柴田淳、「いま一所懸命に涙をこらえている人たちの、涙のスイッチのような歌になれたらいいな」

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8月3日に約1年9ヶ月ぶりとなるアルバム『僕たちの未来』をリリースした柴田淳。本作品は、「いまを歌うことしかできない」というしばじゅんが描いた、“いま”。新しい環境、世界を悲しみのどん底に叩きつけた東日本大震災、そして人生の半分をともに過ごしてきたという愛犬ビビアンの死。2011年にデビュー10周年を迎え、「精神的に大人になった」という彼女が、“いま”と向き合い、自らの音楽人生を振り返ってたどり着いた、ひとつの事実。

◆柴田淳 最新アーティスト画像、『僕たちの未来』ジャケット画像、「桜日和」イメージフィルム

そして、その事実に対する回答も、アルバムには収録されている。

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──柴田さんが曲を作る時に大事にしていることについて聞かせてください。

「自分にウソをつかないことと納得いかないものは作らないというのを目標にしています。これがとってもむずかしくて。やり続けていくと、良くも悪くも器用になってしまうんですね。器用になり始めている自分が最近イヤだなと感じていたので、今回のアルバムでは肩の力をぬいて、思うままに作ろうと思いました。」

──“現在(いま)”を歌うことも大切にされていますよね?

「それしかできないというか(笑)。今までの作品もそうですけど、常にその時の心のコンディションによって作品も変わってくるんです。失恋したら、つらい失恋の歌ばかりになるし、ハッピーだったらハッピーな作品になっちゃうという。あんまりハッピーなのはないですけど(笑)。その時その時の私情がものすごく色濃く入ってしまう作品しか作れないんです。だからこのアルバムもいまの私をそのまま収めた記録のような作品になりました。」

──特に今回は大切な存在をなくした時の想いを歌った曲が多いように感じたのですが?

「自分の意志で環境を新しく変えたことで気持ちがちょっと不安定になっていたなかで、さらに震災が起きたり、レコーディング中に人生の半分近くを一緒に生きてきた愛犬が逝ってしまったことも重なったからだと思います。震災でレコーディングが中断した時は、自分に何ができるのかをずっと考えていました。歌いに行くことはできるけど、あまりに直後すぎて被災地はその状態ではなくて。いつか時期がきたら歌いに行きたいと思いながら、いままでの自分の曲をふり返って気づいたんです。私には人を癒せる歌や人に呼びかける歌がないな。ひとりよがりの歌ばかりだなって。それで「うたかた。」ができたんですね。この歌で私は、昔なくした人のことを書いているけど、いま一所懸命に涙をこらえている人たちが聴いた時に思わず泣ける涙のスイッチのような歌になれたらいいなと。いつも歌詞はプライベートな世界に入って書く作業ですけど、今回は創作中に様々な人のいろいろなことを思いだしてしまって、毎日泣いていました。」

──アルバムのタイトルを『僕たちの未来』にした理由というのは?

「今年10周年で。デビュー当時の私やファンにしてみたら10年後はこの世の果てぐらいに遠い未来でした。常に私はいまを歌ってきたので、現在は10年前の私からみた未来。ずっと一緒に歩んできてくれたファンとの未来でもあるから“僕たち”にしたんです。」

──7年前、柴田さんは「ちいさなぼくへ」という歌で、夢や希望に溢れてた昔の自分の未来がこんないまの自分でいいのか? と自らに問いかけていましたよね。あの頃からみた未来でもある現在の自分をどう思いますか?

「かなり精神的に大人になったと思います。『ちいさなぼくへ』を書いた時は、一番つらい時でした。自分に起こる現象に対して、どうすればいいのかがわからずに呑まれちゃっていた。でもいまは、うまくいかないことがあっても、何でうまくいかなかったのかを分析して理解できるようになりました。ただつらかったあの頃も、すべて自分で決断してやってきたことなので、いま思えば未熟だった部分もあるけど、後悔はないですね。苦しんだり悩んだりしながら、自分の道は自分自身で切り拓いてきている気はしているので。」

取材・文/伊藤博伸

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柴田淳は、10月から全国ツアー<JUN SHIBATA CONCERT TOUR 2011>がスタート。同ツアーは、自身初となる札幌公演などを含む全国6か所6公演を予定している。


◆柴田淳 コメント映像
◆柴田淳 オフィシャルサイト
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