摩天楼オペラ、タイトルに深い思いと真摯なメッセージを込めたメジャー1stアルバム『Justice』特集
摩天楼オペラ
メジャー1stアルバム『Justice』2012.3.7リリース
INTERVIEW
Vo:苑 ~sono~
苑:1曲目の「Justice」に“正しさは決められるものじゃない”っていう歌詞があるんですが、まさに今作のコンセプトがそこにあって。絶対的な正義が存在しない以上、他人に正しさは決められるものじゃない、自分の正義を貫いて生きていこうぜ!っていうメッセージですね。
苑:いえ、このコンセプトが決まったのは最後です。そもそもは2011年の夏に出したシングル「Helios」が出発点で、やっぱり時期的に意識せずとも震災について書いた作品になってしまったんです。それ以降、歌詞の方向性が自分でも気づかないうちにリスナーへのメッセージ・ソングだったり、リスナーを元気づけたいというものに変わっていって。アルバムの曲が出揃って歌詞を見返したときに、そのすべてを包括するものとしてリード曲の「Justice」を作ったら、結果“自分を信じろ!”っていうところに着地したんです。
悠:今まで、それぞれの楽曲に合わせてストーリーを描いていくスタイルだった苑が、よりリスナーに伝わりやすいテーマを意識するようになったのは聴いていてもわかったし、バンドにとっても大きなことだと思いますね。楽器隊としても、より想いを乗せてアレンジができるようになって、『Jusitce』では本当に楽曲と歌詞が一体化した感はあります。
G:Anzi ~anzi~
悠:たぶん、コッテリした曲があるぶん、スッキリした曲があるからでしょうね。例えば5曲目の「IMPERIAL RIOT」なんかは、すごくスッキリしていて歌が目立つぶん、普段ロックを聴かない人にもアピールできるだろうし。
苑:要するに、引き算が上手くなったんですよ。まぁ、大人になったってことかな(笑)。
悠:でも、盛るところではとことん盛ってる。その押し引きのダイナミクスはドラマーとしても一番に考えたところで、というのも今ってバンド・シーンが盛り上がってないというか、楽器を始める衝動に欠けている時代じゃないですか。じゃあ、その衝動に俺らがなってやろうぜ! っていうのを、ギターのAnziはじめ楽器隊で話し合ったんです。だから、インストゥルメンタルの「Just Be Myself」はテクニカルで派手なプレイがてんこ盛りだし、「アポトーシス」みたいに各パートが“ザ・王道”なプレイをした曲も初めてだと思う。
苑:やっぱり震災は大きかったですよね。あれは正義がどうとか、何が正しいっていうレベルの出来事じゃなかったし。その後、混迷を極めた日本の政治に対する苛立ちだったり、虚しさだったりも積み重なって出てきた歌詞でしょうね。そうやって人間の根底にある部分を歌っている曲だけに、PVの監督さんも“人間の黒い部分を表したい”とおっしゃってくださって、それで上半身裸のダンサーさんに登場していただいたんですよ。
Key:彩雨 ~ayame~
悠:詞の中身そのまんまって感じで、ちょっと怖いよね。でも、みんながダンサーさんと一緒に演奏しているのを後ろから見てる段階で、もう“これは絶対カッコいい映像になるだろうな!”って思ってた。僕たちだけじゃなく、ダンサーさんの内から湧き出る感情も凄いことになってるんで、そこも見ていただければ。
苑:僕なんてダンサーさんのお腹が顔についたり、鼻息がかかったりっていう距離でしたからね(笑)。
悠:しかも、そういうコッテリした曲って、曲順をよく見ると固まってる。前半と後半がコッテリで、中盤がスッキリ。
悠:シビアですよ! 音数が多いと多少のミスもグルーヴとして流せるけれど、例えば「AGE(アージュ)」なんかだと一音一音ハッキリしているので難しい。そもそも、これだけ遅いツーバス叩いたことないんですよ。
苑:歌詞では正義というものを皮肉っていて、わかりやすく言うと“戦争”ですよね。味方のために戦ってると言うけれど、それは向こうも同じこと……って。
B:燿 ~yo~
悠:“Justice”というコンセプトから導かれるのが、要するに“自分らしくやれよ!”っていうメッセージなので、“自由”っていうのは遠からずかな。その中でも、僕は「IMPERIAL RIOT」が好きなんですよ。ストレートな言葉で伝える苑のスタイルが良い効果を出していて、詞からも曲からもストレートにポジティヴさが伝わってくる。「Helios」ツアーのときからライヴで披露していて、ずっと発表したいと思っていた曲だったから、こんなにテーマがピッタリの作品に収録できて良かったです。
苑:そう読み取っていただけると嬉しいです。タイトルの「21mg」というのは、よく魂の重さが21gと言われているので、それよりもっと小さな人間であるってことを表しているんですけど、些細な日々を生きること自体に幸せがあるんだという考えに行き着くキッカケに、この曲がなれればいいなと。ただ、僕自身の推し曲は2曲目の「濡らした唇でキスをして」ですね。「21mg」を聴いて元気づけられることもあれば、今はこの艶っぽくてエロい曲を聴きたい心境(笑)。
悠:いろんな意味でコッテリしてる曲だよね。ちょっと僕には刺激が強すぎた(笑)。
Dr:悠 ~yu~
苑:この前、友達のヴォーカリストに“おまえ、何書いてるんだ?”って言われました。NoGoDの団長っていう人に(笑)。
悠:“俺が書いたらクビになる!”って(笑)。
苑:この曲の主人公は人生の終わりを目前にした老人で、人に愛された良い人生だったと納得して死ぬ……。つまり、自分の正義を貫いたってことで“Justice”なんですよ。今までレコーディングでは喉とお腹と口で歌っていたのが、この曲のサビではライヴのように全身を使って歌えたのも、ヴォーカリストとしては新たな挑戦でした。
悠:そのサビの前に唐突なテンポ・チェンジがあって、僕は大変だったけど(苦笑)。ただ、そこがスパッとキマると本当に気持ちいいし、楽曲のドラマ性を活かすも殺すも僕次第っていうのは、最近スタジオで叩いていても楽しいところです。
苑:もともとは震災の直後にアコースティック・バージョンとして発表したものなんですが、当時はリスナーの傍にいてあげるような感覚で作っていたんですね。それから1年経ってフル・コーラスにするにあたり、傍にいるだけでなく手を握って未来へ連れて行けるような、この先への“光”を意識して歌いました。
悠:今までバラードっていうとオーケストレーション主体になってしまいがちだったのが、あくまでバンドありきで楽曲を作っていけたのも、ひとつ大人になったところかなと。結果的に、今までにないくらい優しい曲になったと思います。
苑:僕と彩雨の音しか入ってませんからね。もともとは彩雨が作ってきたライヴのオープニングSEを、僕がすごく気に入って。女性の声とデジタル音が、完全に摩天楼とオペラを表現してるな! と思ったんで、ひとつの曲に仕上げました。親の勝手な正義で生まれた子供の悲劇っていう詞の内容も、偶然ながら今回のアルバム・テーマにピッタリで良かったです。
悠:彩雨本人も、まさかSEが曲に発展するとは思ってなかっただろうし、まさにボーナス・トラックならではのアプローチですよね。すでにライヴでも苑のソロ・コーナーとかで披露している曲なんで、いつかはバンドアレンジでもやってみたいです。
苑:もう、ジャンルだなってことですね。摩天楼オペラというひとつのジャンルがあって、それをシーンに認知させるための足掛かりに、このアルバムがなってくれるんじゃないかと。
悠:常に挑戦はしつつ、そこでも摩天楼オペラでしかできない表現というのはできているので、今後もより摩天楼オペラになっていく予定です。ちょっと予告すると、シーンには昔からあるけど今、やるの?って感じ。
苑:“へぇ~”って思う人からバンザイする人まで出てくると思う。春のワンマン・ツアーを、その次なるヴィジョンへの架け橋にしたいですね。あまり地方に行ったことのないバンドなんで、京都とか初めて行く場所があるのも楽しみだし、ファイナルの5月4日・赤坂BLITZでは、新しい発表もできたらいいなと。
悠:メタラーはもちろん、ロック好きでない方でも気に入っていただけるような楽曲も入ったアルバムなので、ぜひ手にとって。摩天楼オペラという新しい音楽を、一度試してみてはいかがでしょうか?
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