INORAN、これぞロック!<Hide and Seek>ツアー最終日レポ

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<Live Tour 2011 Hide and Seek>最終日@SHIBUYA AX公演の前日、INORANが出演したラジオの公開生放送で顔を合わせた。INORANの控室に入ると、余裕とも取れる笑顔のINORANがいた。ツアー中なのでもっとピリピリとしたINORANを想像していたので、少し意外ではあった。恐らくツアーが上手くいっているのであろうと想像できた。簡単な挨拶を済ませると、INORANはこう言葉を切りだしてきた。「明日のライブ、時間があったら観に来てください」と。いつも謙虚なINORANらしい言葉だった。返事をしようと口を開こうと思った時、INORANがまた言葉を発した。「否、明日のライブは絶対観に来て欲しいな!」と。今まで何度かライブの誘いをINORAN本人から受けたが、こんな風に言ってきたのは初めてなような気がする。やはり今回のツアー、本人も納得の出来なんだと、その言葉からも察することができた。

◆INORAN、Hide and Seekツアー~拡大画像~

12月10日、ライブ当日。前売りチケットがSOLD OUTしていたSHIBUYA AXは、僕が会場に着くと既に超満員。先ずはフロントアクトとして女性シンガーソングライターLunakateが登場し、会場を温める。

そしていよいよINORANの登場。“Are you ready SHIBUYA?”と会場を煽ったあと1曲目は「Nasty」でスタート。バンドの演奏も非常にタイトで、会場が一気に熱くなった。それでもこの1曲目のテンションは僕にとっては想定内だった。2曲目「No Name」。この楽曲が終わった時、意外な光景を目にした。INORANがステージの床に向かって唾を吐いた。僕は正直、身震いがした。

INORANは、知っての通りLUNA SEAというモンスターバンドのギタリストだ。そしてそのルックスもズバ抜けてイイ。これが妙な偏見を生んでいる。INORANの音楽がどんなに素晴らしくても、僕の周りにいる、特に男性は、「LUNA SEAのギターの人でしょ?」とか、「あのイケメンの人でしょ?」と、そのサウンドを聴きもしないのに変な色眼鏡を掛け、四の五のほざく。実にくだらない。偏見や障害を乗り越えるのがロックンロールであるはずなのに、ロックンロールが偏見を生みだしている。今年のINORANの活動を観れば、そんな偏見が如何にも馬鹿らしことは一目瞭然だ。

同じ音楽人であるFEEDERのTAKAは、海外で活動している音楽人らしく、INORANの音楽を受け止め、フジロックのグリーンステージにINORANを呼んだ。そのステージを観たものは皆、INORANのギター、そしてそのパフォーマンスにロックスピリットを感じ取ったはずだ。INORANは何故「No Name」のあと唾を吐いたのか? その真相を確かめてはいないが、僕にはそうした偏見に対するものだったように感じた。それだけINORANは、今回のツアーに手応えを感じているようだし、明らかに今までの彼とは違う。何かから解き放たれたかのように自由だ。それは決して糸が切れた凧のような、ということではない。自分をさらけ出すことに何の躊躇もしていないということ。自分がやっている音楽へのプライド。そしてその音楽を信じて集う音楽好きをハッピーにさせることへの責任。そしてそれを遂行することをただただ楽しんでいるということだ。

INORANが今回のツアーに際して「ライブの時間を世界一幸せにする」ということを言っていたのが実に腑に落ちる。彼には自信があるのだ。自分の音楽を聴く人を幸せにすることに。そしてそういうポジティブな力こそがロックであるということの自信が。

さて、ステージは3曲目「Super Tramp」へ。曲が終わるとMCで“最初からいいねぇ!あと50倍行こうか!それでも足りないだろう?”と煽ってみせる。その顔が実に幸せそうだ。

さらにライブ中盤、ボーカルもしっかりと聴かせる。個人的には今回のライブのハイライトが7曲目の「Can you hear it?」だった。元来ギターリストであるINORANは、やはりボーカリストとしての表現力が満足なものとは言い難いと正直思ってはいた。だがこの曲のINORANのボーカルは実に素晴らしかった。声、感情表現、そして演奏とのグルーブ…どれもが素晴らしく心の琴線に触れた。

終盤少し前、カバー曲2曲(「Smells Like Teen Spirit」「リンダ リンダ」)を披露し、終盤へ突入。その入り口となったのが「Rightaway」。この曲ではステージから飛び降り、会場の最前列に突っ込み、オーディエンスとハイタッチを繰り返しながら、文字通り会場と一体となって曲を歌い上げた。このパフォーマンスを観ていて「No Name」の後、INORANが吐いた唾の理由…先程書いたものが僕の勘違いであってもいいとさえ思った。もしそれが勘違いであるのならば、代わって僕が偏見に対して唾を吐いてやろうとさえ思った。それぐらい渾身のパフォーマンスだった。

ライブのエンディングは「時化」。全17曲、INORANもメンバーも完全燃焼をしたようだった。INORANは公言通り、SHIBUYA AXでの2時間を<世界で一幸せな時間>にした。そして、ステージを去る時“どうもありがとうございました”と丁寧に言葉を発し、深々と頭を下げた。その姿がまた格別に印象的だった。

先日、別の取材のためにボクシングの試合を観た。その時に解説をしてくださった元東洋チャンピオンがこう教えてくれた。“ボクシングでは強い者が勝つんではないんです。勝った者が強いんです”と。その言葉にならうならば“ロックンローラーが演奏するのがロックなのではない。ロックを演奏するやつがロックンローラーなんだ”。

INORANは紛れもないロックンローラーだ。それでもまだ、そのことを信じてない奴がいるならば、そのステージを観るといい。年内最後のチャンスは12月28日の<COUNTDOWN JAPAN 11/12>への出演となる。

文●ローリングストーン日本版シニアライター・ジョー横溝

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◆INORAN オフィシャルサイト
◆INORAN、“男の色気”満載のグラマラスでストレートなロック「Hide and Seek」大特集
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