DIR EN GREY欧州ツアー、暴動騒ぎ最中に行なわれたロンドン公演を経て、ボーフムでは自己ベスト?

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DIR EN GREYの欧州ツアー<TOUR2011 PARADOX OF RETALIATION>が佳境を迎えている。8月6日、ドイツの巨大メタル・フェス<WACKEN OPEN AIR>に出演した際の模様はすでにお伝えした通りだが、同フェスで思いがけず不本意な演奏に甘んじた彼らのライヴ・パフォーマンスは、その翌日にオランダのユトレヒトで行なわれた単独公演の際には、確実にこのバンド本来の切れ味と殺気を取り戻していた。<WACKEN OPEN AIR>での躓きが結果的に功を奏した、などという言い方は悪趣味な気もするが、どうあれ実際、コンディションを取り戻した彼らのライヴは、その後のパリでの二夜公演、ロンドン公演ではさらに過熱。その行程に同行していた筆者は、このバンドの底力を改めて思い知らされることになった。

◆DIR EN GREY画像

写真は、8月12日に行なわれたロンドン公演の際のもの。このフォーメーションから演奏曲を推察できる読者も少なくないはずだが、それ以上にライヴ自体の熱が伝われば幸いだ。ロンドンはおりしも暴動騒ぎの真っただ中にあり、一時は公演開催自体が危ういのではないかとの声もあったが、バンド一行がロンドンでの滞在時間を必要最小限にとどめたことも功を奏してか、現地滞在中に危険な場面に遭遇するようなことは一切なかった。

実際、会場の警備担当に話を聞いてみたところ、「普段よりもセキュリティの数を増やしているのは確かだが、目的のハッキリした若者たちだけが集うこのような場所で暴動は起こらないと思う」との回答が。また、何人かの観客と話をしてみると、多くのファンは暴動に対して恐怖心よりも「同じロンドンに住む若者として恥ずかしい」という気持ちを抱いているようだった。加えて、Dieはこの日の開演前に行なわれた現地メディアとの取材中、暴動に加担する若者たちへのメッセージを求められ、「誰にでも日頃からのフラストレーションや怒りはある。それを発散するための正しい方法を見つけて欲しい」と発言していたが、あるファンが終演後、まさにそれに呼応するかのごとく「俺たちにはライヴというフラストレーション解消のための最高の手段がある。暴れることしか能のないような愚か者たちとは違うんだ」と語っていたのも興味深かった。彼が「DIR EN GREYは最高だった。これで明日も頑張れる!」と上気した顔で付け加えていた事実も付け加えておきたい。

DIR EN GREYはこのロンドン公演終了後、ドイツのボーフムに移動。同地での公演は、京が「これまでバンドをやってきたなかで最高」とまで語るほどのすさまじいものとなった。筆者は同公演を最後に一行から離れて帰国しているが、彼らの欧州ツアーはその後も続き、イタリア、ハンガリーでの公演を経て、現地時間の20日夜にはポーランド公演を実施。さらに今後はドイツのベルリン、フィンランドのヘルシンキでの公演を経て、8月25日、ロシアのモスクワで今回のツアー終了を迎えることになる。帰国後には全国ツアーの開幕も待ち受けている彼ら。間違いなくそこで、我々は過去最強のDIR EN GREYを体感することになるはずだ。

文/撮影:増田勇一
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