ビクターヘッドホンの高解像度サウンドに迫る

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Kenichiro NishiharaがHA-FXCを聴く

クラブミュージック世代のジャズのスタンダードとして、そして良質のポップミュージックとして、JAZZYの新時代を切り拓く高い質のサウンドを生み出すKenichiro Nishihara。この音のプロフェッショナルが「HA-FXC71」「HA-FXC51」をチェック。プロが感じるポイントはここだ!

付属のヘッドホンから替えたときに充実感がありそう

――普段はどういったタイプのヘッドホンを使っていますか?

Kenichiro Nishihara:こういうインナーイヤーヘッドホンではないタイプのものですね。

――好みなんていうのもあるんでしょうか?

Nishihara:そうですね。音作りの面で言えば、音がクッキリわかるものというか。このヘッドホンは割と近いと思うんですよ。ヘッドホンって、良く聴こえるものと、悪く聴こえるものというのがあって。それで、僕は悪く聴こえるヘッドホンというのも持っていて、それで良いサウンドなら、良く聴こえるヘッドホンなら、より良く聴こえると思うので。

――なるほど。良く聴こえるという定義は音それぞれがしっかり聴こえるということですか?

Nishihara:ばっちり分離感が良いというものもあれば、まとまり感が良いというものもあると思うんです。高音までしっかり伸びているものだと、人によってはうるさかったり、耳に痛く感じてしまうこともあると思うんです。でも別の人にとってはクリアで明確っていう感想になることもあるだろうし。好みの世界ではあると思うんですが。

――そういう点でいうと、西原さんとしては、このHA-FXC71/51はどうですか?

Nishihara:まったく種類の違う音ですよね。HA-FXC51のほうは低音がかなりしっかり出て、デフォルメ感があるくらい。本当には低音が聴こえなくても、それを感じられるくらいしっかりしていますよね。そのせいで音のまとまりがすごく良い。HA-FXC71はすごく分離感が良いですね。

――先ほど、試聴しながら「好みによっては、少し安いHA-FXC51が良いって言う人もいるかもな」とつぶやいてらっしゃったのはそういうことなんですね。聴く音楽のジャンルによっても使い分けが出来そうですか?

Nishihara:そうですね。ダンスミュージックのような人工的に低音域を強調して作られたものだったら、HA-FXC51のほうがしっかり低音が聴こえて良いかなと思います。高音も痛くないですしね。でもジャズとか、生音をしっかり聴きたいというようなサウンドであれば、分離感が良いHA-FXC71ですね。空間も感じられますし。個人的にはHA-FXC71が好きですね。

――普段聴く音楽によって変えると良いわけですね。

Nishihara:だと思います。オーディオって、高いものが良くて、安いものが悪いという印象を多くの方が持ってると思うんですね。自分も、“これは高いんだから良いだろう”って思ったりするんですけど。そうじゃなくて、ある程度の品質を満たしていると、そこから先は好みの世界が広がっているんじゃないかなと、最近思うんです。100万円のヘッドホンが存在するかわからないですけど、高いものには高いものの良さもあるとは思うんですけど、音に関しては好みなんですよね。レコードを聴いたり、昔のソウルとかファンクとかそういうものを聴く人も多いと思うんですね。マニアじゃなくても。そういう昔の音楽はハイが出ているとか、ローが思いっきり出ているとかではなく、もう少しナロウなレンジだと思うんです。もう少し狭まったレンジというか。HA-FXC51はレンジが狭い感じがしたので、そういう昔の音源にも合ってると思いますよ。あと例えばiPhoneとかに付属しているヘッドホンからこれに替えたときの音の変わり方で充実感がありそうですね。

ステレオからの音楽とは別物として楽しめそう

――装着感はどうですか?

Nishihara:ベストポジションを探さなければいけないですね(笑)。でないと音の聴こえ方が変わるから。でも、そこが見つかると周りの音が遮断されるので、耳栓のようになりますね。

――だからこそ、耳の奥で音の広がりが良いんですよね。

Nishihara:そうだと思います。しかも、そんなに奥に入って行くような感覚はないから、押し込んでも怖くはないですね。

――ベストポジションが見つかると、防音された部屋で良いステレオの前で音楽を聴いているような気分になりますね。

Nishihara:なりますね、そういう気分に! 周りの音が聴こえないぶん、ボリュームを上げなくてすみますね。ヘッドホンをしていて自分が一番気にするのは、周りの音がうるさくて、ヘッドホンのボリュームをどんどん上げちゃうことなんですよ。気付いたらマックスで聴いていたりして。それが普通になっちゃって、続けると難聴になったりするんですよね。このヘッドホンだと、周りの音をしっかり遮断してくれるから、小さい音でもしっかり聴けるっていうのは良いかなって思います。

――しかも音漏れもしませんでしたよ。

Nishihara:それは電車の中でも安心ですね。デザインもシンプルですね。

――根元の方のコードが太いので、絡みにくいんですよ。

Nishihara:へぇ~。鞄の中でよく絡まって、大変ですもんね。あと、思ったんですけど、今、僕は坊主にしてしまったのであまり関係なくなってしまったのですが(笑)。髪が長いときって、頭にかけるタイプのものをすると髪に変なクセがつくんですよ。それがイヤだなって思うこともある。仕事でインカムをつけることもあるんですけど、それでもやっぱりヘアスタイルがおかしくなる。でもインナーイヤーヘッドホンだとそれがなくて良いですね。髪が長くても短くても関係ないから。

――確かに! あと頭にかけるタイプだと、ちょっと大げさな感じになっちゃうのがイヤですよね。

Nishihara:なりますよね!

――インナーイヤーヘッドホンで音が良いものは重宝しそうですね。

Nishihara:ヘッドホンに多くを求めるのはどうかなと思うんですね。自分の好みで見切る部分も必要。気に入った慣れたものを使うのも一つの考え方ですよね。本当にこだわるなら、家のオーディオにこだわるとか。あと、音が変わると気分転換になると思うので、いくつかヘッドホンを持つっていうのも良いかもしれないし。

――このヘッドホンなら、どういう使い方をしたいですか?

Nishihara:さっき言われていたように、電車の中で使うのに良いと思いますね。新幹線で移動中のときとか。あとは飛行機で試してみたいですよね。ノイズキャンセルのあるヘッドホンって、した瞬間に違和感があるんですね。密閉感を感じたり。それが苦手だったりするので、この商品のようにバチッと耳栓のように耳を塞げるのは良いかもしれないですね。音漏れが少ないから、レコーディングでモニター用に使うのも良いかもしれない。ヘッドホンでも漏れるものがあるんですよ。これなら大丈夫かも。

――音のプロならではの意見ですね。

Nishihara:耳たぶって全員違う形じゃないですか。この耳たぶへの反射で音がする方向を確認したりしてるんですよ。僕の耳と誰かの耳を交換したとしたら、どこで音が鳴っているかまったくわからなくなってしまうらしいです。だから、こういう風に耳に突っ込むインナーイヤーヘッドホンは耳の奥で直接音が鳴るぶん、耳たぶが関係ないわけだから、普段、ステレオから鳴ってる音楽とは別物だと思うんです。そういう意味では、それぞれ音質があるから、その音質が気に入るということが大事なんでしょうね。普段ラジカセで音楽を聴いているような人だったらHA-FXC71で伸びやかな音を聴いて、“あぁ、こんな音が入っていたのか”って気付いたりすることもあると思うんです。逆にハイファイオーディオで音楽を聴いている人は、HA-FXC51を使って、“こういう音の一体感もあるのか”って新しい発見があったりするかもしれないですよね。

Kenichiro Nishihara

◆プロフィール
1996年よりファッションショーの選曲を始め、東京・パリコレクションなど多岐にわたるショーやイベントで音楽ディレクションを担当するほか、webやCMなど幅広い分野の音楽で作曲・プロデュースなども手がける。自身が主宰する音楽レーベルUNPRIVATE ACOUSTICSから2008年にリリースされた7inchシングル「Neblosa」、1stアルバム「Humming Jazz」は鮮やかなヒットを記録。2010年1月には2ndアルバム「LIFE」を発表。JAZZYの新時代を切り拓く、シーンの最重要人物として、2010年12月15日に究極のメロウ・グルーヴの新作『Rugged Mystic Jazz for TALISKER』をリリース。

『Rugged Mystic Jazz for TALISKER』
VICL-63698 2010年12月15日リリース

JVCWill
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