vistlip、驚くべき進化を遂げた7thシングル「SINDRA」特集

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7thシングル「SINDRA」 2011.6.1 release

INTERVIEW

――Yuhくんのギターが7弦だったり、瑠伊くんのベースが5弦だったり、vistlipにはこだわりを感じる要素がたくさんあるので、まずはそれぞれの「こだわり」を聞かせてもらえますか?

Tohya(Dr):こだわりしかないですからねぇ(笑)。僕の場合はDW(有名ドラムメーカー)ですね。一回、DWで叩いたら、やめられなくなって。2010年3月に赤坂BLITZでライヴをやったんですけど、その前の自分の誕生日に、自分への贈り物ってことで買ったんですよ。そのBLITZのライヴはDVDにもなるし、レンタルのドラムってどうなの?って思って。自分のセットが欲しくて楽器屋に行ったら、今使っているDWが白く輝いていたんです。“今日、誕生日ですよね?”って感じでそのドラムセットが話しかけてくるんですよ。“そうなんです。叩いてみてもいいですか?”って聞いたら、“誕生日だから特別だよ”ってドラムが言うので叩いたら、“♪ハッピーバスデー to me~”って感じで(笑)。相棒として連れて帰っちゃいましたね。

――(笑)Tohyaくんはドラムを担当しながら曲も書くよね。

Tohya:ドラムだから自分が目立つ曲を書くのではなく、あくまでもメロディを一番大事にしていますね。ヴォーカルをやっていた経験もあるくらい歌が好きなんですよ。

智(Vo):Tohyaはヴォーカルが一番前にいなければいけないという心を持って取り組んでくれているので、そういう点ではいつも俺を立ててくれるんですよ。

――瑠伊くんは5弦ベースを使いはじめてどのくらい?

瑠伊(B):今のバンドから使いはじめたんですけど、使いはじめたきっかけは、vistlipの楽曲は5弦ベースじゃないと再現できないからです。5弦ベースってネックも太いし、普通のベースよりも大抵は大きいんですけど、今使っているベースはボディが小さいんです。ステージングもしやすいし、音のパワーもあるから気に入ってますね。

――5弦じゃなければ曲に必要な音域を確保できないんだね。

瑠伊:はい。自分の理想はドッシリとしたベースが弾けるベーシストなので、シンプルなベースも好きだから、取り回しの良い4弦にしたいという思いもあるんですよ。5弦ってベースっていうよりも別の楽器という考え方のほうが合ってるかなと思うんです。音作りも苦労するし、逃げたくなることもある(笑)。4弦はバランスもいいですし、今の曲たちを4弦で弾けるようになるのが一番良いんです。それにはテクニックが必要だから、勉強中なんですよ。

――海くんのギタリストとしてのこだわりエピソードは?

海(G):うちは5弦ベースがいて、7弦のギターがいて、さらにそのチューニングが下がっていたりして、自分のギターもそれに準じてチューニングは下がってるんですよ。でも自分のギターは、普通に使って良い音が出るように作ってあるから、チューニングを下げると色んなところで歪みが出るんです。そこをなんとかごまかしてやってたんですね。でもどうしても引きずられたり、音が埋もれたりするようになっちゃったんですね。それで、うちのバンドの音源を全部聞いてもらって、Yuhがこういうタイプのギタリストだって話を伝えて、必要な音が出るギターを作ってもらったんです。前よりはすごくやりやすくなりました。

――ツインギターっていうところで、自分の役割も考えますよね?

海:俺は基本的にYuhにはギターヒーローになってほしいんですよ。vistlipを聴いてギターをはじめたとか、CDを聴いて弾きたくなるようなフレーズは全部Yuhに弾いてほしいんです。だから、俺は安定した綺麗なコードを弾いて、暴れ回って。俺はコーラスもするので、難しいところはYuhが頑張ってくれよって。本来の嗜好的にもそっちのほうが好きだから。

――そのツインギターの相方であるYuhくんは7弦のギターを使っていますね。

Yuh(G):6弦でダウンチューニングでもいいんですけど、ソロを弾きたいじゃないですか。そうすると、チューニングを下げると音域が足りないんです。もっと上を弾きたいし、でも下も弾きたいってなると、しょうがないんですよね。

海:音の幅が彼には必要なんですよ。

Yuh:あっちも行きたい、こっちも行きたいなので。

――欲張りなんですねぇ。

Yuh:そう。欲張りなんです。昔は技巧派でいたいと思っていたんですね。今は上手くなりたいという気持ちはもちろんあるんですけど、結局ギターって、俺の中では上手い下手っていうよりも、下手でもすごいフレーズが良かったら、それでいいと思うんですよ。プレイヤースキルよりもセンスが大事だなって。もちろん上手くなろうという前提はありつつ。そういうギタリストになりたいですね。

――智くんの声は音域が広いよね。

智:鍛えられたんです(笑)。以前の音源を聴くと、だいぶ下なんですね。メンバーみんな、高音域が好きなんですよ。自分たちじゃ歌えないくせに、“智のここがいいから”って。俺の良い声を知ってくれているというのはいいことなんですけど。それでどんどん上の音域を目指すようになって、出るようになってきたんですけど。

――智くんは作詞もしますよね。

智:やっていくうちにどんどん変わって行ったんですけど、最初は聴いても聞き取れないくらいの歌詞の詰め込み具合だったんですよ。1個の音に対して2個も3個も発音するような。それをすると何を言ってるかわからないけどリズムは出るので、すごく気持ちいいと思っていたから、作詞のときにそういう手法をとってたんですね。それを踏まえて作詞をしていたんです。

――洋楽的ですね。

智:はい。“歌詞が聞こえたほうがいい”というのは周りに言われてたけど、それは俺っぽくないって避けていたんです。でも、久々に今回のシングル「SINDRA」を録って自分で聴いたときに、結構シンプルにまとまっているので、歌詞が聞こえてきたんですね。感情も込めて歌っていたので、自動的に言葉も聞こえたんだと思うんですけど、“歌詞が聞こえたほうがいい”っていうのはこういうことなのかなって。今までの自分と、そのことをわかってしまった自分と、今後はどうやって共存させていこうかと思ってますね。リズムを大切にした歌詞というのは自分の一番のこだわりだったから、そこは今試行錯誤している時期ですね。

――「SINDRA」に収録された「July VIIth[Re:birth]」の歌詞もすごく伝わりやすいけど、そういう意識のせいでもあるのかな。

智:そうですね。この曲は、一番最初に出した音源にも入っているんですよ。結成記念日が7月7日なので、“July VIIth”というタイトルなんですけど、それをもう一回作るということに対して、どんな風に進化していなければいけないかなって。そこに込められた思いも強かったし、ファンに伝わって欲しいというところもあって、発音も変わっていったんだろうなと思いますね。昔のバージョンは聴いててもよくわからないんです(笑)。入ってこないっていうか。でも意識したっていうよりも、感情がそうさせた部分が大きい。思いは伝わってほしいし、その思いによって声も変わって行くのは凄い発見ですね。

――「SINDRA」の制作はどうでしたか?

智:アレンジはすべて自分たちでやっているんですけど、それぞれが感情を大切にしてくれましたよね。楽器だからと言って、ヴォーカルの下でサウンドを作るだけではないと思うんです。それぞれ思いがあるから。じゃあ、楽器からも感情が伝わるくらいのものはほしいよねって話していて。今回から、みんなそこをちゃんと表現出来ているんです。

――今回から?

智:そう。例えばYuhとは前のバンドでも一緒にやってたけど、ヴォーカルのメロディーにギターを絡めたがるんですよ。未熟だったときには邪魔だったりもしたんです。vistlipをやっていくうちに、ヴォーカルを邪魔しないような位置に引っ込んでしまっていたんですけど、今回は、どこに行けばうまく絡めるのかってすごく考えて。再びそこを目指すようになったんですね。

Yuh:うん。それに気付かされましたね。レコーディングも仕事をこなしている感じになったり、フレーズを作るだけで満足ってなったりすることもあったんですけど、今回は、電子機器とはいえ、伝えられるって思いはじめて。もっと自分もギターで歌っていこうって、「SINDRA」に気付かされました。

智:Yuhは歌うギタリストだし、瑠伊も曲によっては歌うベーシストだから、これからどう共存していくのか(笑)。

――そんな時に歌うベーシストである瑠伊くんは、この曲ではどういうアプローチを考えた?

瑠伊:今までの自分を全部詰め込んだっていうか、改めて名刺代わりの自己紹介みたいなベースが弾きたいなと思いました。それを目標としてやってたんですけど、出来上がったものを聴いたら、良い意味で自分の癖も出ているし、今の段階では出来たかなって。自分を全部出し切れた感じはしますね。

Tohya:「SINDRA」のベースに関してはメチャクチャ動いてるんですけど、ぜんぜん邪魔してないし、イヤにならないし、よくこれをまとめられたなぁって、今日も聴いてて思いましたね。ベースが耳につくので追いかけるんですけど、決して他のものを邪魔してないから、良い自己紹介になってますよね。

海:俺の場合は、瑠伊は“わりと動くんだな”、Yuhは“やってくるんだろうな”ってわかったから、極力邪魔をしないように(笑)。この曲はストレートさがなくなっちゃうと勢いを殺しちゃうと思ったので、できるだけドラムに準ずるというか。

Tohya:ドラムも“邪魔しないように”という点では似ていますね。安定感があって支えられる音で、支えられるフレーズで。そこにいて当たり前なんですけど、土台となるようにしっかり。単純なビートでも、バンドと合わせてやったら、そこに面白みがないことなんてなかったし、合わせたときに、そっちのほうが楽しいんですよね。特に、打ち合わせとかなかったのに、曲をアレンジする段階で、抑えるところは抑えて、出すところは出そうっていうのができたんですよ。今までわかっていなかったようなことが、わかっていて、作品として格段によくなったと思いますね。

――「SINDRA」というタイトルは辞書にはないですよね。造語?

智:はい。映画の『シンドラーのリスト』の主人公に自分達を重ね合わせた部分もあって、それは単純に音楽というもののおかげで、どんどんやるべきことを見つけていくっていうところでリンクさせてみようかなと。

――行間で読ませる歌詞ですね。メッセージが詰まっていて、なおかつ「ただいま。」という言葉も入っているから、ライヴで久々にファンと会えるということを想定しているのかなと。

智:そうですね。7月7日のファイナルのZepp Tokyoで“「ただいま。」”が完了するのかなって。そこからまた始まるんだろうなってことは考えてましたね。“「ただいま。」は約束した場所で”っていう一行が、Zeppにつながっていくのかなって。いいものを見せたいと思うので、楽しみにしててほしいですね。

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