ビクター「HA-FXC71」「HA-FXC51」特集

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ビクター「HA-FXC71」「HA-FXC51」特集 驚きの高音質再生を実現した革新的ヘッドホン

オレに聴かせろ!

オレに聴かせろ!

「HA-FXC71、これがね、結構すごいんすよ」と、スタッフが口を揃えて言ってきた。普段、音に対してはあまりいい加減なことを言わない連中だけに、そんなこと言われると、気になっちゃうじゃないか。

「ちょいと私にも貸してくだされ、レポすっからさ…」とC調な条件を軽~く口にして、半ば奪うようにHA-FXC71を手にしてみた。

いつもの愛用ヘッドホンと差し替えてiPodをがりがりとプレイバック。いつも使っているヘッドホンとの装着感の違いに違和感を感じていたのも、最初のほんの数分だけ。気付けばただただ、いろんな音楽を聴いて楽しんでいるだけの自分に気づき、「いかんいかん、サウンドの傾向や特性をレポートするんだった…」と、音自体に注力。…と、そのうち、ただ音楽を聴いているだけなことに気付く。あ、いかんいかん…、そんな状態を何度か繰り返してしまった。

自分の不甲斐なさを正当化するような論説となってしまうのだけど、ついつい音楽に引きずられてしまうという時点で、もうこいつは◎評価なのだ。音楽が魅力的に響き、音楽の楽しさがそのままオーディエンスに届いていけば、音楽に意識を奪われるのは自然の理。心地よい音世界をさりげなくオーディエンスに提供する、それ以上の答がどこにあろうか。

機器としての存在が限りなく透明になることが、音楽再生ツールの最終到達の理想郷のはずだ。究極は、川のせせらぎ、山の木々の振れる音、波音、そして強烈な雷…のように、恣意的な指向性を持たない音環境を得ることなのだから。

音楽を聴くのが楽しくなってしまう、また音楽をじっくりと聴きたくなる…そんなイヤホンこそ、手に取るべき重要なポイントだと思う。音楽不況と言われる昨今だが、今の時代、失ったのは音楽への興味ではなく、単に音楽をしっかりと楽しませてくれる環境だと思うんだけど。

さて、HA-FXC71。意識的に聞いて感じたことは、ローとローミッドの出方が強烈だけど自然なこと。エコー成分を大胆にカットしたような、例えばELO「Fire on High」のギターカッティング部、あるいはプリンス「KISS」のボーカルの生々しさ部分に、数十Hzから数百Hzの押しの強さをはっきり感じることができる。あるいは、スネアにかかったゲートリバーブのブワッと襲い掛かるような音圧は、そのまま鼓膜になまめかしきヌルヌルした音の質感をも伝えてくれる。

リミッターのバシバシかかったベードラと極悪ウルトラハイゲインのギターサウンドに、かき回されるようなヘビーなサウンドなどは、このイヤホン、とてつもなく気持ちいい音像を作り出してくれる。クラブを意識した100Hzあたりを下品なまでに突いたキックの音も、しっかり再生してくれるから凄い。このあたりのサウンドデザインは、シリコンイヤーピースの素材とその作りが大きく影響しているのではないだろうか。

中域の出方は、これまた自然。非常にナチュラルで、ともすると何の個性もないが、それこそが再生機器の美学。同様に高域も地味だ。一聴して耳を引くハイがシャキシャキ出るような派手な設計のイヤホンを好む人には物足りないかもしれない。それは何でも七味唐辛子を鬼振りして食べる辛味マニアに似て、エスカレートにお気をつけいただきたいところ。できれば、このHA-FXC71あたりを音基準にできれば理想なのだが。

最後に老婆心ながら小言を2つ。ひとつは装着に関して。

イヤーピースは3種類の大きさが用意されているが、耳への装着次第で、使用感も外音ノイズの大きさも、そして音圧感などが大きく変わってしまうのがカナル型の宿命。半端な装着状態では本来の半分もその音質が発揮できず、あまりにヘッドホンがかわいそう。最初はびっくりするくらい奥まで突っ込むもの。逆にしっかり装着できると回りの音を遮断してしまうので、外での使用はくれぐれもご注意を。

もうひとつは、そのイヤーピース。オプションでかまわないので、他素材のアクセサリーを出してもらえないものだろうか。装着感もさることながら、ローからハイまで音そのものに大きな影響を与えるのが、実はこの消耗パーツ。好みのサウンドとフィット感で使い分けたりこだわったりする楽しみがあれば、さらに音楽が楽しくなるんじゃないかな。

BARKS編集長

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