BEGIN「心が広がったとき、オモトタケオがおりてきた」

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デビュー20周年を迎えた沖縄出身の3人組BEGINが、島唄を収めたアルバム「ビギンの島唄(うた)オモトタケオ3」を9月8日に発売した。「オモトタケオ」とは、BEGINが島唄を作るときに現れる心の住人。アルバムについてボーカルの比嘉栄昇、ギターの島袋優、ピアノの上地等に聞いた。

◆BEGIN画像

アルバムには、浜へ誘うような口笛と軽やかな三線の音が印象的な「爬竜舟(はりゅうせん)」、沖縄の方言を盛り込んだ愉快な「でーじたらん」など9曲を収録。柔らかな風、どこまでも広がる青空を感じるが、制作に入る前は何もする気が起きないくらい打ちひしがれた時期があったという。

理由は、鳩山内閣退陣のきっかけとなった米軍普天間基地問題だ。比嘉は「テーブルがひっくり返るぐらい驚いて、無気力になった。歌よりもニュースに目が向かっている沖縄で、沖縄の歌を唄っても誰が聞くのか。歌もできないし、作る気も起きなかった」と振り返る。

固くなった心をほぐしたのは、毎年夏に主催する<うたの日コンサート>だった。ステージで共演した石垣島の先輩バンド「白百合クラブ」の姿に心が動いた。比嘉は「結成した1946年からこれまで、劇的に変わった沖縄の中にいながら、変わらずに歌い続けている姿にしびれた。そこを大事にしなくては。オレはなにも見えていなかったんだって反省しました」と語る。

悶々とした3人の心が広がったとき、オモトタケオがおりてきた。島袋は「住宅を改装したスタジオで一日中三線を弾いていました。制作からレコーディングすべてを沖縄でこなし、沖縄で生まれた言葉、においなどを収められたと思う」と自信を見せる。

シリーズ2作目に収録したライブの定番曲「オジー自慢のオリオンビール」の続編とし「アンマー我慢のオリオンビール」も誕生。上地は「宴会で盛り上がる男衆の横で、忙しい台所を切り盛りする女性陣に焦点をあてた曲。終盤ではオリオンじゃんけんという遊びを作ったので、ライブで盛り上がりたい」と笑顔を見せた。

アルバムは「涙そうそう」「島人ぬ宝」などを生んだ人気シリーズの第3弾。比嘉は「沖縄の人だけじゃなくて、みんなの島唄になれば」と願っている。

取材・文・撮影●西村綾乃
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