世界的版画家、斎藤清の作品がCDジャケットに

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世界的版画家、斎藤清の作品が初めてCDジャケットを飾ることが決まった。

◆斎藤清作品画像(ソライロネオン・ジャケ写)

斎藤清(1907-1997)は現代版画の創世記を支えた文化功労者。伝統的な木版画技術を土台に、斬新な構図と色遣い、単純化されたモダンなフォルムなど現代的な要素をとりいれた普遍的な作品を数多く遺し、今でもその人気は衰えることがない。海外からの評価も高く、日本の現代版画の地位向上に多大な貢献を果たした画匠である。

一方、CDをリリースするのはソライロネオンというアーティスト。2007年に自主制作で発売した作品がタワーレコードオンラインのインディチャートで1位となり、翌2008年にはiTunesで無料配信された「中央線」が1週間で30,000ダウンロードを超えるなど、早耳なリスナーの間でじわじわとその名を広めてきた。1960~1990年代のロックやフォークを土台に、電子音楽や民族音楽などの様々な要素を取り入れた多様な音楽性を持ったバンドで、シンプルだが独特の節回しを持ったメロディと、鋭い示唆やユーモアに富んだ歌詞、文学性と叙情性に溢れた楽曲は聴けば聴くほどに心に染み込んでくるような不思議な魅力がある。

そんな彼らの新作は、自らの持つ多種多様な音楽性を存分に引き出したと言える全18曲。世界の歴史や文学、民間伝承などもヒントにワールドミュージックのスパイスを効かせ、まるで世界一周旅行のように自由で多彩な楽曲になっている。これらを3曲ごとに6つの世界観にまとめ、「アーカイブス♯1~♯6」の名の下に、7月から毎月1タイトル、つまり全6タイトルを連続してリリースしていくという。1枚目の「#1」は7月21日、2枚目の「#2」は8月11日より、全国のタワーレコード先行で発売となる(各3曲入り、税込500円)。

これらはアルバムのためのシングルではなく、今後アルバムに収録する予定はないとのこと。従来のシングルの概念に捉われず、それぞれに濃密な世界観が詰まった6枚でひとつのシリーズが完結するというもので、例えるなら全6巻からなる文庫本のような形態だ。

そして、この「アーカイブス♯1~♯6」のジャケットに、前述の木版画家、斎藤清氏の作品が使用される。作品の使用許可を得るまでの交渉には時間がかかったが、メンバーや制作担当者の熱烈なオファーが通じ、今回の企画が実現したとのこと。ちなみに「#1」のジャケットとなる氏の作品「凝視(二匹の猫)」は、なんと1952年(昭和27年)の作。当然メンバーもまだこの世に生すら受けていない時代のものだが、その魅力は今なお色褪せることはない。これを含む斎藤氏の6点の木版画が、ソライロネオンの6枚のCDを力強く、鮮やかに彩る。

今は亡き現代版画の巨匠と、とあるインディーズバンド。不釣り合いに見える両者だが、時間と分野を超えたこのコラボレーションを実現させたのは、常に新鮮な感覚を持ちながらも、決して時流に流されない作品を世に残したいという想いだろう。

どこか遠くを見つめるかのように重なり合った「2匹の猫は、50年以上の時を超えてつながった、両者の想いを象徴しているかのようだ。

「#1」
2010年7月21日発売
※「アーカイブス」第1章。時空を超えた新たな旅の始まりを高らかに告げる1枚。

「#2」
2010年8月11日発売
※「アーカイブス」第2章。無情の世界に流されていった数々の想いが甦る、悠久の物語。
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