渡辺美里:デビュー25周年、輝いていた日々と大いなる未来を語る
渡辺美里
デビュー25周年 “今まで”と“これから”の渡辺美里に出会える両A面シングル
「ニューワールド ~新しい世界へと~/春の日 夏の陽 日曜日」2010年5月26日発売
デビュー当初は、新しい曲に出会うのが楽しくて、あれもこれもと吸収してましたけど、今は“歌の意味”を考えてる。
渡辺美里(以下、美里): 可愛いものですよね(笑)。「次はウェンディーズだぁ」なんて言いながら、ファーストフード店やらケーキ屋さんやらをはしごしていて、そこに、当時の事務所の社長が通りかかって、ひと言。「美里、これから打ち合わせとレコーディングするぞ!」って。今は六本木ヒルズになってしまい、影も形もなくなった“セディック”というスタジオで「I'm Free」をレコーディングしました。その頃、MTVが盛り上がりを見せていたから、私が今でも所属しているレコード会社のエピックでビデオ・コンサートをやりはじめていた。当時のエピックでは、ポップ&ロック系の女性シンガーは、私が初めてだったんですね。でも、まだ「I'm Free」のプロモーション・ビデオは、ない。そこで当時のエピック・スタッフとひと言ふた言やり取りをしながら、私の目のアップを撮ってくれて、それを映像素材にしましたね。
美里: そうですね。誰か人が関わってくれたことは、それがいいことであれ悪いことであれ、よく覚えてます。ビデオ・スタッフがすごく労力をかけて作ってくれたPVであったり、「美里、こんな曲ができたんだけど…」って聞かせてくれたシーンだったりは、印象が強い。一昨日、20年分の西武ドーム・ライヴの映像を見る機会があったんですけど、「あれ? 私、こんな衣装着ていたっけ?」って忘れているのもあった(笑)。自分で選んだはずなんですけど…。
美里: そうだと思います。それに、印象深い人が、多かったですから…。私は10代の終わりにデビューしたので、周りはすべて大人で、知識も経験も持っていた。そういう人から「何をやりたいの?」と聞かれて即答しなきゃいけないから、私もかなり気を張っていた。ざっくりした言い方になってしまいますけど、デビューしてからの10年は、やはりガムシャラだったと思います。
美里: 最初のうちは「自分はこんな気持ちでこの曲を歌ってます、聞いてください!」と放つばかりだったけど、ある時から何かを作って発信する側にいるんだということを、いい意味で意識するようになった。簡潔に言えば“責任”ですかね? 昔は無責任だった、ってことではなくて、耳をそばだてて聴いてくれる人が増えたので、歌う意味は変わってきてると思う。それと、今の方が言葉の意味を考える。必要な言葉をちゃんと歌いたい。デビュー当初は、新しい曲に出会うのが楽しくて、あれもこれもと吸収してましたけど、今は“歌の意味”を考えてる。私に求められているかどうかは別にして(笑)。自分自身が共鳴したり、感動したものを歌を通して伝えるというか。
美里: そうですね。この曲は「あ、安部礼司」というラジオドラマのテーマソングで、私はその番組のファンなんですね。心憎い選曲がツボで。80年から90年代の曲がよくかかるので、私の曲もかかるんです。番組が日曜の夕方にオンエアなので、(オファーがあった時)「次の日からまた会社が始まるなー」って思う、その胸の内を曲にしようかなと思った。近年、私は王道のジャパニーズ・ポップスというものをあまり歌ってこなかったような気がしてね、千里さんにお願いして。佐橋さんともここ10年ぐらいは一緒にやってなかったので、やりたいなぁと。そうしたら、黄金のメンバーが揃いましたね。
美里: ドラムスは20代中盤の若手プレイヤーですし、ただ懐かしいだけではなく“今”を表現できましたね。歌詞は、私が過去に書いたものの中から自分で引用しているようなところもあって、わかる人にはクスッと笑ってもらえたらなと。
美里: 結果、そうなりましたね。「ニューワールド~」を作曲したvelvetoronica(ベルベトロニカ)さんは、作曲家として活動している人で、私は直接会ってないんですよ。今は、私がデビューした時とはまったく違うやり方で曲を集めたりするんだなと思って(笑)。千里さんにしても小室(哲哉)さんにしても、昔は…って言いたくないけど(苦笑)、カセットテープに曲を録音して聞かせてくれた。今は出版社に曲のストックがあって、ディレクターが「美里さんに、こんな曲はどうでしょう?」と何曲かすすめられた。作曲者のプロフィールは何も知らずに聴くのは、いいところもありますよね? その曲の輝きだけがわかるから。「この曲を歌いたい!」と思えるものを選びました。メロディがおもしろかったし、自分の声がどんなふうに響くのかがイメージできた。私も25周年となると、次に向かっていく、向かっていかないといけないな…と思っていたので、新しいところに進んでいくにふさわしいメロディだなと。
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