いい加減、人見知りを打破したいです。大切にできる人の幅を広げたいです。

――美里さんが“新しい扉”だと思えることって、どういうことなんですか？

美里：　自分の心が動くようなこと。それは、楽曲でもある。「昔のあの曲みたいだなー」って思うんではなくて、ね。もっと、心をまっさらにして「この曲歌いたい！」って思える曲に出会いたかった。

――でも、キャリアを積むってことは解析能力が上がるってことでもあるから、「この曲は、昔のあの曲が元になっているんだろうな」って即座にわかってしまうじゃないですか？

美里：　そうですね。だから、まっさらにすることの方が、むずかしいんですよ。よく「心をニュートラルにして」とか言いますけど、それがけっこうむずかしい。

――心をニュートラルにできた時に、共鳴する楽曲を選ぶ、その感性軸は、若い頃と変わってないですか？

美里：　どうですかね？　そこは自分ではわからないけど、候補曲を選ぶ時は、ものすごく集中して聴くから、疲れます（笑）。3時間くらい集中するので。私は、幸運にも素晴らしい作曲家たちと出会ってきたから、曲を選ぶ基準は厳しいと思う。というか、25年もやっているんだから、基準が身に付いてないと困りますよね？（笑）　私の基準が果たして売れるか？と言われれば、時代と合わないところもあるかもしれないけど、「いい」と思うその基準はブレてないと思ってます。

――あとは、今の自分のノド・声とのマッチングもあると思うんですよ。歌わずに25年経ったら、今の声ではないと思うし。

美里：　そこは本当にそうですよね。今はツアー期間ではないから、歌ってないんですけど、歌ってないと、肺の形が変わってきます（笑）。歌う用の身体になっている時ってあるんですよ。だからツアーの時は、だいたい午後の6時くらいにいい具合に声が出るように、持っていくような生活をしてますからね。そういうような生活が、今の声を作ってきたわけだから。

――ツアー期間が終わって制作期間に入ると、美里さんはどんなタイムテーブルになるんですか？

美里：　：あまり規則正しくはないです（笑）。小学校の頃から変わらなくて、締切り間際でないと宿題をやらないタイプですから。ぎりぎり派（笑）。「もっと計画性を持ってやってくれ」と、どこかで言われていると思います。1日1曲歌詞を書くとか、できるといいんですけどねー（苦笑）。

――ツアー期間以外のノドのケアに関しては、どうですか？

美里：　歌い手の人はどなたもやっているとは思いますけど、乾燥させないことですね。あとは、節目節目に発声の先生のところに言ってメンテナンス的なレッスンを受けることですね。「これは、発声にいいかも？」と思ったら、例えばパワーヨガとか、アレキサンダー・テクニークっていう骨と関節の動かし方を少し学んでみたり…ね。追究は終わらないです。

――もう1曲の「ぼくらのアーチ」はメッセージ・ソングですね。

美里：　世の中を見渡した時に、まだ「明るい」とは決して言えない感じじゃないですか？　そんな時でも、歩き続けていたいと思って書いた曲ですね。アーチって曲線じゃないですか？　私は曲線が直線よりも好きなので、優しい曲線をイメージしましたね。押さえて歌っていきながら、だんだんと上がっていく、歌手的には歌い甲斐のある曲になりました。最初は配信限定だったんですけど、「CDは出ないんですか？」という声がとても多かったので、急遽、今回のシングルに入れることになりました。3曲全部、タイプの違うものになったので、25周年にはふさわしいシングルじゃないかなって。

――なるほど。最後に、25周年目に、どんな気持ちで臨んでいきたいですか？

美里：　：やりたいことがいっぱいあります。未来に向かって音楽でアーチのようなものをかけたいと思うし、一個人としても充実した時間を積み重ねられればいいなと。あとは、いい加減、人見知りを打破したいです。「もういいです、ガラガラ～」と、すぐに心のシャッターが閉まりますから（笑）。あっ、だから言い換えます。「大切にできる人の幅を、広げたい」です。それができたら、本当にいいですね。

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