあるので。そういう気持ちでやっていると楽しいです。曲が好きだからアレンジしたいと思うんですね。
――そういうところ、プロデューサー冥利に尽きるという感じですか。ほかに書き下ろしの新曲も5曲ありますけど、ハニワとして手がけた2曲については?
使徒:「SpaceDEV」は僕がメインで書いたんですけど、この時にギターを買いまして、レスポールなのでかなり重いロックな音で、バンドサウンドにしたいなと思ったんですよ。僕らは今までニコニコでけっこうかわいい曲を書いていたんですけど、もっと攻めてる曲を書きたいなと思ったことと、ギターを買ったことが重なって、ガツガツのサウンドにしてみました。
ゴム:「竹取オーバーナイトセンセーション」は、HoneyWorksのマスコットキャラとして作ってもらったクマとパンダを、MMD(MikuMikuDance)っていう3Dムービー制作ツールを使って登場させたくて作った曲です。2体あるからデュエットで、テンポは速めで、新しく買ったDTMソフトでテンションを上げながらサウンドの方向性を決めていきました。歌い手に関しては、そらるくんとろんちゃんだったら間違いないかなと。オクターブの組み合わせで歌える二人なので、キー設定も工夫しなくて大丈夫でした。
――石風呂さんの新曲「キックベースは終わらない」はゴムくんの独唱です。
ゴム:石風呂さんの作る曲の世界観は全部大好きなので、恐る恐る「僕が歌いたいんですけど」ってオファーしました。純粋にファンだったので、ニコニコで「歌ってみた」をやる感覚で、石風呂さんの世界観を自分なりに精一杯表現してみました。
――Nemさんの新曲「a sweet typhoon」は?
使徒:Nemさんは、ほかに「嗚呼、素晴らしきニャン生」も収録しています。カッコいいアダルトな曲に仕上がって、今回の収録曲にない曲調だったので、このアルバムに新鮮な一面を加えてくれました。
――アルバムのラスト曲「MUGIC」も新曲で、れるりりさんの書き下ろしです。
ゴム:1曲目の「Mr.Music」も、複数で合唱できるれるりりさんの曲だったので、近いイメージの曲調をお願いしたら、合唱の部分もしっかり作り込んでくれて、アルバムの最後にふさわしいテーマとなるように書いてくれました。今回、僕らが思いつく限りの一番楽しいと思えるアルバムを作っていく過程で、参加してくれる人がどんどん増えていったので、まさにそれを象徴する曲のようになったと思います。
――ジャケットもまた豪華で、絵師の方が6人も参加してます。そうか、この方々も足すと総勢47名ですね(笑)。
使徒:コンピということで、ジャケットも華やかにしたいと思ったので。ヤマコ(ハニワのイラスト担当メンバー)が中心になって声をかけてくれたんですけど、すごくいいものになったと思います。
――このアルバムを、どんなふうに聴いてもらえたらうれしいですか。
使徒:もちろんお客さん目線で作ってるんですけど、その前に自分たちが楽しんで作ったアルバムなので。ニコ厨としての「この人たちの組み合わせが聴きたい!」「この人にこの曲を歌ってほしい!」という思いを、そのままCDにしたかったので、同じ気持ちで聴いてほしいですね。
――ちなみに、ニコ動というフィールドで活動していて、J-POPとの距離を感じることはあります?
ゴム:音を作っていく上ではあんまり意識はしてないですね。特にJ-POPを意識することもなく、いいものはいいという気持ちを大事にしているので。ただリスナーさんに関しては、まだJ-POPとニコニコでは分かれてる気はします。
使徒:ニコニコのリスナーさんは、本当に細かいところを聴いてるんですよ。ミックスについてのコメントもあったりするので。J-POPでは、こちらに直接声が届くことは少ないと思うので。そういう面では、鋭さを感じたりしますね。
ゴム:そこでメジャーで出す意味というのは、沢山の方に聴いてほしいということがもちろんあります。ニコニコとJ-POPのリスナーの垣根みたいなものが、今後なくなっていくとは思うんですけど、そういう作品のひとつになれたらいいなと思います。
――実際、関係値のあるPさんや歌い手さんには、どういう人が多いですか。ニコニコを発表の場としてとらえているのか、ニコニコのやり方そのものが好きだからやっているのか。
ゴム:やっぱり、もともとネットが好き、MAD的文化が好き、ということが大前提なんだと思います。その上で、さらに精力的な活動をしている人もいて、刺激を受けたりしますし。
使徒:いろんな人がいるよね。
――ハニワの二人は、ニコニコのやり方が好きでやってるタイプですか?
使徒:タイプというか、二人とも古参っていうぐらいで(笑)みんな色んな考え方があると思いますが、とにかくたくさんの人に聴いてほしいですね。
ゴム:もともとライヴやバンドが好き、というところがスタート地点にあるので、良い意味で型にとらわれず、CDを作ったり、ニコニコで活動をしながら、これからも音楽を続けて行きたいですね。
――ニコニコの良さは、さっき言った二次創作も含めた制作の自由さと、レスポンスの速さですよね。制約が少なくて、誰でも参加できて、誰でもコメントができて。
ゴム:音楽には流行りがあるので、それに対する自分なりのアプローチをすぐに試せてすぐ反応がもらえるのがいいですよね。たとえば時事ネタなんかも入れられるし、そのスピード感も楽しみのひとつだと思います。
――この『BabyPod』、ひょっとして今後シリーズ化するんでしょうか。
使徒:いやー、けっこう大変だったんで(笑)。どうですかね。
ゴム:シリーズというよりも、自分たちでアレンジして、自分たちの好きな歌い手さんに参加してもらうという作り方は、今後も続けて行くと思います。そういった意味でも、今回は勉強になったし、すごくいい経験になったと思っています。
取材・文●宮本英夫
V.A.
『BabyPod ~VocaloidP × 歌い手 collaboration collection~』
2012年9月26日発売
CRCP-40329 ¥2,300(tax in)
1. Mr.Music(ギガP REMIX)/ れるりり×ロンチーノ=ペペ feat.
あり、鎖那、ブロンズアームドライブ、松下、みうめ、みどりいぬ。、ゆいこんぬ
2. SpaceDEV / HoneyWorks feat. 赤飯、ゴム
3. 嗚呼、素晴らしきニャン生(T-POCKET REMIX)/ Nem feat. 天月、コゲ犬
4. 竹取オーバーナイトセンセーション / HoneyWorks feat. そらる、ろん
5. キックベースは終わらない / 石風呂 feat. ゴム
6. ソラトケ(BabyPod arrange)/ ゆうゆ feat. あり
7. a sweet typhoon / Nem feat. amu、nero
8. 深海少女(ちゃむ REMIX) / ゆうゆ feat. のぶなが、グリリ
9. 弱虫モンブラン(HoneyWorks REMIX)/ DECO*27 feat. ヲタみん
10. 千本桜(スズム REMIX)/ 黒うさ feat. 花たん
11. からくりピエロ(アリエP REMIX)/ 40mP feat. halyosy
12. 初恋の絵本-another story-(まらしぃ REMIX)/ HoneyWorks feat. Gero
13. MUGIC / れるりり feat. あやぽんず*、柿チョコ、96猫、びびあん、わたあめ
『BabyPod~VocaloidP × 歌い手 collaboration collection~』発売記念 握手会
日時:2012年10月6日(土) 1回目13:00~ 2回目15:00~
会場:アニメイト新宿店
参加:使徒、ゴム、ヤマコ、Gero、halyosy
※参加方法の詳細はこちら⇒http://www.crownrecord.co.jp/artist/babypod/whats.html
『BabyPod~VocaloidP × 歌い手 collaboration collection~』発売記念イベント
日時;2012年11月25日(日)17:30~
会場;都内某所
イベント内容:HoneyWorks、歌い手、ボカロP 参加の“トーク&ミニライブ”
参加者:ゴム・使徒・ヤマコ・あやぽんず*・あり・ブロンズアームドライブ ・松下 ・れるりり・アリエP、halyosy、みうめ、ゆうゆ
※参加方法の詳細はこちら⇒http://www.crownrecord.co.jp/artist/babypod/whats.html
◆日本クラウン
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