ビッフィ・クライロ「俺たちは、実験室よりも体育館のほうが似合う」
ついにこの土・日に開催を迎える<サマーソニック2010>。各日、各ステージに必見のアーティストたちがぎっしりとラインナップされているが、僕が自信をもって薦めたい出演バンドのひとつが、英国からやってきた3人組、ビッフィ・クライロだ。実験精神とプリミティヴな魅力の双方を持ち合わせた彼らの音楽は、じっくりと“鑑賞”するのではなく、むしろ“同調”して最高のエキサイトメントを味わうためのもの。去る3月に行なわれた一夜かぎりの来日公演でも極上の“熱”を味わわせてくれたが、この7日には東京会場のマウンテン・ステージ、8日には大阪会場のスカイ・ステージでのパフォーマンスが控えている。
今回は、前回の来日時に行なったインタビューのなかから、今回のライヴにも直結するものと思われる興味深い発言をいくつかご紹介したい。ちなみに3人のメンバーのうち、ベン・ジョンストン(Dr、Vo)は残念ながら欠席。彼と双子の兄弟にあたるジェイムズ・ジョンストン(B、Vo)、そしてフロントマンを務めるサイモン・ニール(Vo、G)が取材に応えてくれた。
◆ビッフィ・クライロ画像
――代官山UNITでの一夜かぎりのライヴ(3月1日)は、大盛況でしたね。
サイモン:素晴らしかった! 会場も気に入ったし、何よりも、まだ発売から間もない最新作、『オンリー・レヴォリューションズ』からの曲をみんなが把握してくれていて、一緒に歌ってくれたことが嬉しかった。「東京に戻ってこられて良かった!」というのが本音さ(笑)。
ジェイムズ:うん。家から遠く離れた東京で歓待してもらえて嬉しかった。客席には見覚えのある顔もいくつかあったし、おかげでホームシックにかからずに済んだよ。
サイモン:しかも、えらく暑かった。たぶんライヴの前後では体重が何キロか違っていたはずだと思う(笑)。
ジェイムズ:あははは! 間違いないね。
――開演時から皆さん上半身ハダカでしたよね。それは単純に暑かったから?
ジェイムズ:基本的にはそうだね。
サイモン:それに加えて、俺たちはみんなをビックリさせることが好きなんだ。だから肌寒くて誰もがジャケットを着てるような時期の野外フェスとかでも、わざとハダカで出て行ったりする。「クレイジーだ!」とかよく言われるけど、「ええ。わかってますけど何か?」って感じ(笑)。でもね、実際ハダカになると燃えるんだよ。精神的にも肉体的にもね。
ジェイムズ:だから、オーディエンスも脱いだらいいと思うよ(笑)。
――なるほど。ところでさきほどタイトルが出た通算第5作、『オンリー・レヴォリューションズ』について。今作にはストリングスやホーン・セクションも導入されていて、3人で完全再現するには無理な部分も多々ありますよね?
サイモン:無理があるとは思わないな。そもそも曲はどれも、いつものリハーサル・ルームで作ったものだし。俺たちは、アルバム作りとライヴはまったく別の作業だと思っているんだ。ある意味、聴き手を別世界に連れて行くのがアルバム。それを完璧なものにするためには、デコレーションもする。だけど俺たちはそれをやりすぎてはいないし、どの曲にも核の部分には、ライヴに直結するエネルギーやスピリットというものがあるからね。大きな会場で、ゲストたちを配した大所帯で演奏したことも過去にはあるし、日本でもいつかそういったショウをやってみたいとは思うよ。だけど正直、3人だけで演奏することの楽しさには到底及ばないところがある。なにしろ俺たち、これまで15年近くも一緒にやってきたんだ。俺は2人のことを他の誰よりも信頼しているし、ここにストリングスの名手5人が来てくれたところで、俺にとって彼ら2人以上に不可欠な存在にはなり得ない。
ジェイムズ:それは俺にとっても同じ。そういった付加価値というのは、ライヴをベターなものにするためにかならずしも不可欠なものではない。何よりも大事なのは“その瞬間のエネルギー”だと思うからね。それをいかにうまく炸裂させるかで、そのライヴが素晴らしいものになるかどうかが決まるんだ。
――CDでしか聴いたことがない音楽ファンのなかには、あなた方のことを、“頭で音楽を作っている人たち”のように解釈している人たちも少なくないかもしれません。学校でたとえるならば理科室で音楽を作っているような。だけど一度でもライヴを観れば、実は体育館が似合うバンドなんだということがわかるはず。
ジェイムズ:そのたとえ、最高!(笑) 確かに俺たちは、実験室よりも体育館のほうが似合うバンドだと思う。
サイモン:同感だな。確かにスタジオでの作業というのは科学っぽくもある。すべての細部を顕微鏡で確認するような性質のものでもあるからね。ライヴではつまらないミステイクが思わぬ効果を呼ぶこともあるけど、レコードは完璧に緻密じゃないといけない。ただ、俺たちはそういう作業に手をつける前に、まず自分たちの肉体で曲を作っていく。その段階で完璧な満足を得てから、あれこれと頭を使いながら構築していくんだ。
――ビッフィ・クライロの立ち位置自体が、とてもユニークですよね。具体的に言えば、『NME』でも『KERRANG!』でも表紙になれる数少ないバンドのひとつというか。
サイモン:まさに。俺たちはインディー・ロック・バンドでもなければ、メタル・バンドでもない。ところがポップ・ソングも持っていれば、ハード・ロックに負けない攻撃的な曲もある。ポップ系のフェスにも出られるし、ヘヴィ・ロック中心のフェスでも過剰に浮くことがない。そうしたポジションについては、なんていうか…正直、ラッキーだと思ってる(笑)。
ジェイムズ:お堅いラジオ番組とかでも普通にかけてもらえるし、荒っぽいオーディエンスにも受け入れてもらえる。そんな立ち位置を楽しんでいるよ。ただし、「どこにでもアクセスできるような音楽」というのを計算して作っているわけじゃないんだ。計算せずにやったことが、思わぬ好結果に繋がっている。実際にはそういうことなんだ。
彼らの発言には他にもまだまだ興味深いものがあったのだが、それは今回の『サマーソニック2010』でのパフォーマンスに実際に触れたうえで、また機会を新たにお届けしたいと思う。とにかく今回、この革新的かつ本能的なロック・トリオのステージには注目して欲しい。
文/撮影 増田勇一
今回は、前回の来日時に行なったインタビューのなかから、今回のライヴにも直結するものと思われる興味深い発言をいくつかご紹介したい。ちなみに3人のメンバーのうち、ベン・ジョンストン(Dr、Vo)は残念ながら欠席。彼と双子の兄弟にあたるジェイムズ・ジョンストン(B、Vo)、そしてフロントマンを務めるサイモン・ニール(Vo、G)が取材に応えてくれた。
◆ビッフィ・クライロ画像
――代官山UNITでの一夜かぎりのライヴ(3月1日)は、大盛況でしたね。
サイモン:素晴らしかった! 会場も気に入ったし、何よりも、まだ発売から間もない最新作、『オンリー・レヴォリューションズ』からの曲をみんなが把握してくれていて、一緒に歌ってくれたことが嬉しかった。「東京に戻ってこられて良かった!」というのが本音さ(笑)。
ジェイムズ:うん。家から遠く離れた東京で歓待してもらえて嬉しかった。客席には見覚えのある顔もいくつかあったし、おかげでホームシックにかからずに済んだよ。
サイモン:しかも、えらく暑かった。たぶんライヴの前後では体重が何キロか違っていたはずだと思う(笑)。
ジェイムズ:あははは! 間違いないね。
――開演時から皆さん上半身ハダカでしたよね。それは単純に暑かったから?
ジェイムズ:基本的にはそうだね。
サイモン:それに加えて、俺たちはみんなをビックリさせることが好きなんだ。だから肌寒くて誰もがジャケットを着てるような時期の野外フェスとかでも、わざとハダカで出て行ったりする。「クレイジーだ!」とかよく言われるけど、「ええ。わかってますけど何か?」って感じ(笑)。でもね、実際ハダカになると燃えるんだよ。精神的にも肉体的にもね。
ジェイムズ:だから、オーディエンスも脱いだらいいと思うよ(笑)。
――なるほど。ところでさきほどタイトルが出た通算第5作、『オンリー・レヴォリューションズ』について。今作にはストリングスやホーン・セクションも導入されていて、3人で完全再現するには無理な部分も多々ありますよね?
サイモン:無理があるとは思わないな。そもそも曲はどれも、いつものリハーサル・ルームで作ったものだし。俺たちは、アルバム作りとライヴはまったく別の作業だと思っているんだ。ある意味、聴き手を別世界に連れて行くのがアルバム。それを完璧なものにするためには、デコレーションもする。だけど俺たちはそれをやりすぎてはいないし、どの曲にも核の部分には、ライヴに直結するエネルギーやスピリットというものがあるからね。大きな会場で、ゲストたちを配した大所帯で演奏したことも過去にはあるし、日本でもいつかそういったショウをやってみたいとは思うよ。だけど正直、3人だけで演奏することの楽しさには到底及ばないところがある。なにしろ俺たち、これまで15年近くも一緒にやってきたんだ。俺は2人のことを他の誰よりも信頼しているし、ここにストリングスの名手5人が来てくれたところで、俺にとって彼ら2人以上に不可欠な存在にはなり得ない。
ジェイムズ:それは俺にとっても同じ。そういった付加価値というのは、ライヴをベターなものにするためにかならずしも不可欠なものではない。何よりも大事なのは“その瞬間のエネルギー”だと思うからね。それをいかにうまく炸裂させるかで、そのライヴが素晴らしいものになるかどうかが決まるんだ。
――CDでしか聴いたことがない音楽ファンのなかには、あなた方のことを、“頭で音楽を作っている人たち”のように解釈している人たちも少なくないかもしれません。学校でたとえるならば理科室で音楽を作っているような。だけど一度でもライヴを観れば、実は体育館が似合うバンドなんだということがわかるはず。
ジェイムズ:そのたとえ、最高!(笑) 確かに俺たちは、実験室よりも体育館のほうが似合うバンドだと思う。
サイモン:同感だな。確かにスタジオでの作業というのは科学っぽくもある。すべての細部を顕微鏡で確認するような性質のものでもあるからね。ライヴではつまらないミステイクが思わぬ効果を呼ぶこともあるけど、レコードは完璧に緻密じゃないといけない。ただ、俺たちはそういう作業に手をつける前に、まず自分たちの肉体で曲を作っていく。その段階で完璧な満足を得てから、あれこれと頭を使いながら構築していくんだ。
――ビッフィ・クライロの立ち位置自体が、とてもユニークですよね。具体的に言えば、『NME』でも『KERRANG!』でも表紙になれる数少ないバンドのひとつというか。
サイモン:まさに。俺たちはインディー・ロック・バンドでもなければ、メタル・バンドでもない。ところがポップ・ソングも持っていれば、ハード・ロックに負けない攻撃的な曲もある。ポップ系のフェスにも出られるし、ヘヴィ・ロック中心のフェスでも過剰に浮くことがない。そうしたポジションについては、なんていうか…正直、ラッキーだと思ってる(笑)。
ジェイムズ:お堅いラジオ番組とかでも普通にかけてもらえるし、荒っぽいオーディエンスにも受け入れてもらえる。そんな立ち位置を楽しんでいるよ。ただし、「どこにでもアクセスできるような音楽」というのを計算して作っているわけじゃないんだ。計算せずにやったことが、思わぬ好結果に繋がっている。実際にはそういうことなんだ。
彼らの発言には他にもまだまだ興味深いものがあったのだが、それは今回の『サマーソニック2010』でのパフォーマンスに実際に触れたうえで、また機会を新たにお届けしたいと思う。とにかく今回、この革新的かつ本能的なロック・トリオのステージには注目して欲しい。
文/撮影 増田勇一
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