「WORLD SONIC NEWS VOL.15」デジタリズム「21世紀的な80'Sサウンド」

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今回は、ドイツのテクノ・エレクトロニック・デュオ、デジタリズムをフィーチャーします。ドイツはハンブルグ出身の“イェンス”と“イシ”のふたりからなるデジタリズム。時代の最先端をいくクラブ・サウンドをクリエイトする驚異のふたり組として注目を集めています。

◆デジタリズム画像

2006年にはフジロックで早くも初来日。2007年リリースのデビュー・アルバム『デジタル主義』は日本を含め、世界で大ヒット。ファンキーかつロック的なディスコ・ビートはロック・ファンにも評価されています。そんなデジタリズムの待望のセカンド・アルバム『アイ・ラヴ・ユー・デュード』がついにリリースされました。

そのアルバムのコンセプトやテーマについて、イェンスはこう話しています。

「デビュー・アルバム『デジタル主義』には宇宙的なテーマがあったけど、新作はもっと落ち着いてるんだ。“地上へと降り立った”とか、“地に足をつけた”って表現がいいのかな。成長もしたしね。僕たちにとっては確実にサウンド面で次のレベルに到達しているわけだし。“デジタリズム”というバンドとしての変わらない感性と、同時に現時点での最高峰なサウンド、さらにその先にあるモノも詰め込んでいるよ。ライヴやスタジオ作業での成長があってのリリースになるわけだから。デビュー作『デジタル主義』が完成した時はバンドじゃなかったけど、今回は2ピースのライヴ・バンドという意識を持って制作したんだ」──イェンス

彼らのサウンドは、クラブ・シーンの最先端をいくサウンドと評価されています。メンバーのイェンスとイシは自分たちのサウンドをどんな風に捉えているのでしょうか。「一言で表現してください」とお願いしたら、こんな答が返ってきました。

「空間的…?あ、一言か…メランコリック?エレクトロニック?全部をハイフンでつないで一言にしてよ」──イェンス

「イェンスがこないだ、いいことを言ってたんだ。的を得た感じで…オールドスクールで、80年代っぽいモノもあれば、90年代風なモノもあって…」──イシ

「“21世紀的な80'Sサウンド”!」──イェンス

時代の最先端をいく彼らは今の音楽シーンをどう感じているのでしょうか?

「時は止められないよ」──イシ

「いろいろバズが起こっているよね。なぜなら楽器やツールが安くなってきて、誰でも簡単にエディットやDJが出来る時代になっている。レコードをスピンする必要もなくなったし、USBスティック1つで何もかもが手軽になったし。映像もそうでDVDなどを簡単にミックスが出来る時代。そういった時代になり大勢の人々が音楽を作り、いろいろなところでプレイしている。それが数年前の音楽シーンと比べた時にいちばん感じる大きな違いかな。そうなってくるといろいろなモノにフィルターをかける必要が出てくると思う。そうでないと簡単に同じサウンドになりえるし、消耗されるようになってしまう」──イェンス

「僕は少し寂しくもあるんだ。僕たちの時代はレコード店にいくと必ずいいレコードは何かをレコメンドしてくれる人がいた。言うならば指導者のような人がね。昨今はそういった優良レコード店はなくなってしまって、いい音楽を紹介してもらえる機会がない。そういった機会っていうのは皆が思っているよりも重要なんだ。正しくいいサウンド・プロダクションに出会うためにも。そういった指導者やレコード店は必要だったりする。細かいことかもしれないけど、僕にとっても重要なことさ。誰が前座でDJやってるだの、何がいちばん流行っているとかね」──イシ

「それはいいポイントだ。確かに変な前座DJが多いんだよね。クラブがオープンしたばかりなのに前のめりでハード・テクノをかけるようなね。ただそれって、せめるわけにはいかないんだよ。本人たちがどうしたらいいかなんて学んでいないわけだから。レコード店に行って、先輩DJと話す機会がなかったり、レコードをレコメンドされたりしてない世代だから、ダウンロードしたモノだけをひたすらかけるといった、心ない感じの選曲にどうしてもなっているんだよね。残念だけど…」──イェンス

「とはいえ、まだ少しはそういったレコード店や人はいて、僕たちはずっとサポートし続けている。たまにウェブの掲示板とかを読んでいると興味深いのが13歳と15歳の子供がレコード店に行っていたりもするんだ。ほとんどの子が“ジョイ・ディヴィジョン”って誰って時代にね。そんな時代だけど、たまに驚かされることもある。きっちりと過去の音楽を理解しようとしているってね。音楽の歴史を学んでいる人たちだね」──イシ

「学ぼうと思えば学べるさ」──イェンス

「もちろん人それぞれ自由なんだけど、必要なんだよね。そういった指導者のような人が」──イシ

“いい音楽を伝える指導者”、確かに必要だと思いますね。デジタリズムは世界中をまわって、パフォーマンスを行なっています。そんな中で日本のファンをとても高く評価していますが、どんなところが素晴らしいのか、イェンスはこう話しています。

「日本のファンが特に興味深いのは、ステージでダンスするとそれを真似してくれるし、曲間で静かになったりするところだね。拍手するというよりも、次に何を演奏してくれるんだろうって顔をして、バンドに対してのリスペクトが感じられるんだ。とてもクールだと思う」──イェンス

デジタリズムは7月、苗場スキー場で開催されるフジロックに出演するため、日本にやってきます。そんな彼らは日本に来ると必ずすることがあるそうです。

「何でも売っているような店に行って、ショッピングすることは欠かせないよね」──イェンス

「日本でしか見つけれない物っていっぱいあるからね」──イシ

「そうだね。後はいろいろな食べ物を食べることに挑戦するのさ。焼肉やしゃぶしゃぶとか、いろいろね」──イェンス

「日本のチョコレートはユニークなものが多いよね。キットカットの味とか、ヨーロッパではなかなかない味のものとかね。素晴らしく美味い!お土産でドイツに持って帰るとそれはもうヒーローさ。日本に行ったら買ってきてとねだられるんだ」──イシ

日本のチョコがドイツで人気だとは知りませんでした(笑)。デジタリズムのフジロックに出演日は7月30日、レッド・マーキーに登場することになっていて、“60分の激しいスポーツをやるようなギグにする”と、意気込んでいます。

そんなデジタリズムのふたりから、みなさんにメッセージです。

「フジロック2011で会おう。僕たちの新しいアルバムをリリースした直後の新しいライヴ・セットになるはずなので、凄く楽しみだよ」──イシ

「クレイジーになろう」──イェンス

彼らは10月の単独公演も決定、東京は10月7日、渋谷のAXでパフォーマンスを行ないます。ライヴに行く前はセカンド・アルバム『アイ・ラヴ・ユー・デュード』をしっかり聴き込んでお出かけください。

text by kenji kurihara:UNITED PROJECTS

『アイ・ラヴ・ユー・デュード』
TOCP-71111 2,300円

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